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第14-4話 悪夢は終わった……?
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涙腺が決壊してしまったかのように、ぼろぼろと涙を流し続ける王様。
白い花畑の上で、嗚咽を漏らし続ける。
マドラさんは小さく息を吸い込むと、青い瞳をゆっくりと開いた。
白く美しい指が、仰向けに寝ている王様の頬をそっと包み込む。
「マ、マドラ……?」
「国王陛下、あなたは今日までとても長い時間、『悪夢』を見ておられたのです。お辛かった事でしょうに、私にはお側にいながらもその原因をお察しする事ができないでおりました……しかしもう大丈夫です」
まるで愛おしい赤子を撫でるかのように、王様の頬骨を、首筋を撫でていく。
大量の涙を浮かべた王様の瞳には、優しく微笑むマドラさんの顔が映っていた。
「こちらにいらっしゃる『悪夢祓いの聖女』様が、陛下の『悪夢』を取り除いてくださったのです。もはや不安な夢に怯える必要はありません。どうか私とともに、クエリの父親として共に歩んでくださいませんか?」
「マ、マドラっ…………!!!!」
天を向く王様の顔に、煌めく雫が落ちる。
マドラさんの流した温かな涙は、王様の流した洪水のような涙の筋に混ざって消える。
そっと顔を近づけると、マドラさんは王様の額に優しく口づけをした。
冷たい風が吹き、白い花々が咲き乱れる花畑で成された和解……。
う、うぅぅ……だめだよこれ、感動で泣いちゃう。鼻水でちゃう。
……と思ってたら、やっぱり隣にいるネムちゃんのほうが盛大にボロ泣きしていた。
「うおぉおおぉぉん、よ、良かったなぁマドラさん……良かったなぁ、国王おぉぉぉおぉ」
「ひえ……ちょっとネムちゃん、いくらなんでも泣きすぎだよ……その小さい身体のどこにそんな量の涙が入ってるのさ!?」
「ピルタぁ、だってお前、しょうがねぇだろぉぉ、こんなん泣いちまうよぉぉおおぉ」
おんおんと泣き続けるネムちゃんの声がうるさかったのか、私の腕の中で抱かれていたクエリちゃんがもぞもぞと動き始めた。
私の肩口に頬を擦り付けるようにしたかと思うと、ゆっくりと顔を上げた。
「ん、む……ふゆぅ……おねぇちゃん……?」
眠そうに目をこしこしするクエリちゃん、やばいめっちゃ可愛い。
枯渇寸前の魔力で放った昏睡魔法だったから、眠りが浅かったのかもね。
クエリちゃんの声に気付いたマドラさんと王様も、私に抱かれているクエリちゃんの方を向く。
でもまだまだ寝足りない様子のクエリちゃんは、再び目を閉じると微睡のなかへと戻ってしまった。
「あらあら、クエリったら……」
口元に優しい笑みを浮かべて、マドラさんは私に向けて両手を差し出した。
私はその手に、そっとクエリちゃんを預ける。
慣れた手つきでクエリちゃんを抱き寄せたマドラさんの顔は、必死に戦っていたつい先ほどまでと違って、再び優しいお母さんの顔に戻っているように見えた。
そしてその傍らで横になっている王様も、身体を横たえたままそっと手を伸ばす。
マドラさんと王様は、無言のまま一緒になってクエリちゃんをしっかりと抱きしめた。
その瞬間、はるか遠くに見える山脈の間から、一条の光が差し込んだ。
異世界の夜明けは、ようやくひとつになれた家族を祝福するかのように照らし出す。
愛する娘を抱きしめるマドラさんと王様の頬には、昇ったばかりの陽光を反射して輝く涙の粒が伝っていった。
クエリちゃん、マドラさんを守ってくれてありがとう。
おねえちゃんは、約束を守れたよ……!
「ネムちゃん」
「なんだ? ピルタ」
「……家族って、いいね。こういうのって、日本も異世界も変わらないなっ」
「……ああ、そうだな」
は~、良かった良かった。
これにて、一件落着だねっ!
……
…………
……………………
「あ~あ……せっかくの美味しい『悪夢』がなくなっちゃった。ま、いっか」
「えっ?」
ふと、誰かの声が聞こえた気がした。
聞いたコトが無い、誰かの声。
私は後ろを振り返る。
誰もいない。
目の前には、夜明けの花畑が広がっているだけ。
「どうした、ピルタ? ぶっとばされた騎士の連中を起こしてやって、さっさと城下町に帰ろうぜ」
「ふえっ? あ……うん、そうだね」
気のせい、だったのかな……?
