FORTH

Azuki

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9話 継承

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——中央区 大通り——

「あ…あの生物をたったの一撃で…」

突如現れた赤い髪の女。その女から繰り出された1つの凄まじい炎の玉【紅蓮の隕石】。

【イフリート】を完全消滅し、呆気なくケリがついた。

その光景に千馬と美潤は二人近づき、口をぽかんとあけ、呆然と見ていた。

「よぉ、ひよっこ共。」

そう言うと、赤い髪の女は二人に歩いて近づいてくる。

赤いジャラジャラとした数珠みたいなのを首に身につけている。

「お前らはー、Forsの戦士達か?」

赤い髪の女の問いかけに、はいと答える二人。すると女はニヤッと笑うとポケットに手を入れ、振り向き、歩いていく。

「私は"五天峰"の一人、"世嶺紅葉"(よみねくれは)だ…。お前らも少しはやるようだが、時間がかかりすぎだ。仕事はさっさと済ませろ、ひよっこ」

そう言い残しどこかへ歩いていく。

二人は顔を合わせると、少し驚いた顔で、歩いていく紅葉の後ろ姿を見つめる。

「あ…あれが、"五天峰"…。」

中央区は静まり返り、ただビルの炎などがメラメラと燃え続けている。

これで解決した…。二人はそう思い、少しホッとしたのも束の間だった…。

ゴォッッ

突如現れた一人の影が紅葉目掛けて、"剣"を振る。

目を見開き、突如現れ、攻撃してきたその影に紅葉はすぐ反応し後ろに飛び避ける。

その剣はかわした紅葉の足元のアスファルトに直撃し、巨大なヒビが地面にできる。

ドカーーーーン!

避け、着地した紅葉は「まだいたか」とニヤッ笑いながらゆっくりと体勢を整える。

ビビわれた地面の辺りは土埃で何も見えない。

その中で剣を地面から引き抜き、煙の中からゆらゆらと一人の影が揺れる。

突如起きた出来事に千馬と美潤は驚き立ち上がる。

「なんだ…今度は一体」

「まだいるの…!?」

広がる土埃が少しずつ薄くなってくると思いきや、突如目をギラッと開く"男"が飛び出してくる。

剣を突き刺し飛び出してくるその男に、紅葉は目を見開きニヤリと笑うと、手から炎を撃ち放つ。

「烈炎っ!!!」

その男は【烈炎】を避けるのかと思いきや、"剣"に炎を纏った。
剣の周りを炎がグルグルと巻き込み、紅葉を剣でたたく。

バーーン!!

紅葉はその炎剣を右腕でガードすると、ズザーーと10メートルほど後ろに立ったまま飛ばされる。

右腕が少し痺れる。紅葉はさっきの【イフリート】とは天と地の力の差を感じ、心が燃え上がる。

「お前…一体何者だ」

目は睨みつけるが口はニヤッと笑い、男に挑発気味で問いかける。

銀色の髪、白いマントにギラギラと白く光る剣を右手で持ち上げ、ゆっくりと体勢を直すと男は言う。

「さっさと、本気を出してみろ」

静かではあるが、おぞましい力を感じるその声は、"強者の余裕"を感じる。

「何年ぶりか…こうしてなめられるのは…」

紅葉は右手をバッと開くと、ゴォォォと剣が創成される。

「アレイス…」

メラメラと紅く、黒く燃える少し大きな剣。

「なかなか、やるようだ」

紅く黒く燃える剣を見ると、銀色の髪の男は、すこし余裕そうに見つめながらそう言った。

その出来事に千馬と美潤は参戦しようと、手に持った剣を構え、動こうとする。

「ひよっこ共は来るな」

紅葉は前を見ながら二人に言う。

「こいつは…お前らじゃどうも、手に負えない野郎のみたいだ…」

「で、でも!協力した方がきっと…!」

「死にたいのか…?お前ら」

千馬と美潤は足が止まる。そして剣をゆっくりと下ろすと二人顔をあわせる。

「さっさと本部に連絡してこの状況を伝えろ」

そう言うと、紅葉は創成された剣を両手に持ち構える。

美潤は千馬をチラッと見ると焦るように言う。

「どうするのよ、この状況…」

千馬は紅葉と銀色の髪の男を見ながら、ゆっくりと話す。

「おそらくこれは…"俺たちとは全く違う領域で生きてる奴らの戦い"なのかもしれない…」

「…は?どゆことよそれ」

千馬は焦る美潤を見るとすこし深刻そうに言う。

「俺たちじゃ"足手まとい"ってことだ」

そう言うと、千馬は手に持つ剣をサーっと消し、耳に手を当てると、本部に連絡する。

「こちら五十嵐と美潤だ。"虎さん"につなげてくれ」

——アキュラ 本部——

「虎帯さん!五十嵐と天女から連絡です!」

「繋げろ」

少しガラッとした声でそういうと、タバコをじっじっと黒い灰皿で火を消し捨てる。

そしてマイクを左手に持ち叫ぶ。

————————————

(おっせぇーーんだよ!!!連絡がぁ!!)

