『ナッツリンク』〜秘密を抱えた少女 胡桃と少年 みのるの物語〜

あきこうすけ

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第三話:ナッツの割れ目

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胡桃(くるみ)が走り去った後、みのるは呆然と立ち尽くしていた。彼女の心に触れた時、一瞬だけ感じた「恐怖」の感情が、彼の心に重くのしかかる。一体、彼女は何に怯えているのだろうか。

その日の夜、ベッドに入ってもみのるは眠れなかった。彼の**『くるみ』**は、まるで胡桃の心の状態をそのまま反映しているかのように、時折ズキズキと痛む。痛みは、昼間感じた恐怖の感情と同期しているようだった。

『…早く帰ってこい。お前は、俺のものだ』

突然、彼の頭の中に、男の低い声が響いた。その声には、胡桃の恐怖の感情が、まるで刃物のように研ぎ澄まされている。みのるは、飛び起きた。その声は、自分の声ではない。そして、胡桃が怯えていた「何か」の正体だと直感した。

「あんた、今どこにいるんだ?」

衝動的に、みのるは携帯を手に取り、胡桃の連絡先を探した。しかし、彼女と個人的な連絡先を交換していなかったことに気づく。学校のクラス名簿を思い出し、胡桃の住所を手がかりに、彼は家を飛び出した。

胡桃の家は、駅から少し離れた静かな住宅街にあった。家の前まで来ると、明かりが灯っているのが見えた。同時に、彼の**『くるみ』**が激しく痛み、胡桃の心の叫びが聞こえてきた。

『…お願い、もうやめて』

その声は、懇願だった。そして、彼の心に流れ込んできたのは、ひどい自己嫌悪の感情。

『どうして、こんな醜いことを…』

みのるは、恐る恐る家のドアに近づいた。その時、窓のカーテンの隙間から、中にいる胡桃の姿が見えた。彼女は、電話を耳に当てたまま、壁に背中をつけ、ひどく震えている。そして、彼女の目の前には、見慣れない中年の男が立っていた。男は、胡桃に向かって何かを怒鳴っている。

「…俺の言うことが聞けないのか!お前は、俺が作った人形なんだ!」

男の言葉に、胡桃の心が粉々に砕けていくのが、みのるにははっきりとわかった。その痛みが、彼の**『くるみ』**にもダイレクトに伝わり、彼は思わずその場にしゃがみ込んだ。

その瞬間、胡桃の心に、これまでになかった感情が芽生える。それは、絶望から生まれた、微かな反発だった。

『…私は、人形じゃない』

その声が、みのるの心に響く。そして、彼は信じられない光景を目にした。胡桃の心に張られていた、強固な**『殻』**に、ヒビが入り始めたのだ。まるで、内側から力が加わったかのように、そのヒビは少しずつ広がっていく。

彼女の『殻』が割れたらどうなる?中の『実』は、一体誰が守る?

みのるは、自分の**『くるみ』を押さえながら立ち上がった。彼は、もう傍観者ではいられない。彼の『身体』と、彼女の『心』。まるでナッツの殻と実**のような、この奇妙な繋がりが、今、試されようとしていた。彼は、胡桃の『殻』が砕ける前に、彼女の『実』を守らなければならないと直感した。
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