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毛布を掛けられても、景介の呼吸はまだ浅く、肩が上下している。
喉は焼けるように熱く、吐いたあとの苦味が口の中に残って気持ち悪い。
「……はぁ……っ、はあ……」
ごくり、と唾を飲み込もうとして、うまくできずにむせた。
体が思うように動かない。布団の中で、小さく身を丸める。
「……やだ……もう……」
かすれた声で、そうこぼした。
何が「や」なのか、自分でもわからない。ただ、全部がつらくて、悔しくて――情けなかった。
「……なんで、こんな……」
涙が、勝手に目の端ににじんできた。
無理やり止めようとすると、かえって喉が詰まって息がしにくくなる。
「……ぐっ……、ん、……っひ……」
喉の奥から、小さな泣き声が漏れた。
吸い込む空気が熱くて、咳になりそうで、でも泣きたくなくて。
「ひとりで、だいじょうぶだったのに……っ」
涙と鼻水と、荒い息とが混ざって、ぐちゃぐちゃだった。
布団の中で顔を隠すようにしながら、小さく身体を震わせる。
その肩に、温かい手が触れた。
父は何も言わず、ただそっと景介の肩に手を添える。言葉も音もない。ただ、それだけだった。
景介は何も言えず、何もできず、ただそのまま目を閉じた。
まだ呼吸は不規則だったが、父の手がそこにあるだけで、少しずつ心が落ち着いてくる。
「……ふ、……ぁ……」
最後のひと息を小さく漏らすように、景介は力を抜いていった。
くしゃくしゃになった顔のまま、ぐずりながら、ゆっくりと眠りに落ちていく。
その寝息は、かすかに詰まりながらも、やがて静かに部屋の中に溶けていった。
喉は焼けるように熱く、吐いたあとの苦味が口の中に残って気持ち悪い。
「……はぁ……っ、はあ……」
ごくり、と唾を飲み込もうとして、うまくできずにむせた。
体が思うように動かない。布団の中で、小さく身を丸める。
「……やだ……もう……」
かすれた声で、そうこぼした。
何が「や」なのか、自分でもわからない。ただ、全部がつらくて、悔しくて――情けなかった。
「……なんで、こんな……」
涙が、勝手に目の端ににじんできた。
無理やり止めようとすると、かえって喉が詰まって息がしにくくなる。
「……ぐっ……、ん、……っひ……」
喉の奥から、小さな泣き声が漏れた。
吸い込む空気が熱くて、咳になりそうで、でも泣きたくなくて。
「ひとりで、だいじょうぶだったのに……っ」
涙と鼻水と、荒い息とが混ざって、ぐちゃぐちゃだった。
布団の中で顔を隠すようにしながら、小さく身体を震わせる。
その肩に、温かい手が触れた。
父は何も言わず、ただそっと景介の肩に手を添える。言葉も音もない。ただ、それだけだった。
景介は何も言えず、何もできず、ただそのまま目を閉じた。
まだ呼吸は不規則だったが、父の手がそこにあるだけで、少しずつ心が落ち着いてくる。
「……ふ、……ぁ……」
最後のひと息を小さく漏らすように、景介は力を抜いていった。
くしゃくしゃになった顔のまま、ぐずりながら、ゆっくりと眠りに落ちていく。
その寝息は、かすかに詰まりながらも、やがて静かに部屋の中に溶けていった。
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