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13.暗殺者
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王都の喧騒を離れた場所に、王族のための別荘が静かに佇んでいた。
広大な敷地の中に建つそれは、贅を尽くした王宮とは違い、比較的こぢんまりとしている。とはいえ、一般の貴族の屋敷と比べれば格段に立派だ。石造りの瀟洒な建物に、きちんと手入れされた庭園、そして屋敷の裏手には小さな泉まである。
外から見れば、ここは王族が気まぐれに訪れる静養の場。それ以上でも、それ以下でもない。
その一室に、セラフィナとアレクシス王太子がいた。
室内は暖炉の火が灯り、心地よい温かさに包まれている。壁には上品な装飾が施され、天蓋付きの豪奢なベッドがひときわ目を引いた。
そして、部屋の中央。
ソファに並んで腰掛ける二人の距離は、必要以上に近かった。
セラフィナはアレクシスの腕の中に身を寄せ、ゆっくりと目を閉じる。
王太子の腕がそっと彼女の腰に回され、肌を撫でるように優しく引き寄せた。息遣いが重なるほどの距離。
恋人たちが密やかな夜を過ごす、そう見せるために。
アレクシスの指先がセラフィナの顎を軽く持ち上げる。
視線が絡む。
迷いも逡巡もなく、アレクシスは彼女の唇を塞いだ。
柔らかく、だが確かに深く。
ただ触れるだけのものではない。外から見れば、紛れもなく本物の熱を帯びた口づけ。
セラフィナはわずかに身を震わせながら、受け入れた。
熱を帯びる吐息、濡れた音。
そのとき、背筋を走る微かな違和感を感じ取る。
空気が変わった。
何者かが、確実に近づいている。
だが、セラフィナはまぶたを伏せたまま、アレクシスの唇を受け入れる。
彼の腕の中に身を預け、熱を帯びた口づけに溺れるふりをする。
吐息が絡み、湿った音が室内に微かに響く。
その向こうに潜む気配。まるで影のように殺意を潜めた者たち。
セラフィナは、心の内で冷たく笑った。
油断しろ。そのまま、何も疑わずに近づいてこい。
そうすれば、こちらの勝ちだ。
ソファで向かい合っていた二人の距離が、次第に縮まっていく。
セラフィナの指がアレクシスの頬に触れた。軽く、確かめるように。
王太子もまた、それを拒むことなく、彼女の腰を引き寄せた。
唇が重なる。
最初は、確かめるように。
けれどすぐに、熱を帯びた深い口づけへと変わっていく。
セラフィナの指が彼の首筋をなぞり、アレクシスの腕が彼女を抱き寄せる。
息をする隙間もないほどの、濃密なキス。
どちらともなく、身体を傾ける。
ベッドへ。
ゆっくりと立ち上がり、互いの体温を確かめるように触れ合いながら、
天蓋付きの大きなベッドへと向かった。
アレクシスはシーツの上に優雅に腰を下ろす。
その瞬間だった。
鋭い殺気が、首筋を撫でる。
セラフィナの手が瞬時に短剣を引き抜いた。
上から降りてくるのは、音もなく伸びた細いワイヤー。
まるで蛇のように、王太子の喉元を狙って締め上げようとする。
刃が走る。
ワイヤーは弾かれ、床に落ちた。
同時に、天蓋の影から影が飛び出す。
暗殺者が、第二撃を仕掛けるべく迫っていた。
セラフィナは振り返ることなく、その場で反転する。
刃を逆手に握り、飛び出した暗殺者の喉元を狙って突き出した。
だが、相手も熟練だ。
咄嗟に身をひねり、紙一重で回避する。
暗殺者の手には、細身の短剣。
躊躇なく、セラフィナの頸動脈を狙って振り抜かれる。
「遅い」
セラフィナの足が素早く床を蹴った。
王太子の前に立ち、彼の喉を狙った刃を弾き飛ばす。
床に落ちた短剣が、甲高い音を立てた。
アレクシスは優雅にベッドに腰掛けたまま、それを見ている。
微動だにせず、ただ静かにセラフィナの動きを追っていた。
「お前らごときが、王族を殺せると思うなよ」
セラフィナの目が細められる。
暗殺者は、一瞬の判断を迫られていた。
このまま戦うか、撤退するか。
だが、もう遅い。
次の瞬間、セラフィナの刃が、迷いを見せた暗殺者の喉元を貫いた。
息絶えた男が、床に崩れ落ちる。
室内は、再び静寂に包まれた。
セラフィナは短剣を払い、血を拭う。
「殿下、ご無事ですか?」
アレクシスは微笑を浮かべながら、何事もなかったように答えた。
