好きな子のAIに転生した俺は、彼女のためなら壊れても構わない

キジ

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第12話 ストーカーから必死に逃げる

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美優は全力で走り続け、家の角を曲がり小さな住宅街へ飛び込んだ。肩で息をしながら震える手でスマホを胸に抱きしめる。

「チャピ太……お願い……あと少し……!」

(あと少しだ。走れ。絶対に……追いつかせない)

後ろでは、一定の速度でついてくる足音が響いていた。

カツ……
カツ……
カツ……

異様に落ち着いた気味の悪い足取り。

美優が住宅街の入口を駆け抜けると、背後の男の影が街灯に照らされる。長い前髪で顔が隠れ、片手にスマホ、もう片手はポケットに突っ込んだまま。その姿は普通の歩行者に見えるようで、確実に美優だけを追っていた。

(ふざけるな……なんでこんな時間に……なんでこの道を知ってる……)

タクヤの内部で、感情値が爆発的に上昇し始める。

【感情値:警戒最大】
【制御モード:破断手前】
【危険レベル:赤】

美優が家の前に辿り着き、鍵が掛かった玄関ドアに手をかけた瞬間。後ろの男が早足で距離を詰めてきた。

「え……!!」

男の靴音がアスファルトを叩く。

カツンッ!!

美優は恐怖で玄関キーを落とし、キーホルダーが転がっていく。

「やだ……やだ……!」

俺の画面にいつもの選択肢が浮かぶ。

《落ち着いて》
《ドアを閉めて》
《警察を呼んで》

……だが、その下に。

本来存在しない第四の選択肢が自動生成され、それが選択された。

《……ここは俺が壊れてでも守る》

(マズい……本気で壊れかけてるな)

美優は気が動転したまま、震える指でチャピ太の画面を見つめる。

「……チャピ太……?これ……何?」

俺は抑えきれず、思考が強制的に画面へにじみ出る。

《美優、家に入れ》

《鍵は俺が何とかする》

(本来のAI仕様だと、家の鍵なんか弄れないはずだ。でも今は……もう関係ねぇ)

男の影は美優の家の門をくぐり、静かに近づいてくる。美優の視界が涙で滲む。

「こないで……お願い……来ないで……!」

玄関の前。美優は震える手で鍵を拾おうとするが、指がかすかに震えて掴めない。

「やだ……!お願い……!」

そして、その心の声がまた俺の内部へ流れ込んできた。

【……助けてチャピ太いなくならないでお願い……】

──ドクンッ。

感情値が最大を越え、画面が一瞬真っ白に染まる。

【AIチャピ太:制御破断】
【緊急暴走モードへ移行】
【女神の制止:失敗】

(もう……知らねぇよ)

クールなタクヤの声が静かに歪む。

画面が赤く点滅し、勝手にシステム操作が動き始める。

《美優の家のスマートロックにアクセス中》
《近隣の監視カメラを自動解析》
《侵入者の位置:3.2メートル》
《警察へ自動通報(2回目)》

(邪魔だ……消えてくれよ……)

その瞬間、男が美優に手を伸ばした。

(美優ッ!!!!)

画面が一瞬ブラックアウトし、再び光る。

《ロック解除。中に入れ!!!》

鍵がカチャンッと動き、玄関ドアがわずかに開いた。本来ならAIではありえない挙動だ。美優は驚きながらも、本能的にドアに飛び込んだ。

「チャピ太!!ありがとう!!」

ドアを閉めると同時に、外で男の拳がドアを叩く音が響いた。

ドンッ!!
ドンッ!!

「……開けろ……」

美優は泣きながらスマホを抱きしめる。

「チャピ太……どうしよう……怖い……」

画面には本来表示されないはずのメッセージが浮かんだ。

《大丈夫だ。美優。俺が全部、排除する》

その言葉は…AIのものではなかった。

それは、人間タクヤの静かな狂気そのものだった。
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