トロンボーン吹きの夏物語

樫和 蓮

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物語の危機

絡まりをほどくには

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部活中、個人練をしていても合奏をしていても、甲斐田くんの落ち込んだ顔がどうしても気になってしまった。
もちろんリュウが心配だし、きっとクロとシロも落ち着かず、不安でいっぱいになっているはず。
わたしに何ができるかはわからない。でも、そばにいることくらいなら、わたしにだってできる。
そばにいることさえ、部活に参加していたらできない。

「ちょっとなっちゃん、集中して?」
あまりに上の空だったのだろう。それがわからないくらいには上の空だった。
いつも温和なゆり先輩に諭されてしまった。
「すみません!!」
だめだ、今は部活に集中しよう。
コンクールまであと少し。わたしの上の空で先輩たちの足を引っ張るわけにはいかない。
わたしは深呼吸して楽器を構えなおした。

「なっちゃんどうしたの?いつもと違うじゃん」
部活終わり、同学年のはるるんが声をかけてくれた。
「ちょっと、心配なことがあって…。でもそれで集中できないとか最悪だよね」
スライドのお手入れがいつもよりも億劫だ。
「その心配事、解決しちゃう、っていうのは無理なの?」
「え?」
「もしすぐ解決できるならさ、部活ちょっと抜けてでも解決しちゃったほうがよくない?」
はるるんの言う通りだ。何も頑なに遠ざかる必要はないのかもしれない。

「はるるんの言う通りだよ」
わたしの心の声とシンクロした。
「ゆり先輩!さっきはすみません」
「なっちゃんがいつもがんばってるの、わたしたちが知らないわけないじゃん。もちろん部活優先だけどさ、部活で何かが犠牲になってなっちゃんがしんどくなるのは違うと思うんだ。そりゃ、コンクール前でわたしらも焦ったりするけどさ」
ゆり先輩は優しく笑った。
「わたしもさっきはきつめに言っちゃったかも、ごめんね。気にせずになっちゃんの心配事と一回向き合ってみて」

わたしは思わず流れそうになった涙をこらえながら、うなずいた。
「すみません、明日は、部活お休みして向き合ってみます」
「うん、行っておいで。わたしが聞ける内容だったら何でも聞くから!」
力強いゆり先輩の言葉と、はるるんに背中を押された。

部活を大事にすることと、無理に出席することはつながらないかもしれない。
土曜の部活を休むだなんて、何より自分が許せないと思ったけれど、上の空で練習するほうが失礼だ。
明日、甲斐田くんに話そう。リュウのもとに行こう。
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