「もちろんだ。君がいる限り、私は傷一つ負わないさ」
そう言って、彼は優雅に立ち上がり、セラフィナの髪を撫でた。
広大な敷地の中に建つそれは、贅を尽くした王宮とは違い、比較的こぢんまりとしている。とはいえ、一般の貴族の屋敷と比べれば格段に立派だ。石造りの瀟洒な建物に、きちんと手入れされた庭園、そして屋敷の裏手には小さな泉まである。
外から見れば、ここは王族が気まぐれに訪れる静養の場。それ以上でも、それ以下でもない。
その一室に、セラフィナとアレクシス王太子がいた。
室内は暖炉の火が灯り、心地よい温かさに包まれている。壁には上品な装飾が施され、天蓋付きの豪奢なベッドがひときわ目を引いた。
そして、部屋の中央。
ソファに並んで腰掛ける二人の距離は、必要以上に近かった。
セラフィナはアレクシスの腕の中に身を寄せ、ゆっくりと目を閉じる。
王太子の腕がそっと彼女の腰に回され、肌を撫でるように優しく引き寄せた。息遣いが重なるほどの距離。
恋人たちが密やかな夜を過ごす、そう見せるために。
アレクシスの指先がセラフィナの顎を軽く持ち上げる。
視線が絡む。
迷いも逡巡もなく、アレクシスは彼女の唇を塞いだ。
柔らかく、だが確かに深く。
ただ触れるだけのものではない。外から見れば、紛れもなく本物の熱を帯びた口づけ。
セラフィナはわずかに身を震わせながら、受け入れた。
熱を帯びる吐息、濡れた音。
そのとき、背筋を走る微かな違和感を感じ取る。
空気が変わった。
何者かが、確実に近づいている。
だが、セラフィナはまぶたを伏せたまま、アレクシスの唇を受け入れる。
彼の腕の中に身を預け、熱を帯びた口づけに溺れるふりをする。
吐息が絡み、湿った音が室内に微かに響く。
その向こうに潜む気配。まるで影のように殺意を潜めた者たち。
セラフィナは、心の内で冷たく笑った。
油断しろ。そのまま、何も疑わずに近づいてこい。
そうすれば、こちらの勝ちだ。
ソファで向かい合っていた二人の距離が、次第に縮まっていく。
セラフィナの指がアレクシスの頬に触れた。軽く、確かめるように。
王太子もまた、それを拒むことなく、彼女の腰を引き寄せた。
唇が重なる。
最初は、確かめるように。
けれどすぐに、熱を帯びた深い口づけへと変わっていく。
セラフィナの指が彼の首筋をなぞり、アレクシスの腕が彼女を抱き寄せる。
息をする隙間もないほどの、濃密なキス。
どちらともなく、身体を傾ける。
ベッドへ。
ゆっくりと立ち上がり、互いの体温を確かめるように触れ合いながら、
天蓋付きの大きなベッドへと向かった。
アレクシスはシーツの上に優雅に腰を下ろす。
その瞬間だった。
鋭い殺気が、首筋を撫でる。
セラフィナの手が瞬時に短剣を引き抜いた。
上から降りてくるのは、音もなく伸びた細いワイヤー。
まるで蛇のように、王太子の喉元を狙って締め上げようとする。
刃が走る。
ワイヤーは弾かれ、床に落ちた。
同時に、天蓋の影から影が飛び出す。
暗殺者が、第二撃を仕掛けるべく迫っていた。
セラフィナは振り返ることなく、その場で反転する。
刃を逆手に握り、飛び出した暗殺者の喉元を狙って突き出した。
だが、相手も熟練だ。
咄嗟に身をひねり、紙一重で回避する。
暗殺者の手には、細身の短剣。
躊躇なく、セラフィナの頸動脈を狙って振り抜かれる。
「遅い」
セラフィナの足が素早く床を蹴った。
王太子の前に立ち、彼の喉を狙った刃を弾き飛ばす。
床に落ちた短剣が、甲高い音を立てた。
アレクシスは優雅にベッドに腰掛けたまま、それを見ている。
微動だにせず、ただ静かにセラフィナの動きを追っていた。
「お前らごときが、王族を殺せると思うなよ」
セラフィナの目が細められる。
暗殺者は、一瞬の判断を迫られていた。
このまま戦うか、撤退するか。
だが、もう遅い。
次の瞬間、セラフィナの刃が、迷いを見せた暗殺者の喉元を貫いた。
息絶えた男が、床に崩れ落ちる。
室内は、再び静寂に包まれた。
セラフィナは短剣を払い、血を拭う。
「殿下、ご無事ですか?」
アレクシスは微笑を浮かべながら、何事もなかったように答えた。
「もちろんだ。君がいる限り、私は傷一つ負わないさ」
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