12 / 17
物語の危機
ほどいて、また結んで
しおりを挟む
土曜日の朝、同じ吹奏楽部に所属するお姉ちゃんに怪しまれながら、わたしは竜の谷に向かった。
意気込んで向かうはいいものの、甲斐田くんにどんな顔で会えばいいかわからない。
リュウの容態はそんなに悪いんだろうか、それもわからない。
決意がしぼんでしまうくらい、歩みが遅くなってしまうくらい、わたしは緊張していた。
でも、前を向かなくちゃ。
いつもの倍くらいの時間がかかったような気がする。
わたしはやっと竜の谷の入り口に立った。
「夏さん!?夏さんだ!」
「夏さんが来た!」
「ねえねえリュウ!夏さんだよ!」
「リュウ!夏さんだよ!」
着くやいなや、クロシロの歓迎を受けた。
後ろに、横たわったリュウと、リュウに寄り添う甲斐田くんの姿が見えた。
「ひ、久しぶり!ごめんなさい、なかなか来れなくて…」
恐る恐る、わたしは彼らに声をかけた。
「土田さん!来てくれたんだね…!」
甲斐田くんは立ち上がって手招きした。
「この間は、ごめん、忙しいのわかってたのに…。でも、来てくれて嬉しい。ほら、リュウ」
わたしは二人のほうに近づいていった。
「夏さん、ありがとう。来てくれて、嬉しいよ」
リュウはやっとのことのように頭を起こした。
普段から座っていることが多かったけど、明らかに前までよりしんどそうだ。
「ごめんね、リュウ、なかなか来れなくて……」
わたしは泣きそうになるのをこらえながらリュウの肩をそっとなでた。
「えっ何!?」
リュウに触れるのは初めてではなかったのに、今までとは違う感覚が走った。
リュウの肌が光ったような、わたしの身体に電気が通ったような、そんな気がした。
「甲斐田くん、リュウの肌が………」
慌てふためくわたしに、甲斐田くんはなぜか安心したように微笑んだ。
「それ、土田さんの力なんだよ」
意気込んで向かうはいいものの、甲斐田くんにどんな顔で会えばいいかわからない。
リュウの容態はそんなに悪いんだろうか、それもわからない。
決意がしぼんでしまうくらい、歩みが遅くなってしまうくらい、わたしは緊張していた。
でも、前を向かなくちゃ。
いつもの倍くらいの時間がかかったような気がする。
わたしはやっと竜の谷の入り口に立った。
「夏さん!?夏さんだ!」
「夏さんが来た!」
「ねえねえリュウ!夏さんだよ!」
「リュウ!夏さんだよ!」
着くやいなや、クロシロの歓迎を受けた。
後ろに、横たわったリュウと、リュウに寄り添う甲斐田くんの姿が見えた。
「ひ、久しぶり!ごめんなさい、なかなか来れなくて…」
恐る恐る、わたしは彼らに声をかけた。
「土田さん!来てくれたんだね…!」
甲斐田くんは立ち上がって手招きした。
「この間は、ごめん、忙しいのわかってたのに…。でも、来てくれて嬉しい。ほら、リュウ」
わたしは二人のほうに近づいていった。
「夏さん、ありがとう。来てくれて、嬉しいよ」
リュウはやっとのことのように頭を起こした。
普段から座っていることが多かったけど、明らかに前までよりしんどそうだ。
「ごめんね、リュウ、なかなか来れなくて……」
わたしは泣きそうになるのをこらえながらリュウの肩をそっとなでた。
「えっ何!?」
リュウに触れるのは初めてではなかったのに、今までとは違う感覚が走った。
リュウの肌が光ったような、わたしの身体に電気が通ったような、そんな気がした。
「甲斐田くん、リュウの肌が………」
慌てふためくわたしに、甲斐田くんはなぜか安心したように微笑んだ。
「それ、土田さんの力なんだよ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる