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第二章 宝探し
第114話 別れの刻
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時刻は十五時を過ぎた頃……大和も再び合流し、一頻り打ち上げを堪能した二年B組は、そろそろお開きと解散ムードに。
あとは各々、二次会に行くなり帰宅するなりとグループに分かれ、ぞろぞろとエントランスの方へと集っていく。
すると後方の階段から、見送りの為と渡も顔を出す。
そのことに気付いた神田は、いの一番に声を張り上げると、
「おう、渡っ! 今日は世話になった! また明日な!」
手を振りながら他の者にも渡の存在を周知させる。
「ありがとねー、渡くん!」
「また今度なんかあったら頼むわー!」
「じゃあなー!」
神田に続き、満面の笑みで手を振ってくるクラスメイト。
渡は何処か気恥しそうに「うん……」と手を振り返すと、レストランを後にする彼らを微笑みながら見送った。
そして最後はいつものメンバー……
「ふぅー……食った食った。せやったらワシらも帰るわ。じゃあの、渡!」
伍堂は腹をさすったのち、渡を見上げては片手を上げ、
「疲れてるからって明日サボるんじゃないわよー、渡!」
藤宮も今や自然な笑みで手をメガホン代わりに。
「今日は御馳走様でした。また明日、学園で……渡くん」
対して牧瀬は親しき中にも礼儀ありと、丁寧にお辞儀をしていた。
「ああ……また明日」
渡はこみ上げてくる気持ちを精一杯抑え、今できる最大限の笑みで友人たちへと返す。
確かな友情を肌で感じ、まさに一つとなった一行。
となれば当然、幕引きを担うのはこの男……
「じゃあ、またな……渡」
しかし、行く末を知っているはずの大和から出たのは『また』という言葉。
渡はポケットの中に入れていた左手を握り締めると、先程交わした『最後の約束』を思い返す。
◆
二時間ほど前――
「それが……君の願い?」
と、珍しいジト目で大和を睨む渡。
「ああ。もちろんお前ならできるよな、渡?」
しかし大和は全く気に留めず、依然として『口撃』モードを崩さない。
「君は僕を神様かなんかと勘違いしてないかい? あんまりいいように使われるのも嫌なんだけど……」
「オレはできるのかできないのかを聞いてるんだ。で? 答えは?」
ここで溜息を一つまみ。渡はガクンと首を落とすと、頬をポリポリ掻きながら、何とか己が意見を絞り出す。
「まあ、やってみないと何とも――」
「じゃあ出来るな? あとのことは任せたぞ……渡」
結果、渡は完全にペースを掴まれてしまい、口から出るのは「はい……」という白旗だけ。
その姿を見て満足げに頷いた大和は、いきなり『永遠の指輪』を外すと、渡に向かって指で弾いてみせた。
「おっと……! これは……どう受け取ったらいいのかな?」
渡は一応受け取るも、その真意が読めず、眉を顰めている。
「それは『永遠の指輪』だ。別に皆まで言わなくても分かるだろう?」
「……え? 愛の告白?」
大和は珍しくズッコケつつ、「違うわアホ」と若干目に角を立てる。
「だって手に入れた経緯を考えたら、そう捉えるのも無理ないだろう? トレヴィの泉の言い伝えになぞらえるなら、『永遠』は大切な人とずっと一緒に居るってことなんだからね」
「そこをいい感じで受け取れって言ってんだよ。例えばその……オレらの友情は『永遠』だとか、離れててもずっと一緒だとか……」
と、照れ隠しなのか、俯き加減で視線をそらす大和。
そんな似合わぬもまっすぐな姿に、あの渡も思わず顔が綻んでしまっていた。
「君も案外、ロマンチストな奴だね」
「……ほっとけ」
渡は口をすぼめた友の想いに頷くと、『永遠の指輪』を左中指にはめては、その隙間なく敷き詰められたダイヤを眺め遣る。
黄金のアームは不思議と己が指にフィットしており、まるでオーダーメイドでもしたかのような付け心地だった。
「『永遠』、『別れ』、そして『再訪』か……。意味は違うけど確かに今の僕にはピッタリかもね」
「ああ。だが、やったわけじゃないぞ? 一旦、預けただけだ。だから必ず返しに来い……オレらのところに」
◆
現在――
渡は交わした約束を胸に、ポケットの中に入れていた左手を今一度握り締め、空いていたもう片方の手で真なる友を見送る。
「ああ。またね……大和くん」
大和は数瞬間を置いたのち、ゆっくり微笑んでみせると……小さく頷いた。
もうこれ以上、言葉はいらない。振り返る必要も……
大和はそう決意すると踵を返し、他のメンバーを引き連れ、まっすぐ新たな一歩を踏み出していく。
次に会うのは最後の時……
渡もそんな得も言われぬ感情に浸りつつ、左手を出しては『永遠の指輪』に視線を落とす。
が、その直後――
