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1話.上手くいかない日々
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小さいころ、手を繋いでいる高校生のカップルを見て、飴玉を舐めながら、ふと思ったことがある。
僕にもあれぐらいの年になれば好きな人が出来て、あんな風に付き合ったりするんだろうな。
そんなことを考えていた小さいころの僕に言ってやりたい。
現実はその飴玉のように甘くはなかったぞ、と。
学校での授業がすべて終了した今日、担任の先生がホームルームの時間に、先日行った中間テストの成績表を配っていた。
一人ひとりに出席番号順で名前を読んでいく。
出席番号最後の僕は手を組んで、祈るような姿勢で、名前を呼ばれるのを今か今かと待つ。
すでに成績表を配られたクラスメイト達は互いの点数を見せ合い、勝敗を競い合っている。
クラスに親しい友達もおらず、頭の悪い僕にとって、点数を競い合うなんて、縁のない話だ。
そして僕の一つ前の人が呼ばれ、僕の番が訪れる。
「次は山田」
来た。
「はい」
先生の前に行くと、先生は僕の成績を眺めて、眉を顰め、困った表情をする。
「山田、お前しっかり勉強してるのか?」
「……してるはずなんですけどね」
やはり言われると思っていたことを言われると少し心苦しい。
頬を掻く僕を見た担任の先生は、諦めたような溜息を吐き、全ての教科が平均点より少ない点数が記された成績表を渡してくれる。
「まあ、赤点ではないからこれ以上は何も言わないが、大学に進学する気なんだろ? このままじゃまともな大学に行けないぞ」
「はい……」
担任の言葉を嫌なほど痛感し、自分の席へと戻る。
成績表を見て、学年の順位を確認する。
順位は下から数えた方が早いほどの成績の悪さだ。
はぁと溜息を吐きながら、頬をつく。
全く、世の中とは不便なものだ。
どんなに努力をしても結果が大して変わらない者と、大して努力をしていないのにしっかり結果が出る者がいるこの世の中は理不尽だ。
得意不得意でその逆もあるわけなんだが、僕に至ってはその得意なものが一切ないので、いい結果がついた試しがない。
今回の中間テストも一週間前からしっかり勉強した筈だったが、結果は全教科赤点ギリギリと芳しくなかった。
僕は今までいろんなことに手を出し、いい結果を出そうとした。
サッカー、野球、水泳、柔道それはもう色々だ。
だが結果は、サッカーはリフティング五回が最高、野球はいつも空振り三振、水泳は25メートル泳ぎ切れない、柔道は年下の女子に背負い投げされるという始末。
ホントに今まで生きてきてうまくいったことは何一つもなかった。
また今回もダメだったと落胆していると、近くの席の周りが騒ぎ始めた。
「香取さん凄い! また学年トップだなんて」
「そ、そんなことないよ……」
謙遜する彼女の成績表を盗み見たのだろう女子が大きな声を上げる。
その声を聞いた周りのクラスメイト達は「どうやったら、そんなにいい点数を取れるの?」「さすが香取さん」など言いながら彼女の周りに集まっていく。
注目を浴びた彼女は集まってきたクラスメイト達に周りをソワソワと見ながら、困惑している。
彼女の名前は香取彩芽、才色兼備で誰に対しても分け隔てなく接してくれる女の子だ。
そのおかげで香取さんは男子から非常に人気があり、注目を浴びるのが苦手な香取さんにはばれないように密かに香取さんを見守る会が存在しているほどだ。
一方でその人気が気に入らない女子も少なからず存在し、今回は彼女のことを嫌う女子の嫌がらせだろう。
「え、えっと……」
人が集まり、どうすればいいのか分からない香取さんが困っていると一人の金髪の女の子が近づいてきた。
「はいはーい、皆、離れてねー。彩芽、凄く怯えてるでしょー。はい、かいさんかいさーん」
彼女は綺麗に切り揃えられた短髪を振り、手を叩き、香取さんの周り集まっていたクラスメイト達を追っ払っていく。
「澪、ありがとー。助かったよ!」
周りに人がいなくなり、強張っていた表情を和らげた香取さんは、助けくれた女の子に抱き着く。
「おー、よしよし。怖かったねー」
香取さんが抱き着いた彼女の名前は村上澪。
村上さんは香取さんと同じように何でもこなせる女の子だ。
見た目は金髪で不良の様だが、実際はとても優しい。
が友達に嫌がらせをするような輩にはとても厳しく、現に今も抱き着いてきた香取さんを受け入れ、優しく頭を撫でながらも、香取さんに注目を集めさせた女子に微笑みかけている、目は決して笑わずに。
彼女の笑みは「なに、私の彩芽に嫌がらせしてるの? 次はないよ」と言っているように見える。
微笑みかけられた女子もそう感じたのか、びくりと体を震わせ、後ずさりながら席へと戻っていった。
悪がいなくなると、今度はとてもやさしい笑顔で香取さんと抱き合っていた。
それにしても美少女二人が抱き合ってる姿はとても尊い、ずっと見ていられる。
と、僕の視線に気が付いたのか村上さんがこちらに振り向く。
僕はゆっくりと自然に視線を逸らす。
そうあくまでも自然にだ、これによって別にあなたたちを見た訳ではなく、ただ辺りを見回していただけですよというように振る舞える。
この技のお陰で何度も村上さんの目を騙してきた実績があるのだ。
僕はただ幸せそうな香取さんを陰でこっそり見ていたいだけなんだ。
そう、僕みたいな底辺が、香取さんを想うこと自体おこがましい。
僕はただ幸せそうな香取さんを見ているだけで十分だ。
