冒険者狩りをしている青年の表稼業

雪鵠夕璃

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第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編

新しい景色

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「うわぁ…遺跡の中って暗いんですね」

【ラビル遺跡】内部へと足を踏み入れていたリンが、パーティーに誘ってくれたカズト達に向けてそんな感想をこぼす。彼女にとって【アネル草原】以外の新しい冒険の地。好奇心と恐怖心が練り混ぜられた様な不思議な気持ちを抱いたまま遺跡の奥へと突き進む。幸い【駆け出しの遺跡】と呼ばれるだけあって、トラップや中級・上級並の魔獣は見当たらない。それもありサクサクと探索は進んでいく。

「いやぁ、やっぱり俺の目に狂いはなかった。リンのお陰で前よりも魔獣との戦闘が楽になったよ」

「そうねぇ。前衛に1人追加されただけで、ここまで後方からの支援射撃が簡単になるなんて驚きよ」

「あぁ、2人の言う通りだ。君のお陰で魔法の詠唱がしやすくなったよ。この先も頼りにさせても貰うね、リン」

カズト達は四階層に続く階段を降りながら、リンに賞賛の言葉を浴びせる。今まで褒められたことがほとんどないリンは一生分の賞賛を受けたかのように顔を真っ赤にした。これが仲間なんだ、とリンはこの楽しい幸せな時間を噛み締めるように心の中で呟く。

「さて、お話はこれにくらいにして、そろそろ気を引き締めろよ、皆」

階段を一足先に降り切ったカズトが緊張感の篭った声でリン達に告げる。その声に全員が気を引き締め階段を降り切る。そして彼らの視界に映るのは五階層の景色。四階層までは雑魚魔獣しか湧いていなかったが、五階層からはそこそこ強い魔獣が湧いている。その為、油断をすれば痛い目に合うだろう。

「前回はここまでで諦めた。けど、今回は新たな仲間も増えた。だから、再チャレンジだ」

その言葉により一層に気を引きしめるカズト達。この先に踏み出せば、魔獣達が牙をむく。しかし、彼らの誰にも恐怖心は存在しない。全員がまだ見ぬこの先の景色が気になって楽しみで仕方がないという様子だ。

「さぁ、行こうか!新たな景色を見る為に!」

カズトの言葉に皆が頷き、足を踏み入れた瞬間、魔獣の雄叫びが五階層全域に響き渡った。それは下級や中級にしては獰猛で大きな殺意の雄叫びだった。ビリリッと大気が震え、カズト達の全身を震え上がらせた。

「……ぁ」

誰一人まともに喋れない。掠れた声が漏れるだけ。ただ、声が出ないのはまだなんとでもなる。それよりも問題なのは身体が動かないという点だ。ピクリともしない身体にカズト達は驚きを隠せない。その間にも不吉で不気味で気味の悪い殺意の塊で創造されたような『ナニカ』の気配がする。それはやがて姿を現す。

「--ヒュッ!?」

空気の漏れる音がした。身体の震えが更に倍増する。そんな彼らを嘲笑うように『ソレ』は目の前に立っていた。


捻くれた二本のツノ。棘の付いた尾。漆黒の毛で覆われた優に2メートルを超えた巨体。丸太並みの太さをした腕。パッと見二足歩行のヤギに見えなくもない。

『ソレ』を彼らは文献で知っていた。

【グリフェンリード】。

【死の王】と呼ばれる禁忌指定魔獣。

『ソレ』は、右手に人間のようなナニカを握っていた。否、人間だったモノを握っていた。動けない彼らの前にその人間だったモノが放られる。
ドサリと原型のない人間だったモノがくっきりと鮮明に彼らの視界に映る。切り傷や擦り傷、骨折なんて言う生易しいものではなく、全身がひしゃげ眼が飛び出て腹から出ては行けない臓器が漏れ出した人間の亡骸。更に彼の足元や付近に同じような人間の亡骸が転がっていた。

「…ぁえ」

頭がこの光景を否定しようとする。考える暇も理解する暇もない。しかし一つだけ彼らが理解出来たのは、否定したくても否定できない絶対的現実の【死】が自分達に迫っているということだった。
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