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第三章 揺れる、夏の光の中で
夏の夜、君を想う
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夏休み最後の日曜日の朝、蝉の声が遠くに響いていた。
憧子は自分の部屋で、机に向かっていた。
開いたノートの文字は、途中で止まったまま。
あの夜のことを思い出していた。
和真のあたたかい手。
やさしいキス。
胸がじんわりと熱くなって、何度も思い返してしまう。
「……なんか、夢みたいだな」
憧子は、こっそり笑ってから、また鉛筆を手に取った。
* * *
同じ頃、航太は、自分の部屋のベッドに寝転びながら、天井をぼんやり見ていた。
あの夜、陽菜とキスをしたあと、なんとなく世界が少し変わった気がした。
陽菜の笑顔。
まっすぐに気持ちを伝えてくれる言葉。
「……あいつ、ほんとに強いな」
自分はどうだ。
中三の夏、――憧子。
ずっと、好きだった。
けど、その気持ちを閉じ込めていたのは、自分自身だった。
結局、何も言えなかった。
「いまさら、何言ってんだろうな……」
隣の部屋からは、妹の笑い声が聞こえてくる。
なんでもない音が、なんだか無性に切なかった。
* * *
夏休みが終わり、2学期が始まる。
それぞれの想いは、静かに形を変え始めていた。
憧子と和真は、変わらず仲が良く、教室でも自然に隣にいるようになった。
航太と陽菜も、文化祭に向けて美術部の準備で忙しい日々。
陽菜は明るく振る舞いながらも、ときどき航太の視線が誰かを追っていることに気づいていた。
* * *
ある日、陽菜は静かに言った。
「ねえ、航太くん。わたしね、今すっごく幸せだよ。
でも……ちょっとだけ、不安なの」
「不安?」
「ううん。大丈夫。ちゃんと信じるって決めたから」
航太は、何も言えなかった。
陽菜の言葉の奥にあるものに、まだ向き合いきれていない自分がいた。
* * *
夕暮れの帰り道。
憧子は、ふと立ち止まった。
「ねえ、和真。わたし……ちゃんと前を向いてるかな」
「どうして?」
「いまは、すごく幸せなんだけど……
ときどき、自分の気持ちに自信がなくなるときがあって……」
和真は、そっと憧子の頭をなでた。
「大丈夫。憧子は、ちゃんと前に進んでるよ。
俺は、そんな憧子を好きになったんだから」
憧子は、はにかみながら頷いた。
そして、心の中で小さくつぶやいた。
――ありがとう。ほんとうに、ありがとう。
* * *
風が、夏の終わりの匂いを運んでくる。
それぞれの恋は、揺れながら、でも確かに進んでいた。
すれ違いも、迷いも、不安も。
全部ひっくるめて、きっと、これが「青春」というものなんだろう。
物語は、まだ終わらない。
4人の夏が、ゆっくりと色を変えていく――
憧子は自分の部屋で、机に向かっていた。
開いたノートの文字は、途中で止まったまま。
あの夜のことを思い出していた。
和真のあたたかい手。
やさしいキス。
胸がじんわりと熱くなって、何度も思い返してしまう。
「……なんか、夢みたいだな」
憧子は、こっそり笑ってから、また鉛筆を手に取った。
* * *
同じ頃、航太は、自分の部屋のベッドに寝転びながら、天井をぼんやり見ていた。
あの夜、陽菜とキスをしたあと、なんとなく世界が少し変わった気がした。
陽菜の笑顔。
まっすぐに気持ちを伝えてくれる言葉。
「……あいつ、ほんとに強いな」
自分はどうだ。
中三の夏、――憧子。
ずっと、好きだった。
けど、その気持ちを閉じ込めていたのは、自分自身だった。
結局、何も言えなかった。
「いまさら、何言ってんだろうな……」
隣の部屋からは、妹の笑い声が聞こえてくる。
なんでもない音が、なんだか無性に切なかった。
* * *
夏休みが終わり、2学期が始まる。
それぞれの想いは、静かに形を変え始めていた。
憧子と和真は、変わらず仲が良く、教室でも自然に隣にいるようになった。
航太と陽菜も、文化祭に向けて美術部の準備で忙しい日々。
陽菜は明るく振る舞いながらも、ときどき航太の視線が誰かを追っていることに気づいていた。
* * *
ある日、陽菜は静かに言った。
「ねえ、航太くん。わたしね、今すっごく幸せだよ。
でも……ちょっとだけ、不安なの」
「不安?」
「ううん。大丈夫。ちゃんと信じるって決めたから」
航太は、何も言えなかった。
陽菜の言葉の奥にあるものに、まだ向き合いきれていない自分がいた。
* * *
夕暮れの帰り道。
憧子は、ふと立ち止まった。
「ねえ、和真。わたし……ちゃんと前を向いてるかな」
「どうして?」
「いまは、すごく幸せなんだけど……
ときどき、自分の気持ちに自信がなくなるときがあって……」
和真は、そっと憧子の頭をなでた。
「大丈夫。憧子は、ちゃんと前に進んでるよ。
俺は、そんな憧子を好きになったんだから」
憧子は、はにかみながら頷いた。
そして、心の中で小さくつぶやいた。
――ありがとう。ほんとうに、ありがとう。
* * *
風が、夏の終わりの匂いを運んでくる。
それぞれの恋は、揺れながら、でも確かに進んでいた。
すれ違いも、迷いも、不安も。
全部ひっくるめて、きっと、これが「青春」というものなんだろう。
物語は、まだ終わらない。
4人の夏が、ゆっくりと色を変えていく――
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