姫騎士様は恋を知らない

Sora

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34.医務室にて

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 寝台に半身を起こしたルークは、額に冷たい布を当てたまま、扉の音に目を向けた。ゆっくりと入ってきたのは、彼の隊長、アランだった。  

「……隊長自らお見舞いですか。珍しいですね」
   
 熱のせいでかすれた声ながらも、ルークの言葉には少しの軽口が混じっていた。  

 アランは無言のまま、ベッド脇の椅子に腰を下ろし、腕を組んでルークをじっと見つめた。  

「進捗報告ついでだ。セラフィナたちは順調に動いている。派手な動きは避けて、隠れ拠点を慎重に絞り込んでいるらしい」  

 ルークは軽く眉を上げ、短く応じる。  

「そうですか」  

 その言葉の後、彼は目を伏せた。安心したような、それでいて何か言いかけてやめたような曖昧な表情だった。  

 アランはふと小さく息を吐き、ルークを観察するように視線を向けた。  

「熱、下がってないな。本当に今回は大人しくしてろ。回復が遅れたら次の作戦に支障が出る」  

 ルークの額にはまだ汗がにじみ、右肩にはしっかりと包帯が巻かれていた。胸部にも打撲痕があり、深く息を吸うたびに顔をしかめる。剣を振るにはまだ無理があると、一目でわかる状態だった。  

「了解していますよ」  

 ルークは少し笑みを浮かべて答えた。その表情には、悔しさと信頼の入り混じった感情が滲んでいる。  

 アランはその言葉に反応せず、立ち上がってドアへ向かう。そして振り返らずにひと言だけ落とした。  

「そう思うなら、しっかり治せ」  

 ルークはその一言に微かに笑みを漏らしながら、小さく「承知しました」と答えた。  

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