お腹の弱いショタは頼れないので、気づけばお父さんは心配しすぎて過干渉

Sora

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 景介が眠りに落ちても、呼吸はまだときどき途切れがちで、
 時折、眠ったまま 「……けほっ」 と小さく咳が漏れた。

 その咳が出るたび、父の手がわずかに動き、
 景介の背中をそっと支えるように撫でていく。
 乱れた呼吸が落ち着くまで、ゆっくり、一定のリズムで。

 景介の眉間には、まだ薄くしわが寄っていた。
 寝顔なのに、どこか苦しそうで――父は、ほんの短い息を静かに吐いた。

「……まだ、しんどいか。」

 もちろん返事はない。
 けれど、景介は寝返りのようにわずかに体を丸め、
 父の方へと寄ってくる。

 無意識の動きなのだろうが、
 その小さな頼り方が、父の胸を静かに締めつけた。

 再び、眠ったまま軽く咳き込む。

「……げほっ、げほっ……」

 すぐに父が背を支え、喉が通るまで優しくさすり続ける。
 触れる指先に伝わる体温はまだ高い。
 その熱が、父の表情をほんのわずか曇らせた。

「……大丈夫だ。」

 誰に言うでもなく、ただそこにいる息子へ向けた声。
 低く、ぶっきらぼうで、けれど揺らぎのない安心の音色。

 やがて咳は落ち着き、景介の呼吸はゆるやかなリズムへ戻っていった。

 父はその変化を逃すまいと、しばらく目を離さない。
 毛布の端を整え、濡れた前髪をそっと避け、
 胸が規則正しく上下しているかを確かめる。

 ようやく、景介がひとつ深く息を吐いた。
 その音はさっきより静かで、どこか安心したようだった。

(……ようやく、落ち着いたか。)

 父は目を閉じ、ほとんど聞こえないほどの小ささで息をつく。
 景介の額にはまだ熱が残っている。
 それでも、少し前までの苦しげな呼吸に比べれば、ずっと穏やかだ。

 父はそのまま景介の枕元にゆっくり腰を下ろした。
 背中に触れた手を離さず、静かに座り込む。

 まるで、ここから離れるつもりなど初めからないと言うように。

 外では、風がそっと戸を揺らす音がした。

 部屋の中には、景介の安定した寝息と、
 それを見守る父の静かな呼吸だけが満ちていた。
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