突如叫ぶ虎帯の声に千馬と美潤はビクッと驚く。

「と…虎さん。そんな急に叫ばないでください」

(ばっかやろぉ、心配したじゃねぇかガキ)

明らかに怒っているガラガラとした声で通話先の虎帯は心配したことを明かす。

五十嵐千馬、天女美潤は、【シグナス】【ライラ】そしてもう一つの【Fors】の戦闘チーム、【アキュラ】に所属する戦士達である。
そして今通話している虎帯という男は、先日あった総本部での会議でFors代表"ルミリエル・ノア"に反発したあの、ヤクザのような男であり、"【アキュラ】の司令長"である。

(お前ら一体何してやがったんだ、今どこだよおいごら)

「え…えっとー、中央区の大通りで謎の生物と戦ってました」

(んで、勝ったのか…?)

「いや…まあ勝てたのには勝てたんですけど、僕たちがやったわけでは…」

(おぉぉ、やっぱりやってくれたか!さすがだぞお前らぁ)

「いや、いや違うんすけど…」

(で!!今どういう状況だおい)

「え?あ、えっと、今また新しい敵が現れて…それを連絡しようと…」

(なんだとぉー?それは一体どういうことだおい)

「いや。それで、なんか、"五天峰"の一人が助けに来てくれて、その人たちが今まさに戦闘体勢であると伝えようとしてるんです」

(…五天峰だとぉ?)

少し間が空いたが、虎帯はさらに問いかける。

(一体誰だ、その五天峰の野郎は)

「あー、前虎さんが言ってた、世嶺紅葉って人です。」

(…あの紅蓮ババァだとぉ?)

「いやババァって言うほどババァに見えなかったっすけど」

(で、今お前らはなにしてんだ)

「連絡しろと紅葉さんに、言われて…」

(……そーか。ならお前らぁ、"救助"に移れ。まだ周りに助けられそうなアホ共がたくさんいんだろ)

「あ、アホ共って…」

(まぁほんとにお前らが無事で良かった、さっきまで"忙しかった"からなぁ)

「そ、そーですか。とりあえずまた後で連絡します!」

そういうと、千馬は手を耳から下ろすと、美潤を見て、救助に移るぞ、と言う。

その瞬間だった。

ガーーーーン!!

すぐそこで銀色の髪の男が持つ剣と、紅葉の紅く黒い剣がぶつかる。

その威力は凄まじく、周りのものを吹き飛ばし、木は揺れ、窓は割れる。

その光景を見ている二人は、我に帰ったかのように、目を合わせると、少しケジメをつけた顔で、後ろを振り返り、走って救助に向かう。

ガーーーーン!!

