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21.その後
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甘い余韻から抜け出したセラフィナは、夜が明ける前に自室へ戻る支度を始めた。
床に落ちていたショーツを拾い上げ、指でつまみながらため息をつく。
「……ショーツ、もう履けそうにないな」
布地には、先ほどまでの行為の余韻が色濃く残っており、とても身につけられる状態ではなかった。仕方なく、それを脇に置き、素肌にスラックスとシャツを纏う。
「おいおい、それで帰る気かよ」
ベッドに腰掛けたまま、ルークが片肘をついてこちらを見やる。まだ完全に満足しきれていないような視線に、セラフィナは肩をすくめた。
「すぐそこだし、来たときと変わらんぞ」
「いやいや……」と、ルークは呆れたように立ち上がる。彼がクローゼットを開け、無造作に私服のカーディガンを取り出すと、そのままセラフィナの肩にかけた。
「これ着て帰れ」
カーディガンはセラフィナには少し大きすぎた。肩口が落ち、袖も長すぎて指先がすっぽり隠れてしまう。生地は柔らかく、ほんのりとルークの匂いが染みついていた。
「……わかった」
セラフィナは袖口を少し折り返しながら、ルークを見上げる。
背の高い彼と視線を合わせるために、ほんの少し顎を上げた。ルークの影が、自分を包み込むように落ちている。
「似合ってるぜ」
彼はいつもの軽い調子で言いながら、腕を伸ばしてセラフィナの髪をくしゃりと撫でた。
翌朝
訓練を終えると、セラフィナは他の隊員たちとともにシャワールームへ向かった。汗に濡れた身体を冷たい水で流す瞬間は、一日の中でも数少ないリラックスできる時間だった。
シャワーの水音が周囲に響く中、彼女は顔を上げて水を浴び、肩の力を抜いた。夜明け前にルークの部屋を抜け出してきたせいか、いつもより身体が少し重く感じる。眠気を誤魔化すように、ゆっくりと首を回した。
シャワーを終え、服を着てタオルで濡れた髪を拭きながら、セラフィナは鏡に映る自分をふと見つめた。ほのかに火照った頬。少し疲れた表情。そして――
襟元がわずかに開いた瞬間、白い肌に浮かぶ赤い痕が目に入る。
「あ」
意識した途端、昨夜の記憶が鮮明に蘇る。ルークが彼女の首筋に唇を落とし、肌を甘く噛んだ感触。
(……あいつ)
自分で指を這わせてみると、じんわりとした熱がそこに残っていた。
その時。 背後から近づく気配に、セラフィナはハッと我に返る。反射的に襟元を押さえようとするが、間に合わなかった。
「……」
視線を上げると、そこにはエリシアがいた。
彼女の瞳が一瞬だけセラフィナの首元に留まる。その表情には驚きよりも、妙な納得の色が滲んでいた。まるで「やっぱりね」とでも言いたげな雰囲気だ。
(……マズい。)
何か言い訳を考えようとする間もなく、エリシアは特に何も言わずに視線を外し、タオルを手に取るとそのままシャワールームを後にした。
(……見られたか)
残されたセラフィナは、小さく息をつきながら濡れた髪を指で梳いた。
エリシアが何も言わずに立ち去ったのが、かえって気になる。
(……まあ、後で何か言われるだろうな)
セラフィナは鏡越しにもう一度首元を見て、昨夜の余韻を思い出しながら指でそっと触れた。
床に落ちていたショーツを拾い上げ、指でつまみながらため息をつく。
「……ショーツ、もう履けそうにないな」
布地には、先ほどまでの行為の余韻が色濃く残っており、とても身につけられる状態ではなかった。仕方なく、それを脇に置き、素肌にスラックスとシャツを纏う。
「おいおい、それで帰る気かよ」
ベッドに腰掛けたまま、ルークが片肘をついてこちらを見やる。まだ完全に満足しきれていないような視線に、セラフィナは肩をすくめた。
「すぐそこだし、来たときと変わらんぞ」
「いやいや……」と、ルークは呆れたように立ち上がる。彼がクローゼットを開け、無造作に私服のカーディガンを取り出すと、そのままセラフィナの肩にかけた。
「これ着て帰れ」
カーディガンはセラフィナには少し大きすぎた。肩口が落ち、袖も長すぎて指先がすっぽり隠れてしまう。生地は柔らかく、ほんのりとルークの匂いが染みついていた。
「……わかった」
セラフィナは袖口を少し折り返しながら、ルークを見上げる。
背の高い彼と視線を合わせるために、ほんの少し顎を上げた。ルークの影が、自分を包み込むように落ちている。
「似合ってるぜ」
彼はいつもの軽い調子で言いながら、腕を伸ばしてセラフィナの髪をくしゃりと撫でた。
翌朝
訓練を終えると、セラフィナは他の隊員たちとともにシャワールームへ向かった。汗に濡れた身体を冷たい水で流す瞬間は、一日の中でも数少ないリラックスできる時間だった。
シャワーの水音が周囲に響く中、彼女は顔を上げて水を浴び、肩の力を抜いた。夜明け前にルークの部屋を抜け出してきたせいか、いつもより身体が少し重く感じる。眠気を誤魔化すように、ゆっくりと首を回した。
シャワーを終え、服を着てタオルで濡れた髪を拭きながら、セラフィナは鏡に映る自分をふと見つめた。ほのかに火照った頬。少し疲れた表情。そして――
襟元がわずかに開いた瞬間、白い肌に浮かぶ赤い痕が目に入る。
「あ」
意識した途端、昨夜の記憶が鮮明に蘇る。ルークが彼女の首筋に唇を落とし、肌を甘く噛んだ感触。
(……あいつ)
自分で指を這わせてみると、じんわりとした熱がそこに残っていた。
その時。 背後から近づく気配に、セラフィナはハッと我に返る。反射的に襟元を押さえようとするが、間に合わなかった。
「……」
視線を上げると、そこにはエリシアがいた。
彼女の瞳が一瞬だけセラフィナの首元に留まる。その表情には驚きよりも、妙な納得の色が滲んでいた。まるで「やっぱりね」とでも言いたげな雰囲気だ。
(……マズい。)
何か言い訳を考えようとする間もなく、エリシアは特に何も言わずに視線を外し、タオルを手に取るとそのままシャワールームを後にした。
(……見られたか)
残されたセラフィナは、小さく息をつきながら濡れた髪を指で梳いた。
エリシアが何も言わずに立ち去ったのが、かえって気になる。
(……まあ、後で何か言われるだろうな)
セラフィナは鏡越しにもう一度首元を見て、昨夜の余韻を思い出しながら指でそっと触れた。
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