俺の周りのイケメンたちが全員心配性

Sora

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4.インフルエンザの予防接種

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「いつき、そろそろ出るよ!」
 玄関で母さんの声が響く。俺は自分の部屋でダラダラと座り込んでいた。
 今日の予定は予防接種。
 毎年この時期に受けるけど、俺にとっては一番嫌な行事だ。
「ほらいつき、行くよ」
 兄貴が部屋のドアを軽くノックして入ってきた。すでに準備万端で、靴を履く直前の格好だ。
「…やだ、注射なんか意味ないじゃん」
「またかよ。いい加減慣れろって」
 兄貴は苦笑しながら俺を引っ張る。渋々立ち上がり、玄関に向かう。俺は子供扱いされるのが嫌いだけど、この予防接種に関してはどうしてもテンションが上がらない。
 毎年、注射のあとがつらいからだ。
 腕が腫れて熱を持つし、次の日には微熱が出る。
 それに、毎回予防接種をしたにもかかわらずインフルエンザにかかる。
 そんな俺が「意味ない」って思うのも無理ないと思う。
 母さんが「アイスとジュース買ってあげるから」と言ってくるけど、それ、体調悪くなるからじゃん。

 クリニックに着くと受付の人が「こんにちは」とにこやかに挨拶してくる。
 母さんが受付を済まして、俺はぼーっと待合室のポスターを眺める。
 よく来るけど、ポスター眺める余裕があるのは予防接種のときくらいだ。

 看護師さんに名前を呼ばれて診察室に入る。
「お願いします」
「おねがいしま~す」
「それじゃあ、お兄ちゃんからいきましょう」
 兄貴が先に腕を出して、先生があっという間に注射を終わらせる。
「次はいつきくんね」
 椅子に座って腕を出す。消毒されて。針が刺さるところから抜かれるまでを薄めで見届ける。
「お疲れさまでした」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました…」

 帰り道。母さんが「アイスとジュース何がいい?」と聞いてくれるけど、なんだかだるい気がして、「いつもといっしょでいい」と答える。
「ねえ、先帰りたい」
「じゃあお母さん買い物するから、お兄ちゃん、いつきと帰って」
「はいはい」
 母さんと別れて、帰る途中、俺は兄貴に愚痴をこぼす。
「痛いし、副反応出るし、それでインフルになるし、意味あるの?」
「副反応は免疫が働いてる証拠だって、先生が言ってたろ。それに、インフルになっても軽く済むんだよ」
「いっつもしんどいもん」
「もっとひどくなるんだって…え?だるい?」
 俺の顔を見て兄貴が首回りを触り出す。
「だるい気がする」
「歩ける?」
「歩く」

 家に帰ったときは熱はなかったけど、夜から微熱が出た。
 兄貴が頭を撫でてくる。
 俺は布団にくるまりながら、『注射しなくていい理由』を考えていたけど、どれも母さんや兄貴には通じなさそうだった。
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