トロンボーン吹きの夏物語

樫和 蓮

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物語の危機

綻び、もつれ、絡まり

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「リュウが危ないってどういうこと?」
わたしは、鼓動が早くなりながら尋ねる。
「うん、どう説明したらいいかわからないんだけど……」
甲斐田くんは視線を動かしながら、ゆっくり話してくれた。

わたしが竜の谷に来ないことを、リュウが寂しがっていること。
その寂しさが徐々に膨らんでいること。
おそらく寂しさが原因で、2週間くらいから体調まで悪くなっていること。

「土田さんが部活で忙しいのはわかってるし、リュウの不調がそれだけかはわからないんだけど……」
ためらいながら甲斐田くんは続ける。
「一度、竜の谷に来てくれないかな。土田さんの姿を見るだけでもリュウは少し元気になるかもしれない。」
「そんな、リュウ……すごく心配。」
「ほんとに、少しだけでいいんだ。」
甲斐田くんの真剣な目に、わたしは揺らぐ。
でも、竜の谷に行くのに夕方は適していない。いくら夏で日が長いとはいえ、街灯一つない谷に行くのは気が進まない。

心配な気持ちと、行ける時間を見つけられないもどかしさで、またドキドキが加速する。

コンクールまで、毎日部活は夕方まである。授業のある日は下校時間ぎりぎりまで練習するのが常だし、短縮授業になって終わりが早くなっても、自主練で遅くなることが多い。

でも、部活は休めない。3年生は最後のコンクール。先輩たちと臨む最後のコンクールの練習は、簡単に休めない。
一日休むと三日戻るとも言われる楽器の練習。この時期に休むだなんて。

でも……本当にいいんだろうか。リュウを見舞わず、練習に明け暮れることが本当にわたしのすべきことなんだろうか……。

わたしの葛藤が伝わったのか、甲斐田くんは少しうつむいた。
「やっぱり、部活、大事だよね。」
甲斐田くんの掠れた声を聞いて、わたしは泣きたくなった。
「ごめん……今はやっぱり、行けそうにない……」
言ってしまった。
言いながらもまだ迷っている。

「ううん、無理なお願いをしてごめんね、また、来れるようになったらよろしくね。」
甲斐田くんは力なく背を向け、教室に戻っていった。
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