香取さんを想う気持ちは決して外には出さないぞと心に決め、うつ伏せになり、時間を潰すことにした。
僕にもあれぐらいの年になれば好きな人が出来て、あんな風に付き合ったりするんだろうな。
そんなことを考えていた小さいころの僕に言ってやりたい。
現実はその飴玉のように甘くはなかったぞ、と。
学校での授業がすべて終了した今日、担任の先生がホームルームの時間に、先日行った中間テストの成績表を配っていた。
一人ひとりに出席番号順で名前を読んでいく。
出席番号最後の僕は手を組んで、祈るような姿勢で、名前を呼ばれるのを今か今かと待つ。
すでに成績表を配られたクラスメイト達は互いの点数を見せ合い、勝敗を競い合っている。
クラスに親しい友達もおらず、頭の悪い僕にとって、点数を競い合うなんて、縁のない話だ。
そして僕の一つ前の人が呼ばれ、僕の番が訪れる。
「次は山田」
来た。
「はい」
先生の前に行くと、先生は僕の成績を眺めて、眉を顰め、困った表情をする。
「山田、お前しっかり勉強してるのか?」
「……してるはずなんですけどね」
やはり言われると思っていたことを言われると少し心苦しい。
頬を掻く僕を見た担任の先生は、諦めたような溜息を吐き、全ての教科が平均点より少ない点数が記された成績表を渡してくれる。
「まあ、赤点ではないからこれ以上は何も言わないが、大学に進学する気なんだろ? このままじゃまともな大学に行けないぞ」
「はい……」
担任の言葉を嫌なほど痛感し、自分の席へと戻る。
成績表を見て、学年の順位を確認する。
順位は下から数えた方が早いほどの成績の悪さだ。
はぁと溜息を吐きながら、頬をつく。
全く、世の中とは不便なものだ。
どんなに努力をしても結果が大して変わらない者と、大して努力をしていないのにしっかり結果が出る者がいるこの世の中は理不尽だ。
得意不得意でその逆もあるわけなんだが、僕に至ってはその得意なものが一切ないので、いい結果がついた試しがない。
今回の中間テストも一週間前からしっかり勉強した筈だったが、結果は全教科赤点ギリギリと芳しくなかった。
僕は今までいろんなことに手を出し、いい結果を出そうとした。
サッカー、野球、水泳、柔道それはもう色々だ。
だが結果は、サッカーはリフティング五回が最高、野球はいつも空振り三振、水泳は25メートル泳ぎ切れない、柔道は年下の女子に背負い投げされるという始末。
ホントに今まで生きてきてうまくいったことは何一つもなかった。
また今回もダメだったと落胆していると、近くの席の周りが騒ぎ始めた。
「香取さん凄い! また学年トップだなんて」
「そ、そんなことないよ……」
謙遜する彼女の成績表を盗み見たのだろう女子が大きな声を上げる。
その声を聞いた周りのクラスメイト達は「どうやったら、そんなにいい点数を取れるの?」「さすが香取さん」など言いながら彼女の周りに集まっていく。
注目を浴びた彼女は集まってきたクラスメイト達に周りをソワソワと見ながら、困惑している。
彼女の名前は香取彩芽、才色兼備で誰に対しても分け隔てなく接してくれる女の子だ。
そのおかげで香取さんは男子から非常に人気があり、注目を浴びるのが苦手な香取さんにはばれないように密かに香取さんを見守る会が存在しているほどだ。
一方でその人気が気に入らない女子も少なからず存在し、今回は彼女のことを嫌う女子の嫌がらせだろう。
「え、えっと……」
人が集まり、どうすればいいのか分からない香取さんが困っていると一人の金髪の女の子が近づいてきた。
「はいはーい、皆、離れてねー。彩芽、凄く怯えてるでしょー。はい、かいさんかいさーん」
彼女は綺麗に切り揃えられた短髪を振り、手を叩き、香取さんの周り集まっていたクラスメイト達を追っ払っていく。
「澪、ありがとー。助かったよ!」
周りに人がいなくなり、強張っていた表情を和らげた香取さんは、助けくれた女の子に抱き着く。
「おー、よしよし。怖かったねー」
香取さんが抱き着いた彼女の名前は村上澪。
村上さんは香取さんと同じように何でもこなせる女の子だ。
見た目は金髪で不良の様だが、実際はとても優しい。
が友達に嫌がらせをするような輩にはとても厳しく、現に今も抱き着いてきた香取さんを受け入れ、優しく頭を撫でながらも、香取さんに注目を集めさせた女子に微笑みかけている、目は決して笑わずに。
彼女の笑みは「なに、私の彩芽に嫌がらせしてるの? 次はないよ」と言っているように見える。
微笑みかけられた女子もそう感じたのか、びくりと体を震わせ、後ずさりながら席へと戻っていった。
悪がいなくなると、今度はとてもやさしい笑顔で香取さんと抱き合っていた。
それにしても美少女二人が抱き合ってる姿はとても尊い、ずっと見ていられる。
と、僕の視線に気が付いたのか村上さんがこちらに振り向く。
僕はゆっくりと自然に視線を逸らす。
そうあくまでも自然にだ、これによって別にあなたたちを見た訳ではなく、ただ辺りを見回していただけですよというように振る舞える。
この技のお陰で何度も村上さんの目を騙してきた実績があるのだ。
僕はただ幸せそうな香取さんを陰でこっそり見ていたいだけなんだ。
そう、僕みたいな底辺が、香取さんを想うこと自体おこがましい。
僕はただ幸せそうな香取さんを見ているだけで十分だ。
香取さんを想う気持ちは決して外には出さないぞと心に決め、うつ伏せになり、時間を潰すことにした。
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