口撃のヤマト~異能を狩る天才~

最十 レイ

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第二章 宝探し

第113話 永遠の約束

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 こうして謎は残るものの、打ち上げは滞りなく開催されていく。
 皆、談笑しながら料理に舌鼓を打ち、テンションは最高潮。今日一の盛り上がりを見せていた。

 しかし、この男は……この男だけは、どうもそんな気持ちにはなれなかったようで……

「まだ抜け出すには早いんじゃないかい? ……大和くん」

 と、二階のバルコニーに佇んでいた渡は、振り向くことなく、階段を上がってきた大和へとそう尋ねる。

「そりゃ、こっちのセリフだ。お前だって全然、参加してないだろうが」

 大和はそんな渡の隣へ赴くと、まだまだ日の明るい大通りを眺め遣る。
 しばらく道行く人々を目で追っていると、渡がフッと微笑みながら言葉を紡ぎ始めた。

「……いい景色だね」
「いや、そうでもないだろ。夜景ならまだしも、ただの大通りだし……」
「ただの冗談さ。マジメに受け取るなよ」
「またそうやって、のらりくらりと躱すつもりか? だが、オレは約束通り優勝した。もう逃げられないぞ?」

 渡は大和から射るような視線を向けられるも、相変わらずその目はまっすぐ前を向いたまま。まるで意に介していない様子。

「そうだね。これで心置きなく転校できるよ。ありがとう」
「この世界はどうなる?」
「世界? 別にどうもならないよ。せいぜい僕が居なくなって、ちょっと寂しくなるだけさ」
「相変わらず認めるつもりはないってわけか?」
「認めるも何も証拠がない。兄貴の証言だけじゃ、僕は捕まえられないよ。『口撃のヤマト』くん?」

 渡はさも皮肉るようにその異名を呼ぶ。

 そう。『口撃のヤマト』とは類稀なる頭脳、そしてそこから生み出される巧みな話術によって付けられた異名だ。だが今ではそれが、なんの証拠もなく、ただ世界がどうこうとのたまうだけ。当然、そんなことで認められる訳がない。だからこそ渡は、『それでは『口撃のヤマト』の名が廃るぞ』と衝いているのだ。

「ぐうの音も出ないな……。どうもお前を前にすると頭が回らなくなる。世界がどうとか、どうでもいいって決めたはずなのにな……」
「まあまあ、落ち込むことはないさ。何も悪いことばかりじゃない。優勝したことによって君は、かけがえのないものを手にしたじゃないか」

 大和は幾分か肩を落としつつ、「かけがえのないもの……?」と、今一度渡の横顔を見遣る。

「そう……『絆』っていうかけがえのないものをね。今回の一件で二年B組は見事、一つとなった。今後の君を思えば、これはきっと必要なものだろう。
「――ッ⁉ お前……どこまで知って……?」

 と、を言い当てられ、思わず目を見開く大和。

「それに今回のレクリエーション、優勝を目指したことによって多少なりとも収穫があったんじゃない? 君にとってはさ?」

 そして更なる衝撃の一言に、さすがの大和も冷や汗が零れ始める。
 末恐ろしくなったのか、手摺を握る手もより一層強さを増していた。

「……『異能狩り』のことを言ってるのか? まさか、その為に優勝を?」
「さあね? どう捉えるかは君次第だ。どう選択するかもね……」

 また風に舞うかの如く、掴みどころのない渡。
 大和ももう手を伸ばすのはやめんと、今一度、大通りへ視線を移しつつ、冗談交じりに呟く。

「やっぱお前……『外星人』だろ?」
「またそれかい? くどいね君も……」

 クスクスと笑う声が耳に届くなり、大和は溜息と共に今度は本音を。

「……結局、お前のことは何一つ分からずじまいか」
「そう不貞腐れないでくれよ。それなりのエンディングは用意してるつもりだからさ」
「エンディングねぇ……。あいつらに言わなくていいのか?」
「転校のことかい? いいよ……。盛り上がってるところに水を差したくないし」
「じゃあ、今日が最後か?」
「まあ、そうなるだろうね」
「お前は転校する……それでいいんだよな?」
「そうだよ。僕は転校する。それ以上でも、それ以下でもない」

 その答えに沈黙を余儀なくされる大和。
 ……が、その沈黙は去りゆく友を悲しんだわけではなかった。

「なら……今度はオレの願いを聞いてもらおうか?」
「え?」

 寧ろ大和は罠に掛かった獲物に笑みを浮かべてみせ、渡を漸く己が領域内へと引きずり込んだのだ。

「お前は外星人でも世界の命運を握る男でもないんだろ? それなのにオレは優勝を目指した。釣り合い取れてなくないか?」
「おーっと……まさか、そんな風に取られるとは思ってなかったよ……。さっき僕、言ったよね? 絆がーとか、収穫がーとか……」
「お前こそ言ってただろ? 『どう捉えるかは君次第』って。だからオレはオレ自身の力で勝ち取ったと捉えた。つまり、お前は何もしてくれていない。何か間違ってるか?」
「間違って……ないね……。僕がそう言っちゃったんだし……。ほーんと言葉尻捕えるの得意だよねー、君……」

 嬉しいやら悲しいやら、複雑な心境で苦笑いする渡。

「じゃあ、オレの願い……聞いてくれるな?」

 というわけで、大和からの強引な『口撃』により、

「僕にできる範囲でなら……なんなりと」

 観念した渡は、友からの願いを聞き入れた。
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