転生した俺、弱虫勇者の保護者(えいゆう)になりました

雪鵠夕璃

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第一章:神聖リディシア王国襲撃編

何度も聞いた言葉

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「ふぅ。 傷つき者を癒せ、【天癒聖泡レ・シーラ】」

リンゲルが、破片を握っていない方の手を俺にかざし呟いた。すると、俺の全身に刺さっていた破片が抜け落ち、出血箇所が癒えていく。裂かれた皮膚が治っていき、やがて最初から傷が無かったかのようになっていた。元通りだ。

「これで治療は完璧だと思うけど…どうだい?1人で立てるかな?」

「あ、あぁ」

俺は痛みのなくなった身体を起こす。別段、違和感はない。というか身軽になった様な…。まぁ、気の所為か。

「さて、僕を別空間へと飛ばした犯人をフルボッコにしてくるかな」

リンゲルは首を鳴らして告げる。言動は遊びに行くような言い方だが、ハッキリとわかる。彼から発せられる怒り。相当キレている。

「君は玉座の間に戻って欲しい。多分だけど、王達の元にも襲撃者がいると思う」

「は? いやいや!? 俺が戻った所でどうにもならねえぞ!? それにアンタを別空間に飛ばした犯人は、アグラスド・ヴェインが戦ってる!だから、アンタが玉座の間に戻った方がいいって!!」

俺は首を横に振り、その案は反対だと叫ぶ。だが、リンゲルは、

「悪いけど、トカゲ君じゃあの男は倒せない。あの男は簡単には殺せない。心臓を潰しても、肉片にしても灰にしても殺せない。でも、あいつを殺せる方法がひとつだけある。それが僕の【秘匿魔法セーク・マジック】。だから、僕が彼の相手をするしかないというわけさ」

そう説明して断る。

「いや…でも--」

「大丈夫。玉座の間には今頃、お姫様に仕える騎士が向かってる。その騎士と君で10分ほど時間稼ぎをしてくれればそれで充分さ」

「…お姫様の騎士って、アイツか?」

「うん。君を牢屋にぶち込んだ子だよ。彼女には神剣とまではいかないけど、奇跡剣【アロンフェグラル】がある。あの剣は使用者に奇跡を起こすものでね、かなり優れた剣だ」

リンゲルはこちらを振り返らずに話を続ける。

「君が弱いのは僕も知ってる。君が臆病だって事も分かってる。でも、君にしか出来ない事だ。今ここにいる君が皆を助けれる可能性だ」

「俺が可能性? はは…笑えない冗談はやめろよ。俺に期待すんなよ! 昔からそうだ!どいつもこいつも俺に期待して!期待する側は楽だよな!? 『頑張れ』、『お前ならできる』そんな言葉を投げかけるだけでいいんだから!でもさ、期待されてる側はそんな楽じゃねえんだよ!『期待を裏切らないよう頑張ろう』っていつもいつも精神も身体も犠牲にして寝る間も惜しんで頑張ってんだ!!なのに…なのに…期待を破ったら用済みはおかしいだろ!?」

俺だって、皆の期待に応えたかった。でも耐えられなかった。誰かの期待を破って絶望してきた人達を俺は何度も見てきた。そいつらは皆、俺から見ても努力を惜しまずに頑張っていたのを知っている。でも、期待される側が欲しかった言葉を誰も投げかけてくれなかった。頑張ってる事を認めてくれる言葉。

『いつも頑張ってるね』

『たまには休めよ』

ただこの言葉が欲しかった。これ以上の言葉が欲しかったわけじゃない。この言葉が欲しかった。

なのに、どいつもこいつも、

『まだまだ頑張れる』

『寝る暇があるなら、勉強しろ』

『努力が足りない』

と、勝手なことばかりいいやがる。俺の努力も知らないで好きなことばかりつらつらと並べてくる。もううんざりだ。他人の期待に応えるために自分を犠牲にするのは。だから逃げた。

なのに…また…俺に期待するのか? 

「期待される事が嫌で俺は逃げたんだ!もう期待なんてしないでくれ!!」

俺はその言葉を最後にその場から逃げるように駆け出した。そんな俺の耳に、

「少しでも君に期待した僕が間違っていたよ」

何度も聞いたそんな言葉が聞こえた。
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