冒険者狩りをしている青年の表稼業

雪鵠夕璃

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第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編

ラフィーナの仕事 中編

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【クレイセルド】の地下。そこには昇級試験に使用する為に設計された闘技場がある。名前は【ギエロア闘技場】。ギエロアとは【死の悪魔】の名前であり、Sクラスの昇級試験が死ぬほど辛いという意味からそういう名前がつけられたという噂だ。

「着きました。ここが昇級試験の会場です」

ラフィーナは後ろをついてきたアルメに微笑む。ここまでついてきたアルメは初めて見る不気味な闘技場を見て、唾を飲み込む。今までのような魔獣討伐や採取とは違う昇級試験の内容に緊張が高まっていく。今度は一体どんな試験なのかとドキドキしていると、ラフィーナが答える。

「Sクラス昇級試験のクリア条件は、私との1on1で一撃与えることです」

その条件を聞いた瞬間、アルメの表情が不安に染る。それは無理もない。ラフィーナは現役の冒険者Sクラスの資格を得た人間だ。そんな圧倒的な存在にAクラスの人間が勝てるのはゼロに等しいほど不可能。それもあり、噂ではココ最近のSクラス昇級試験合格者は一人もいないと言うので有名だ。

「…? いまさら怖気づいたとは言いませんよね。さぁ、受けますか?それともやめますか? 強制はしません。ただし、ここで棄権するのであれば、次の昇級チャンスは来年になります」

ラフィーナは選択肢を二つ生み出す。

「…やり…ます」

体は震え、未だに不安が拭えてはいない。しかし、アルメにも譲れない事がある。ここでSクラスに昇級し、自分を慕う妹や弟達が誇れる兄貴になる為に。勝てる見込みなんて無いかもしれない。ただ、どんなに惨めで哀れに見えても一撃でも与えれば合格だ、と自分に鼓舞してアルメは覚悟を決める。

「まだ不安で一杯のようですが、先程よりはマシになりましたね。では、早速始めますので準備してください」

ラフィーナは軽く微笑んだ後、闘技場の中心へと向かう。アルメは大きく深呼吸をした後、自身も中心に向かう。

「再度ルール説明を。制限時間は5分。その時間以内に私の身体に一撃でも与えれたら合格。逆に時間内に一撃も与えることが出来なければ不合格となります」

改めて説明を受けたアルメは頷く。

「それでは、武器を構えてください」

「は、はい!」

ラフィーナとアルメが同時に得物を抜く。

片やなんてことの無い訓練用の木剣。

片や鋼で鍛え上げられた片手剣。

「そんなモノで試験になるんですか?」

「ご心配なく。私は貴方よりも強いので」

舐められていると感じたアルメの指摘にラフィーナは無表情で答える。

「それでは、昇級試験を始めます」

ラフィーナがそう告げた瞬間、アルメが先に動いた。真上からの振り下ろし。木剣で防げば鋼の片手剣に勝る訳もなく壊れて終わり、そう考えたごく当たり前の発想。だがラフィーナはSクラス冒険者であり、そんな誰でも思いつくような発想で防ぐわけが無い。迫る片手剣を木剣で防ぐのではなく、ゆらりと半身はんみになることで振り下ろしの一撃を躱す。

「--!?」

一瞬、アルメの表情に戸惑いが生まれたが、即座に件を握っていない方の手の指で魔法陣を描く。

「素晴らしい。どうやら貴方は魔法陣の構築がAクラスの中でも早い方のようですね。しかし--」

構築された魔法陣【炎矢ギィネル】が発動するよりも早く

「私が魔法陣を斬る方が早い」

その一言と共に切断された。一瞬の出来事。瞬きを一回しただけの合間に高速で構築された魔法陣が無力化されたのだ。驚かない方がおかしい。

「良いですか?これが本当の高速魔法構築です」

シュバっと指が走った瞬間、0.3秒という間隔だけで魔法陣【炎矢ギィネル】が起動していた。

「--ぐっ!?」

赤々と燃えるように輝く魔法陣から次々と放たれる炎の矢。魔法陣は魔力量によって威力が増すと言われており、アメルのようなAクラスの【炎矢ギィネル】であれば魔獣の皮膚や筋肉を溶かすことも可能だ。それだけでも脅威と言えるがSクラスの【炎矢ギィネル】は骨さえも溶かし尽くすほどの威力を持つ。そんな威力の矢を人間が受ければ怪我では済まない。だが、今回は試験ということもあり、火傷程度で済むように威力は調整されている。

「くっ…。キリがない!」

紙一重で炎の矢を避けるアメルだが、このままでは合格は不可能だ。防いでばかりでは一撃を加えることも出来ない。だからこそアメルは拙い動きで魔法陣を描く。そして発動するのは単なる防御魔法【反鏡はんきょう】。効果は至ってシンプルな跳ね返し。放たれた攻撃を跳ね返すというもの。

「しかし、そんなヤワな鏡で私の【炎矢ギィネル】を防げても跳ね返すことは出来ませんよ」


「えぇ、わかってます。別に跳ね返せなくたっていい…少しのチャンスがあればそれでいい!」

その声と共に、アルメの背後に六個の魔法陣が展開する。それぞれが赤・青・黄・緑・白・黒の色をしていた。ラフィーナは即座になんの魔法陣かを理解する。

「六属融合魔法陣【獄虹星龍砲ゼルグ・アズ・レルドメア】…ですか」

ラフィーナが告げた【獄虹星龍砲ゼルグ・アズ・レルドメア】は【火・水・雷・風・土・闇の六属性の魔力を融合させた魔法陣】である。本来であればAクラス冒険者は扱えないような代物だが、アルメはそれを可能とした。

「では、私も貴方の誠意に答えて、本気の片鱗を見せてあげます」

ラフィーナはそう言うと、木剣に魔力を込め始める。そして、アルメのような六属融合魔法陣ではなく、六属性の魔法を込めた六属融合剣技【獄虹星爆龍閃ゼルグ・ヴィズ・メズドリア】のモーションに入る。

「絶対に一撃与える!吠えろ!【獄虹星龍砲ゼルグ・アズ・レルドメア】!!」

威力は乏しいが負けられないという想いが込められた砲撃と、

「残念ながらそう簡単には負けませんよ。斬り裂け、【獄虹星爆龍閃ゼルグ・ヴィズ・メズドリア】」

静かながら固い意思の込められた斬撃が激突した。
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