冒険者狩りをしている青年の表稼業

雪鵠夕璃

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第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編

男の告白

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『グオオオオオオオオオン…』

巨体を切り裂かれた【グリフェンリード】の雄叫びが徐々に力を失っていく。ドバっと裂けた位置から黒い血が噴き出しては、爛々と輝いていた赤い瞳の輝きが弱くなっていく。ラフィーナは黒い血を全身に浴びた状態で【グリフェンリード】の眼前で動かない。 それは全魔力を注ぎ込んだ事で、1歩も動く気力がなくなっているからだ。

「はァ…はァ…」

呼吸が乱れる。今にも倒れそうな状態。ラフィーナは銃剣を床に突き刺す形で何とか倒れないように体勢を維持する。そんな彼女に、【グリフェンリード】が最後の力を振り絞るかのように丸太並みの腕を上に振り上げた。そしてハンマーのように振り下ろそうとする。

「…まだ…動け…」

上手く喋ることも出来ないラフィーナはしぶとい【グリフェンリード】の最後の足掻きを見て驚愕する。もうこの攻撃を避ける術を彼女は持っていない。そんな彼女に慈悲もない一撃が降り注ぐ瞬間、

「魔弾装填--黒き弾丸は我が敵を撃ち砕き、血を踊らす!!」

ドパッと【グリフェンリード】が振り下ろした腕が砕け散った。ビシャビシャと黒い血を撒き散らしながら腕の肉片が床にぶちまけられる。消耗していない【グリフェンリード】であれば容易く腕を砕くことは出来なかっただろうが、消耗しきっていれば容易く破壊することは出来る。間一髪の所でラフィーナを救ったシエンはそのまま【グリフェンリード】に魔弾を撃ち込んでいく。次々と足が角が砕け散り、最終的に全てを肉片に変貌させた。

(目の前で身内が死ぬ様なんて人生で1回あればいい。もう二度と誰も自分の前では死なせない)

シエンは拳銃をしまって心の中で呟く。過去に誓った揺らがない決意。

「ほら、背負ってやるよ」

「いや…です」

身体が動けなくても大嫌いなシエンに背負われたくないラフィーナは拒否するが、それを無視して無理矢理背負う。そして、治療をしておいたカズト達を浮遊魔法で引き寄せ、

「クソ魔女、少しだけ力貸せ」

そう声をかける。すると、

『はいはい』

何も無い空間から影姫シーカの腕が現れ、指を鳴らした。それに伴い、影で形成された小さな浮舟が姿を現す。シエンはそこにカズト達を寝かせる。

「用は済んだから帰れ」

『全く、妾は便利屋じゃないんだからねぇ』

グチグチ言いながらシーカは腕を何も無い空間へと戻す。それを見届けたシエンは浮舟に浮遊魔法をかけ、歩き始める。本来はこのまま失踪事件の謎について捜索をしたいところだが、かなめのラフィーナが行動不能になった為、一度帰らなければならない。二度手間になるが人命救助優先なので仕方が無い。一応、【グリフェンリード】は討伐したが、警戒は怠らない。否、怠っていないはずだった。唐突に感じた人の気配。ずしりとのしかかる大きくて不気味なプレッシャーがシエン達を襲う。そんな中で、

「いやはや、こんな雑魚冒険者しか訪れない【ラビル遺跡】に【グリフェンリード】を殺してしまう様な方達がいるとは、この遺跡も捨てたもんじゃありませんねぇ」

あまりにもこの血なまぐさい場所に相応しくない軽い口調で喋る若い男性の声がした。それはまるで道化師を想像させるような声。

「お前は・・・誰だ?」

シエンはラフィーナ達を守るように振り返る。そこで初めて若い男性の姿を視認した。

黒と白の左右非対称の髪色、紅と蒼の左右非対称の瞳色。そして、頭頂部を貫くように十字架が突き刺さり、背中には大きな棺桶を背負っている。両腕両脚は手術痕のような継ぎ接ぎの縫い目が幾つもあり、声が道化師のようなら、見た目はミイラや屍と言った方が当てはまる姿をしていた。

「あらあらあら? 自己紹介ですか?あはははは!いやだなぁ、人に尋ねる前に貴方が名乗らないのは失礼じゃあないですか?」

笑ったかと思えば、おぞましい声で不気味な瞳を細めてシエンを睨む。それだけで背筋が凍るようだ。体の震えが止まらない。

「まァ、別に名乗りますけどね」

「・・・は?」

コロコロと態度を変える若い男性に困惑するシエン。それに対し、若い男性は悪戯が成功した子供のようにニッコリと笑い、

「お初にお目にかかります。私は【カダ・ヨグラートル】--気軽に【カダ】とでもお呼びください」

執事のような振る舞いで名乗った。あまりにも動きと表情と口調が合っていない不気味な男性。なぜ、彼がこの場所にいきなり現れたのか。いや、どのようにしてここに現れたのか。シエンは転移魔法によるものだと考察する。それだったら気配を感じなかったことに関しても理解出来る。

「いやはや、残念不正解!私は貴方が来る前からここにいました。なんの抵抗も出来ずに一方的に殺戮されていく雑魚冒険者達の姿を!悲鳴を!苦鳴を!全部全部聞いてましたよ!とても最高な音色で思わず興奮してしまいました」

しかし、それを否定される。オマケに【グリフェンリード】に一方的に殺戮されていく冒険者達を眺めていた、と。そしてあろうことか、興奮した、と。あまりにも理解できない怪物のような男性。まだ、人間の皮を被った怪物の方が納得できる。

「さて、私はここに無駄話をしに来たわけじゃないんですよね」

カダと名乗る男性は、【グリフェンリード】の残骸の方へと歩み寄り、何かを掴んだ。

「…それは…なんだ?」

シエンはカダが掴んだ小さな結晶の欠片について尋ねる。カダはそれを見せつけるように持ち替え、

「これが何か、と? そうですねぇ、せっかく【グリフェンリード】を倒してくれたのになんのご褒美も与えないのは可哀想ですし、特別に教えてあげます」

ぐるぐると小さな結晶の欠片を人差し指で回しながら

「と、その前に最近この遺跡で起きてる失踪事件はご存じですか?」

答えるのかと思ったら、唐突にシエンとラフィーナがここに来た理由である失踪事件について尋ねてきた。

「…失踪事件とその欠片が関係あるのか?」

唐突に失踪事件の話を切り出してくるということは、欠片となんかしら関連性がある、と考えるシエン。

「そりゃ関係ありますとも。じゃなきゃただの変人じゃないですかぁ、私が」

ヘラヘラと仮面を張り付けた様な笑みを浮かべる。あまりにも気味が悪い。

「さて、長く話すのは苦手なので簡潔に。失踪事件の犯人は私で、この結晶は失踪者の血を吸収した【刻罪こくざい欠片かけら】です」

コホンと咳払いしたあと、カダはあっさりと自身が犯人だと告白した。
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