二人は衝撃ではね返り、後ろに弾かれる。

ズザーー

銀色の髪の男は赤い髪の女を侮るように見ると、口を開く。

「お前の本気はその程度か…?」

「…だったら…どーするつもりだ?」

「非常に残念だ…」

「…"残念"?」

紅葉はその謎の発言に少し興味を持ち、疑問感を持つ。そしてニヤッと笑いながら言う。

「"チャンス"じゃないのか?…フッ、思ったより欲張りだな貴様」

煽りに火がついた紅葉は、さらに右手に持つ剣を紅く燃え上げる。
その紅く燃える剣を見つめ、銀色の髪の男は見下すように話す。

「欲張りで何が悪い?"力"の増強は"栄光"への架け橋…。やはり格が違う。聞いてやろう貴様の"フォース"…」

その質問に少しニヤリと笑うと、自信があるかのように、紅葉は口を開く。

「私の"フォース"…。どの炎よりも紅く、熱く、強く、焼き尽くす…。この力は…」

剣はさらにメラメラと紅く燃え上がる。

「"紅蓮"だ。地獄の炎を焼き尽くす"紅蓮の炎"で、貴様を葬むってやる」

そういうとギラッと銀色の髪を睨みつけ、走り出す。

「貴様は一体何者だ!!」

銀色の髪の男は初めて表情を変え、少しニヤッと笑うと、やっと本気を出したかと言わんばかりの顔で紅葉を睨みつける。

「私の名は、"リアム・アルシオ"。お前を殺し、"紅蓮"は必ず奪ってやる」

二人は凄まじいスピードで接近すると、雷が落ちたかのような音を東京中に響かせて、紅い剣と、白い剣がぶつかりあう。

——渋谷区——

「りゃぁーー!!」

フォース"格闘" 伊良知 奈々子の拳が召喚されたヒュドラの4本の首の一つを吹き飛ばす。

「とりあえず一つ!」

ガルルルル

しかしもう一本の首が奈々子を噛みつこうとする。

「土噴火!」

地面から突如、柱状の土が噛みつこうとしたヒュドラの顎に直撃する。

グシャッ

首がまたもや吹き飛ぶ。
フォース"土"足留奏太の【土噴火】で奈々子をぎりぎり救う。

「ありがと」

そう言って着地する奈々子。
すると、残りの2本の首が口を大きく開くと、赤い炎の息吹を放つ。

ゴォォォォ!

「ギガントスクード!」

その炎の息吹を、フォース"盾"杉谷淳人が【ギガントスクード】でガードする。

炎の息吹は巨大な盾にぶつかると、横に広がっていく。

- - - - - - - - - - - - - - - - - -

(あいつ、どうやって倒す…)

(ハァハァ、あいつの弱点はおそらく、炎の息吹を出した"後"だ。俺が盾で起点を作る。お前らで殴るんだ)

- - - - - - - - - - - - - - - - - - 

「スイッチッ!!」

盾により炎の息吹が横に散る。そして耐え終わった瞬間…

奈々子が淳人の後ろから飛び出す。

その姿を見たヒュドラは、すぐに炎を吹くことができないため、一本の首で噛みつこうとする。

- - - - - - - - - - - - - - -

(なら奈々子、お前が殴れ。おれはあいつが噛みつこうとしたところをなんとかする。)

(でもどうやって倒せるのよ)

(もしかしたら…)

- - - - - - - - - - - - - - 

奏太は地面に手をつく。

「ソイル ハンド!」

地面から飛び出した土がヒュドラの足首を掴む。

「トリップ!」

土がグッと手前に動く。

ガッ!?

ヒュドラは突然足をかけられバランスを崩す。

噛みつこうとした首が届かない。

- - - - - - - - - - - - - - -

(もしかしたら…"首を全部吹き飛ばしたら"いけんじゃねーのか)

 - - - - - - - - - - - - - - - 

「首を"2本とも"全部っ!!」

奈々子は空中で右足を後ろに構える。

「六道武術 一脚道!!三日月龍華!!」

凄まじいスピードで振り下ろされた右足は青白い断裂斬を生み出し、重なる2本の首をズバッと斬り下ろす。

バーーン

2本の首が地面に落ち、土埃が辺りを覆い尽くす。

「よしっ!!」

3人ガッツポーズをとり、ひとまず巨大なヒュドラを倒せたことを喜び合う。

「さあ、次だ!まだあの生物がうじゃうじゃいるかもしれねぇ!」

そう言うと淳人は振り向き走ろうとする。

「あぁ!」
「うん!」

残りの二人も走り出そうとした瞬間…

ゴォォォ

淳人目掛けてヒュドラの首が伸びていく。

「…!?淳人!避けろぉ!!!」

二人は淳人に倒したはずのヒュドラの首が襲いかかるのに気づき、手を伸ばす。

ガシっ!!

「ぐわぁ!!」

淳人はヒュドラに噛みつかれ、捕まってしまったのだ。

「淳人!!六道武術 三拳道!昇龍拳!!」

ヒュドラのすぐそばまでくると、淳人を掴む首の根本を右手で、上に振り上げ巨大な拳が強く殴る。

ズドーーーン!

その凄まじい一撃に、ヒュドラは淳人を口から離す。

「ぐわぁ!」

奏太は淳人を落ちてくるとこまで走り、キャッチする。

「大丈夫か淳人っ!」

「くっ、す…すまねぇ」

淳人はヒュドラに噛みつかれた為、腹と肩に傷を負い、血が出ている。

奏太はその姿を見ると、手を耳に当て叫ぶ

「海さん!聞こえますか!?至急救助を頼みます!淳人が!」

———————————

ライラ本部 司令室

「あぁ、大丈夫だよ。もう君たちは…」

———————————

(完全に負けない状況だ)

ヒュドラの周りにはライラの戦闘員が既に救助に来ている状況だったのだ。

——9話 完——




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みんなの感想(1件)

スパークノークス

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Azuki
2021.08.17 Azuki

ありがとうございますっ!!

この後も結構たくさんの種類のフォース出てくるんでお楽しみにっ!!

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