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一学期【中間試験】編
親友との通学路
しおりを挟む惚れ薬騒動の翌日。俺は気まずい気持ちで一杯だった。というのも、まさか妹にあんな事言うなんて…俺の人生で1番の汚点だ。兄が妹に告白なんてこんな話を京治達に知られたら終わりだ。とまぁ、そんなわけで俺はご飯を黙々と食べていた。普段なら妹華に料理の感想等を聞いたりするのだが、今は無理である。
「・・・・」
無言の時間が辛い。けど、気まずい。なんでこんなに妹に気まずさを抱かなければならない。俺と妹華は血の繋がった兄妹で決して男女のあれそれは無い。そんなことわかってるのに、あんなこと言ってたら気まずいのは仕方ない。俺が心の中でずっと悩みまくっていると、
「ねぇ…お兄」
妹華が声をかけてきた。俺は慌てて思考を切りかえて、何も無い風を装って
「ん?どうした?」
言葉を返す。
「た、大したことじゃないんだけど…き、昨日…私が言ったこと覚えてる?」
妹は真っ赤に染まった顔を隠すように俯いて尋ねてくる。昨日ということは惚れ薬騒動のことだろう。しかし、妹華が言ったことかぁ。あの時は残念ながら惚れ薬のせいで思考がほとんど溶けて記憶が曖昧だ。それにこれは追求するような内容でもないし、深くは聞かないでいいだろう。
「悪い。あの薬のせいで、断片的な記憶しかないんだ」
「…ほん…と?」
妹華が顔を少しこちらに向けて不安そうに呟く。やれやれ、何か妹華にとって覚えてて欲しくなかった言葉みたいだ。どうせいつもより特大な罵倒でも吐いてしまったのだろう。全く今さら気にすることでもないってのに。
「あぁ、ほんとほんと。全くこれっぽっちも覚えてない」
気まずかった俺だったが、妹華が不安がっている姿を見て、兄としてしっかりしなくてはと気持ちを切り替えれた。
「…そっか。なら…よかった」
妹華が何かを小さく呟いた。俺の耳に届かなかったし、おそらく聞かれたくないことなんだろうな。お兄ちゃんはよくできたお兄ちゃんだからな!妹の隠し事は無理して聞かない。ウンウン、さすが妹華に愛されてるお兄ちゃんなだけあるぜ(自画自賛)。
「話が終わったなら、お皿片付けて着替えてきな」
「…うっさい。命令すんな、バカ兄!」
妹華はさっきのしおらしいスタイルから一変、いつも通りのツンツンスタイルに戻った。やはりこっちの方が妹華らしいな。
「はいはい」
俺は適当にあしらって、汚れた皿を洗面台に置いておく。普段は学校に行く準備を完璧に終わらせた後に、食器を洗いながら京治が呼びに来るのを待っているのが日課だ。
「今日は試験初日だし、さっさと皿洗い終えて少しだけ試験範囲を確認したいところだな」
いつもより少し早めに皿洗いを終えて、鞄からプリントを数枚取りだして、ソファに座る。暫く試験範囲のプリントを眺めていると、インターホンがなった。どうやら、京治が迎えに来たらしい。
「おーい、妹華。お兄ちゃんは先に学校向かってるから鍵持ってけよ~」
「ん~、いってら」
2階で制服に着替えているであろう妹華に大声でそう声をかけて、返事が返ってきたのを確認してから玄関で靴を履き、扉を開ける。
「よっす、ケータ」
我が悪友の京治が相変わらずバカみたいな笑顔で挨拶してきた。ホント何度見ても飽きないバカ顔だ。
「うっす、京治。 ってか今日は桜花と新はいないんだな」
前まで一緒に歩きで通っていたのだが、今日は姿が見えない。
「あぁ。あの二人は車の修理終わったみたいで、車通学だってよ」
「ふーん、そっか。相変わらず車で登校とは金持ちは羨ましいなぁ」
「まー、たしかに。俺ら、庶民とは世界が違うぜ」
庶民同士の俺と京治は、今ごろ車通学してるであろう桜花と新を思い浮かべて、
「「はぁ……」
ちょっと悲しくなったのは言うまでもない。
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