トロンボーン吹きの夏物語

樫和 蓮

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夏の物語

夏の力

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「わたしの力ってどういうこと……?」
安心した顔を見せる甲斐田くんを、怪訝な目で見つめるしかできない。
はしゃいでいたクロシロも、どことなく安堵した様子だった。

「突然こんなことを言ってごめんね、夏さんには、僕ととても相性のいい力があるんだ」
リュウは少し楽になったようで、いつものほがらかな表情が戻ってきた。
「龍平と話してくれる友人として来てくれたよね、初めて会ったとき、僕たち谷の住人と、夏さんに同じ波長があるなって気づいたんだ」
リュウの説明を聞いていても、いまいち要領を得ない。
「土田さん、全然わからないって顔をしてるね」
甲斐田くんもほっとしたのか、前みたいに笑ってくれる。
わたしは状況がつかめず、自分でもわかるくらい、怪訝な顔をしている。
「そりゃ……みんな納得した顔なのはなんでなの!?ちっともわからないんだけど……」
「僕も正直信じてなかったんだけどさ、リュウたちは、相性のいい人からだと、力をもらえるみたいなんだ。普段はそれがなくても、普通に、健康に生きていけるんだけど、どうも体調を崩すとだめらしい」
甲斐田くんがやんわりと説明を始める。

「リュウはとんでもない夏風邪をひいたんだよね!」
「まったくもう、心配しちゃうなあ!」
クロとシロも元気になってきて、飛び回りながら小言を言い始めた。
「ごめんごめん、夏さんが持ってる力のおかげもあって、夏さんと龍平と過ごす時間はとっても健康によかったみたいなんだ」

雰囲気はどんどんよくなっているけど、わたしはいまいちわからないままだ。

「えっと‥…その力って、初めて会ったときからわかってたの?リュウの力になるために、呼ばれてたの?」
竜の谷が楽しくなかったわけではない。なんだか嫌な言い方になってしまっただろうか。なんとなく、ただ友だちとして仲良くしていたと思ったのに、利用されている、とまで言いたいわけじゃないし、リュウが元気になってくれてもちろん嬉しい。

だけど、わたしの胸はなんだかもやもやしていた。
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