姫騎士様は恋を知らない

Sora

文字の大きさ
3 / 46

2.お前を愛してる

しおりを挟む
 ルークはため息をつき、セラフィナの手首をつかんだ。  

「……俺の部屋に来い」  

「は?」  

 セラフィナは眉を上げたが、ルークはそのまま引っ張る。セラフィナが抵抗する様子もないのを確認しつつ、そのまま寮の廊下を進んだ。  

「いや、別にいいけどさ。何? また剣の話?」  

「……ああ、まあな」  

 ルークは適当に返事をするが、本当の目的は違う。さすがにセラフィナがここまで鈍いとは思っていなかった。キスまでしておいて、「なんで?」はないだろう。  

 部屋に入るなり、ルークはセラフィナの肩を押し、壁際に立たせた。  

「お、おい?」  

 不意を突かれたセラフィナが目を瞬かせる。ルークはドアを閉め、そのまま壁にもたれる彼女を見つめた。  

 もう隠すのをやめる。  

 セラフィナの鈍感さは、今に始まったことじゃない。けれど、ここまで伝わらないとは思っていなかった。キスをしてもなお「なんで?」と言われるなんて、さすがに堪える。  

「……セラフィナ」  

 ルークは息を詰め、拳を握りしめた。そして、じっとセラフィナの目を見つめる。  

「俺は、お前を愛してる」  

 セラフィナの瞳が、ほんの少し揺れる。  

「……愛してる、って」  

「そのままの意味だ。俺はお前が好きだ。剣士としてじゃなく、仲間としてでもなく、男として、お前を抱きしめたいと思ってる」  

 言葉を並べているうちに、ルークの中で抑えていたものが溢れ出した。  

 セラフィナは、一瞬、息をのんだように見えた。けれど、まだ完全に理解しきれていない表情を浮かべている。その顔を見て、ルークはもう耐えられなくなった。  

「……もう、わかれ」  

 そう言って、ルークはセラフィナの顔を両手で包み込むように引き寄せ、唇を重ねた。  

 今度は浅いものではない。  

 最初は軽く触れるだけだったが、すぐに深くなる。唇を押し開き、セラフィナの息遣いを感じながら、舌を絡める。  

 セラフィナの肩がピクリと揺れた。けれど、拒絶する気配はない。むしろ、どうすればいいかわからずに身を任せているようだった。  

 ルークは、セラフィナの背に腕を回し、さらに引き寄せる。  

 ずっとこうしたかった。  

 ずっと、こうやって、お前を——。  

「っ……ルーク……?」  

 セラフィナのかすれた声が耳に届き、ルークはようやく唇を離した。  

 セラフィナは、息を整えながら、困惑したようにルークを見上げる。  

「……ルーク……本当に、そういう意味で……?」  

「ああ」  

 ルークは迷いなく答えた。  

「俺は、お前を本気で愛してる」  

 セラフィナはまだ困惑したようにルークを見ていた。  

「……ルーク、冗談だろ?」  

「冗談に聞こえるか?」  

 ルークの声は低く、抑えた熱がこもっていた。  

「でも、お前は私の友達で……ライバルだろ?」  

「だから何だよ」  

 ルークはためらわずにセラフィナの肩を押し、軽くベッドに押し倒した。  

「お、おい……!」  

 セラフィナは驚いたように目を見開くが、すぐにふっと苦笑する。  

「おいおい、こんな真剣な顔のルーク、初めて見たんだけど」  

「笑ってる場合かよ」  

 ルークは苛立ったように言いながら、セラフィナの頬を撫でる。  

「友達とかライバルとか……そんなことはもうどうでもいい」  

「いや、どうでもよくないだろ」  

「俺は、お前が欲しい」  

 ルークは静かに、けれど確かな決意を込めて言った。  

 セラフィナの笑みが、ふっと消える。  

 彼の目の奥にある真剣な感情が、いつものように軽く受け流すことを許さなかった。  

「……ルーク、本気で……?」  

「本気だ」  

 ルークは迷いなく答える。  

 セラフィナはしばらく何かを考え込むように沈黙する。彼女の心臓が妙にうるさく感じる。  

 ——冗談だと、思いたかった。  

 けれど、目の前のルークは、あまりにも真剣で。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】オネェ伯爵令息に狙われています

ふじの
恋愛
うまくいかない。 なんでこんなにうまくいかないのだろうか。 セレスティアは考えた。 ルノアール子爵家の第一子である私、御歳21歳。 自分で言うのもなんだけど、金色の柔らかな髪に黒色のつぶらな目。結構可愛いはずなのに、残念ながら行き遅れ。 せっかく婚約にこぎつけそうな恋人を妹に奪われ、幼馴染でオネェ口調のフランにやけ酒と愚痴に付き合わせていたら、目が覚めたのは、なぜか彼の部屋。 しかも彼は昔から私を想い続けていたらしく、あれよあれよという間に…!? うまくいかないはずの人生が、彼と一緒ならもしかして変わるのかもしれない― 【全四話完結】

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...