私は風の吹く花畑を見つめていたが、しばらくしてネムちゃんのあとを追うように歩き始めた。
白い花畑の上で、嗚咽を漏らし続ける。
マドラさんは小さく息を吸い込むと、青い瞳をゆっくりと開いた。
白く美しい指が、仰向けに寝ている王様の頬をそっと包み込む。
「マ、マドラ……?」
「国王陛下、あなたは今日までとても長い時間、『悪夢』を見ておられたのです。お辛かった事でしょうに、私にはお側にいながらもその原因をお察しする事ができないでおりました……しかしもう大丈夫です」
まるで愛おしい赤子を撫でるかのように、王様の頬骨を、首筋を撫でていく。
大量の涙を浮かべた王様の瞳には、優しく微笑むマドラさんの顔が映っていた。
「こちらにいらっしゃる『悪夢祓いの聖女』様が、陛下の『悪夢』を取り除いてくださったのです。もはや不安な夢に怯える必要はありません。どうか私とともに、クエリの父親として共に歩んでくださいませんか?」
「マ、マドラっ…………!!!!」
天を向く王様の顔に、煌めく雫が落ちる。
マドラさんの流した温かな涙は、王様の流した洪水のような涙の筋に混ざって消える。
そっと顔を近づけると、マドラさんは王様の額に優しく口づけをした。
冷たい風が吹き、白い花々が咲き乱れる花畑で成された和解……。
う、うぅぅ……だめだよこれ、感動で泣いちゃう。鼻水でちゃう。
……と思ってたら、やっぱり隣にいるネムちゃんのほうが盛大にボロ泣きしていた。
「うおぉおおぉぉん、よ、良かったなぁマドラさん……良かったなぁ、国王おぉぉぉおぉ」
「ひえ……ちょっとネムちゃん、いくらなんでも泣きすぎだよ……その小さい身体のどこにそんな量の涙が入ってるのさ!?」
「ピルタぁ、だってお前、しょうがねぇだろぉぉ、こんなん泣いちまうよぉぉおおぉ」
おんおんと泣き続けるネムちゃんの声がうるさかったのか、私の腕の中で抱かれていたクエリちゃんがもぞもぞと動き始めた。
私の肩口に頬を擦り付けるようにしたかと思うと、ゆっくりと顔を上げた。
「ん、む……ふゆぅ……おねぇちゃん……?」
眠そうに目をこしこしするクエリちゃん、やばいめっちゃ可愛い。
枯渇寸前の魔力で放った昏睡魔法だったから、眠りが浅かったのかもね。
クエリちゃんの声に気付いたマドラさんと王様も、私に抱かれているクエリちゃんの方を向く。
でもまだまだ寝足りない様子のクエリちゃんは、再び目を閉じると微睡のなかへと戻ってしまった。
「あらあら、クエリったら……」
口元に優しい笑みを浮かべて、マドラさんは私に向けて両手を差し出した。
私はその手に、そっとクエリちゃんを預ける。
慣れた手つきでクエリちゃんを抱き寄せたマドラさんの顔は、必死に戦っていたつい先ほどまでと違って、再び優しいお母さんの顔に戻っているように見えた。
そしてその傍らで横になっている王様も、身体を横たえたままそっと手を伸ばす。
マドラさんと王様は、無言のまま一緒になってクエリちゃんをしっかりと抱きしめた。
その瞬間、はるか遠くに見える山脈の間から、一条の光が差し込んだ。
異世界の夜明けは、ようやくひとつになれた家族を祝福するかのように照らし出す。
愛する娘を抱きしめるマドラさんと王様の頬には、昇ったばかりの陽光を反射して輝く涙の粒が伝っていった。
クエリちゃん、マドラさんを守ってくれてありがとう。
おねえちゃんは、約束を守れたよ……!
「ネムちゃん」
「なんだ? ピルタ」
「……家族って、いいね。こういうのって、日本も異世界も変わらないなっ」
「……ああ、そうだな」
は~、良かった良かった。
これにて、一件落着だねっ!
……
…………
……………………
「あ~あ……せっかくの美味しい『悪夢』がなくなっちゃった。ま、いっか」
「えっ?」
ふと、誰かの声が聞こえた気がした。
聞いたコトが無い、誰かの声。
私は後ろを振り返る。
誰もいない。
目の前には、夜明けの花畑が広がっているだけ。
「どうした、ピルタ? ぶっとばされた騎士の連中を起こしてやって、さっさと城下町に帰ろうぜ」
「ふえっ? あ……うん、そうだね」
気のせい、だったのかな……?
私は風の吹く花畑を見つめていたが、しばらくしてネムちゃんのあとを追うように歩き始めた。
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