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第三章 揺れる、夏の光の中で
最後の夏、最後の夜
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八月最後の週末。
いつもより少しだけ、空が高く感じる朝だった。
「よし、揃ったねー!」
陽菜が笑顔で声を上げる。
駅に集合したのは、憧子・和真・航太・陽菜の4人。
目的地は、海沿いの小さなペンション。
中学生のときは考えられなかった、小旅行。
「このメンバーで旅行って、なんか不思議だね」
と、憧子がぽつり。
「不思議だけど、楽しもう!」
和真が隣で笑う。
海までは、電車で約1時間。
会話は途切れることなく続き、時折笑い声が響いた。
* * *
午後、到着した海辺は、夏の終わりの穏やかな光に包まれていた。
海の水はあたたかく、砂浜には小さな貝殻がたくさん散らばっていた。
水着に着替えた陽菜が、バシャッと航太に水をかける。
「ちょ、やめろって!」
「なにそれ、やり返せるもんならやってみな~!」
和真と憧子もその様子を見ながら、笑い合った。
「こういうの、なんかいいよね」
「うん。……夏って感じ」
そんな何気ない会話に、ふと、心がやさしくほどけていく。
* * *
夜は、テラスでバーベキュー。
海の匂いと、炭火の香りが混じる中、焼けたとうもろこしやソーセージを頬張りながら、4人は将来のことを語り始めた。
「ねえ、みんなは将来、何になりたいとかある?」
陽菜が唐突に聞いた。
「うーん……俺は、やっぱり野球かな。プロとかまでは考えてないけど、大学でも続けたい」
和真が照れくさそうに言う。
「私は……まだ分かんないけど、誰かの役に立てる仕事したいな」
と、憧子。
「俺は絵を描くの、好きだから、そっちの道……って言うと笑われそうだけど」
「え、笑わないよ!航太くんの絵、好きだし」
陽菜が即答して、航太は少しだけ顔を赤くした。
「陽菜は?」
「わたし? んー、どこかで誰かの応援をする仕事!具体的には決まってないけど、毎日たのしく働けたらいいな~って!」
「……らしいな」
航太がぼそっと言って、みんながまた笑った。
* * *
夜も更けて、小さな花火大会が始まった。
手持ち花火に火を灯すと、ぱちぱちと色とりどりの火花が夜に映えた。
「最後は線香花火、ね」
陽菜が4本の線香花火を配った。
ふたつの火が、静かに落ちるまで――
そのあとは、自然と2組のカップルに分かれた。
* * *
浜辺を少し歩いた先で、憧子と和真は並んで腰を下ろした。
波の音だけが、静かに耳に届く。
「楽しかったね、今日」
「うん……なんか、終わっちゃうのが、ちょっと寂しいね」
「また、来ようよ。来年も、その次も」
和真が憧子の手をそっと取る。
「憧子。俺、今すごく幸せなんだ。……だから、ありがとう」
「……わたしも。ありがとう」
「好きだよ、憧子。」
「私も、好きだよ。和真。」
顔を近づけた和真に、憧子も目を閉じた。
やさしい潮風の中で、ふたりの唇がそっと重なった。
* * *
その頃、ペンションの裏手の芝生で、陽菜と航太も並んで座っていた。
「なんか、あっという間だったね、今日」
「……うん。楽しかった」
「ちゃんと、笑えてたよ? 航太くん」
「陽菜が、横にいてくれたからな」
陽菜の頬が、ふっと赤く染まる。
「……なあ、陽菜」
「うん?」
「これからも、となりにいてくれる?」
陽菜は黙って頷いたあと、そっと航太に顔を寄せた。
「好きだよ、航太くん」
そのまま、ふたりの影がひとつになった。
* * *
それぞれの想いを抱きながら過ごした、夏の終わりの夜。
もう戻らない季節、だけど――忘れたくない一日になった。
いつもより少しだけ、空が高く感じる朝だった。
「よし、揃ったねー!」
陽菜が笑顔で声を上げる。
駅に集合したのは、憧子・和真・航太・陽菜の4人。
目的地は、海沿いの小さなペンション。
中学生のときは考えられなかった、小旅行。
「このメンバーで旅行って、なんか不思議だね」
と、憧子がぽつり。
「不思議だけど、楽しもう!」
和真が隣で笑う。
海までは、電車で約1時間。
会話は途切れることなく続き、時折笑い声が響いた。
* * *
午後、到着した海辺は、夏の終わりの穏やかな光に包まれていた。
海の水はあたたかく、砂浜には小さな貝殻がたくさん散らばっていた。
水着に着替えた陽菜が、バシャッと航太に水をかける。
「ちょ、やめろって!」
「なにそれ、やり返せるもんならやってみな~!」
和真と憧子もその様子を見ながら、笑い合った。
「こういうの、なんかいいよね」
「うん。……夏って感じ」
そんな何気ない会話に、ふと、心がやさしくほどけていく。
* * *
夜は、テラスでバーベキュー。
海の匂いと、炭火の香りが混じる中、焼けたとうもろこしやソーセージを頬張りながら、4人は将来のことを語り始めた。
「ねえ、みんなは将来、何になりたいとかある?」
陽菜が唐突に聞いた。
「うーん……俺は、やっぱり野球かな。プロとかまでは考えてないけど、大学でも続けたい」
和真が照れくさそうに言う。
「私は……まだ分かんないけど、誰かの役に立てる仕事したいな」
と、憧子。
「俺は絵を描くの、好きだから、そっちの道……って言うと笑われそうだけど」
「え、笑わないよ!航太くんの絵、好きだし」
陽菜が即答して、航太は少しだけ顔を赤くした。
「陽菜は?」
「わたし? んー、どこかで誰かの応援をする仕事!具体的には決まってないけど、毎日たのしく働けたらいいな~って!」
「……らしいな」
航太がぼそっと言って、みんながまた笑った。
* * *
夜も更けて、小さな花火大会が始まった。
手持ち花火に火を灯すと、ぱちぱちと色とりどりの火花が夜に映えた。
「最後は線香花火、ね」
陽菜が4本の線香花火を配った。
ふたつの火が、静かに落ちるまで――
そのあとは、自然と2組のカップルに分かれた。
* * *
浜辺を少し歩いた先で、憧子と和真は並んで腰を下ろした。
波の音だけが、静かに耳に届く。
「楽しかったね、今日」
「うん……なんか、終わっちゃうのが、ちょっと寂しいね」
「また、来ようよ。来年も、その次も」
和真が憧子の手をそっと取る。
「憧子。俺、今すごく幸せなんだ。……だから、ありがとう」
「……わたしも。ありがとう」
「好きだよ、憧子。」
「私も、好きだよ。和真。」
顔を近づけた和真に、憧子も目を閉じた。
やさしい潮風の中で、ふたりの唇がそっと重なった。
* * *
その頃、ペンションの裏手の芝生で、陽菜と航太も並んで座っていた。
「なんか、あっという間だったね、今日」
「……うん。楽しかった」
「ちゃんと、笑えてたよ? 航太くん」
「陽菜が、横にいてくれたからな」
陽菜の頬が、ふっと赤く染まる。
「……なあ、陽菜」
「うん?」
「これからも、となりにいてくれる?」
陽菜は黙って頷いたあと、そっと航太に顔を寄せた。
「好きだよ、航太くん」
そのまま、ふたりの影がひとつになった。
* * *
それぞれの想いを抱きながら過ごした、夏の終わりの夜。
もう戻らない季節、だけど――忘れたくない一日になった。
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