「できない約束はするもんじゃねえなぁ……サブ」
後方から強烈な怒気を纏う、『最凶』の存在が降臨してしまう。
あとは各々、二次会に行くなり帰宅するなりとグループに分かれ、ぞろぞろとエントランスの方へと集っていく。
すると後方の階段から、見送りの為と渡も顔を出す。
そのことに気付いた神田は、いの一番に声を張り上げると、
「おう、渡っ! 今日は世話になった! また明日な!」
手を振りながら他の者にも渡の存在を周知させる。
「ありがとねー、渡くん!」
「また今度なんかあったら頼むわー!」
「じゃあなー!」
神田に続き、満面の笑みで手を振ってくるクラスメイト。
渡は何処か気恥しそうに「うん……」と手を振り返すと、レストランを後にする彼らを微笑みながら見送った。
そして最後はいつものメンバー……
「ふぅー……食った食った。せやったらワシらも帰るわ。じゃあの、渡!」
伍堂は腹をさすったのち、渡を見上げては片手を上げ、
「疲れてるからって明日サボるんじゃないわよー、渡!」
藤宮も今や自然な笑みで手をメガホン代わりに。
「今日は御馳走様でした。また明日、学園で……渡くん」
対して牧瀬は親しき中にも礼儀ありと、丁寧にお辞儀をしていた。
「ああ……また明日」
渡はこみ上げてくる気持ちを精一杯抑え、今できる最大限の笑みで友人たちへと返す。
確かな友情を肌で感じ、まさに一つとなった一行。
となれば当然、幕引きを担うのはこの男……
「じゃあ、またな……渡」
しかし、行く末を知っているはずの大和から出たのは『また』という言葉。
渡はポケットの中に入れていた左手を握り締めると、先程交わした『最後の約束』を思い返す。
◆
二時間ほど前――
「それが……君の願い?」
と、珍しいジト目で大和を睨む渡。
「ああ。もちろんお前ならできるよな、渡?」
しかし大和は全く気に留めず、依然として『口撃』モードを崩さない。
「君は僕を神様かなんかと勘違いしてないかい? あんまりいいように使われるのも嫌なんだけど……」
「オレはできるのかできないのかを聞いてるんだ。で? 答えは?」
ここで溜息を一つまみ。渡はガクンと首を落とすと、頬をポリポリ掻きながら、何とか己が意見を絞り出す。
「まあ、やってみないと何とも――」
「じゃあ出来るな? あとのことは任せたぞ……渡」
結果、渡は完全にペースを掴まれてしまい、口から出るのは「はい……」という白旗だけ。
その姿を見て満足げに頷いた大和は、いきなり『永遠の指輪』を外すと、渡に向かって指で弾いてみせた。
「おっと……! これは……どう受け取ったらいいのかな?」
渡は一応受け取るも、その真意が読めず、眉を顰めている。
「それは『永遠の指輪』だ。別に皆まで言わなくても分かるだろう?」
「……え? 愛の告白?」
大和は珍しくズッコケつつ、「違うわアホ」と若干目に角を立てる。
「だって手に入れた経緯を考えたら、そう捉えるのも無理ないだろう? トレヴィの泉の言い伝えになぞらえるなら、『永遠』は大切な人とずっと一緒に居るってことなんだからね」
「そこをいい感じで受け取れって言ってんだよ。例えばその……オレらの友情は『永遠』だとか、離れててもずっと一緒だとか……」
と、照れ隠しなのか、俯き加減で視線をそらす大和。
そんな似合わぬもまっすぐな姿に、あの渡も思わず顔が綻んでしまっていた。
「君も案外、ロマンチストな奴だね」
「……ほっとけ」
渡は口をすぼめた友の想いに頷くと、『永遠の指輪』を左中指にはめては、その隙間なく敷き詰められたダイヤを眺め遣る。
黄金のアームは不思議と己が指にフィットしており、まるでオーダーメイドでもしたかのような付け心地だった。
「『永遠』、『別れ』、そして『再訪』か……。意味は違うけど確かに今の僕にはピッタリかもね」
「ああ。だが、やったわけじゃないぞ? 一旦、預けただけだ。だから必ず返しに来い……オレらのところに」
◆
現在――
渡は交わした約束を胸に、ポケットの中に入れていた左手を今一度握り締め、空いていたもう片方の手で真なる友を見送る。
「ああ。またね……大和くん」
大和は数瞬間を置いたのち、ゆっくり微笑んでみせると……小さく頷いた。
もうこれ以上、言葉はいらない。振り返る必要も……
大和はそう決意すると踵を返し、他のメンバーを引き連れ、まっすぐ新たな一歩を踏み出していく。
次に会うのは最後の時……
渡もそんな得も言われぬ感情に浸りつつ、左手を出しては『永遠の指輪』に視線を落とす。
が、その直後――
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後方から強烈な怒気を纏う、『最凶』の存在が降臨してしまう。
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