トロンボーン吹きの夏物語

樫和 蓮

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物語へのいざない

誘われるままに

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今は六月。
とはいっても、午後六時半を過ぎると暗くなってくる。
しかも街灯がやたら少ない。
歩いているとちょっとだけ心細い。

それにしても……さっきの豆つぶはなんだったんだろう。
ていうか龍の谷なんてわたし知らないし。
明日は土曜で部活もないから、行けるには行けるんだけど……。
ってわたし行くの?行っちゃうの?
どこかもわかんないのに?
……でも、さっきから妙にわくわく感あるんだよね。
よし、行っちゃおう!!どこかわかんないけど!!

「ただいまー。」
行くとは決心したものの、場所の特定ができなかったからちょっと声のトーン低めなわたし。
「おかえり、夏。遅かったじゃん。」
こう言ったのはお姉ちゃんの朝。
言い忘れてたけど、わたしは吹奏楽部でトロンボーンを吹いてる。中2。
お姉ちゃんは同じ吹部でパーカッションパート。中3。
「わたしのほうがバス遅かったのになんで夏のほうが遅く帰ってくるわけ?」
お姉ちゃんが聞いてくる。
「途中で降りて友だちと喋ってた。」
もちろん嘘。
"豆つぶに話しかけられて降りちゃいました"とか言えるわけがない。
「へえ。夏にしては珍しいじゃん。だって金曜は……。」
「あーーー!!」
お姉ちゃんを遮ってリビングに直行。
見たい番組あるの忘れてた。
時計を見たら19時15分。
15分見逃した……。
っていうかわたし歩くの遅すぎ!

「ねえお姉ちゃん。」
「ん?」
「龍の谷って言ったら、どこのことだと思う?」
ご飯を食べた後、わたしはお姉ちゃんに聞いてみた。
「りゅうのたに?なんじゃそれ」
お姉ちゃん、"なんじゃ"とか言うのやめてよね……。
「あっ聞いたことあるわ。」
「え、ほんと?」
わたしは身を乗り出す。
「うん。小学校の裏に千草山ってあるでしょ?
その山を越えたとこにあるのが、龍の谷。」
お姉ちゃんが事も無げに言う。
え、でも……
「そこって千草谷じゃないの?」
千草山も千草谷も、慣れ親しんだ場所だ。
「そうだけど、別名は確か龍の谷だったと思うよ?」
「まじ?」
「さっちーが言ってたからほんとだよ。」
「ふーん。」
思いもよらず身近にある場所みたいだ。
それならそんなに苦労せずに行けるな……。
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