姫騎士様は恋を知らない

Sora

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15.報告の後は

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 王太子の護衛任務を終えたセラフィナは、騎士団本部の執務室へ向かった。報告を済ませるためだ。

 扉をノックすると、中からすぐに声が返ってくる。

 「入れ」

 室内には、彼女の直属の上官―ヴィクトル・エーベルハルトが座っていた。机には報告書の束が積まれ、その端には王太子護衛任務の簡易な記録も置かれている。

 「ご苦労だったな、セラフィナ」

 「任務は完了しました。ただ、途中で刺客が現れたため、完全に問題なくとはいきませんでした」

 「聞いている。幸い殿下に被害はなかったそうだな」

 「はい。しかし、今回の件が単独犯によるものか、何者かの企みの一部なのかは不明です。念のため、殿下の身辺警護には今後も注意が必要かと」

 上官は短く頷くと、手元の書類をめくった。

 「その点については、近衛騎士団とも連携を取ることになっている。今後の対応は追って伝えるが……」

 一瞬、視線が鋭くなる。

 「お前自身は、無事なんだな?」

 「もちろんです」

 セラフィナは淡々と答える。上官は少し表情を和らげ、深く頷いた。

 「ならいい。お前は殿下の護衛として優秀だが、無理をしすぎるところがある。今回も危険だったと聞いたぞ」

 「任務ですから」

 「そういうことではない」

 ヴィクトルは少しだけため息をつき、やや穏やかな声で続けた。

 「報告は受理した。あとは休め。何かあればすぐに伝える」

 「……承知しました」

 セラフィナは一礼し、執務室を後にした。

 報告を終えたことで、ひとまず王宮での役目は果たしたことになる。しかし、あの暗殺者の件が完全に片付いたとは思えなかった。

 (いずれまた、何か起こるだろう……)

 警戒心を拭えぬまま、廊下を歩く。


 「……さて」  

 思考を整理しようと、自室へ戻るために歩き出したところで、前方の影に気がついた。  

 「よう、セラフィナ」  

 壁にもたれかかっていたルークが、軽く片手を挙げる。  

 「お前が戻ってくるの、待ってた」  

 「……私に用?」  

 問いながらも、セラフィナは足を止めた。ルークの態度はいつもと変わらないが、こうしてわざわざ待ち伏せするというのは珍しい。  

 「まあな。殿下の護衛、無事に終わったって聞いたけど……」  

 ルークは視線を少し落とし、続けた。  

 「お前が無事かどうかは、直接確かめないと気が済まなくてな」  

 その言葉に、セラフィナは一瞬だけまばたきをした。  

 「私が負けるとでも?」  

 ルークはふっと笑う。  

 「そりゃ何より。でも、疲れてるだろ?」  

 セラフィナは否定しなかった。護衛任務自体は慣れているが、暗殺未遂まで絡めば、いつも以上に神経をすり減らす。  

 「まあ……少し、気は張っていたかもな」  

 セラフィナの言葉に、ルークは口角を上げる。

 「だろうな。だったら、少し肩でもほぐしたらどうだ?」

 「……何?」

 「お前、無意識に肩に力入ってるぞ」

 そう言って、ルークはセラフィナの肩を指さした。意識していなかったが、確かに肩がこわばっているのを感じる。

 「ふん。そんなの気にしている暇はなかった」

 「だからだよ。俺の部屋でいいから、少し楽になってけよ」

 セラフィナは少し考えたが、疲労が抜け切れていないのも確かだった。無駄に意地を張るのも馬鹿らしい。

 「……なら、少しだけ」

 「おう、決まりだ」

 ルークはにやりと笑い、セラフィナを促す。
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