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第一章 異世界にて・・・

第五幕 出会いそして・・・

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side桂馬
湖に投げ飛ばされた俺は、残りのボロ布すら身体に残されてなかった。
「ぷはぁっ!」
水面から顔を出して、周りを見渡すと赤い顔で俺を睨む二人を見つけてそちらに近づこうとすると、
「来ないで!!」
ロングの娘がえらい勢いで口撃して来た。
隣のポニーテールの娘はいつの間にか顔を青ざめさせて怯えるようにこちらを見ていた。
「別にいいけど、こちらの要求はとりあえず一つ衣服を要求する!」
すると、何やら弁解するかのようにロングの娘が言って来た。
「その、服をぶっ飛ばしたのは悪かったけどそっちだって私達の裸を見たのだから何か一言言ってくれたって」
いいじゃない、と彼女は言った。
最初からモゴモゴしながらしゃべっていてどんどん尻すぼみになっていく彼女を見て俺は苦笑しながら、謝罪した。
「悪かったよ、見てはいけないと少しは思ったんだけど二人ともすごく綺麗で可愛いかったからどうしても目を反らせなかったんだ。」
そう言ったら二人とも顔を赤くしてポニーテールの娘が急に、
「そ、そんな事言われても騙されませんからね!す、隙あらば押し倒してわ、私達の事を手込めにするつもりなのでしょう!」
お~、なかなか動揺してるな~(苦笑)
なんて思ってしまったのがついつい顔に出てしまい、二人に「何、笑ってんですか!?」とプリプリ怒られてしまった。
「今のままだと俺はこの格好、というか全裸のままそっちに近づくか君たちの集落を探す事になるけどそれでも、」
いいのか?そう聞こうとしたら、
「お父様に話をして大急ぎで服を持ってきますからそれまでどうかここで待っていて下さい!」
と彼女は急に慌てて走り出した。
「レミィ様!?」
ポニーテールの娘も慌てて走りだそうとするが
「マールはそいつがそこから動かないか見張ってて!」
「えぇ~~~!?」
そんな役目を押し付けられたのがそんなにショックだったのだろうか?すごい泣きそうな顔をした。
「お父様に話をしてすぐに戻って来るからお願いね!じゃあ、行って来るね!」
そう言い残して彼女は龍に変化して、空に飛び立った。
ポニーテールの娘は呆然と手を伸ばして、彼女が見えなくなるとガックリと項垂れた。
「あう~~~」
よくわからない呻き声を出しながら落ち込んでいる。
少し、いやかなりいたたまれなくなり声をかける。
「ここからその集落までどれくらい時間がかかるんだ?」
ビクッとしてからゆっくりとこちらを見て、緊張した面持ちで俺の問いに応える。
「歩けば戻るだけで一時間はかかりますが、龍になって飛べば行きに10分、こっちに戻って来るのに10分、叔父様の説得に30分から40分って所だと思いますよ!」
すごく嫌そうにトゲトゲしながら俺の質問に丁寧に説明してくれた。
「そうか、ありがとう。」
礼を言われるとは思ってもいなかったのか、すごい驚いた顔をしながら俺の方を見て、ふと我にかえって反対を向いてボソボソと、
「べ、別に大した事じゃないし」
と言いながら耳を赤くしていた。
「なぁ、俺は新道 桂馬って言うんだけど君の名前は?」
俺がそう切り出して自己紹介すると彼女は非常に緊張した面持ちで、
「私はマールディア、マールって呼んで」
マールの顔がすごい赤い、大丈夫だろうか?
そんな事を考えながら俺も、
「俺の方もケーマでいいよ、よろしくマール」
「うん!」
自己紹介をすると少し慣れたのか、マールの方から質問してきた。
「あなたは、ケーマは人間なの?」
俺はなんと言っていいかわからないから正直に応える。
「一応人間だったけど、神様のせいで人間。」
「えっ?」
マールは俺が言った事がよくわからないようだ。
だから俺はステータスを直接見ればいいんじゃないかと思ってマールに質問する。
「このステータスって自分以外の人も見れるの?」
それを聞いてマールは、急にモジモジしながら上目遣いで俺を見ながら恥ずかしそうに応える。
「ステータスオープンって言えば見れるようになるけど、けどその、それを見る為には私が隣に行くとかしないといけないし」
やっぱり今の俺の格好が問題らしい(当然である!)
このままでは埒があかないので、手持ちの皮でパンツでも作る事にする。
湖から上がる為にマールから距離をとった所の岸に向けて歩き出す。
「どこに行くの?」
少し慌てたように俺に聞く、このままだとまた全部見てパニックになるので俺は素直に説明する。
「パンツだけでもスキル使って作ってしまおうかなって思ったから岸に上がろうかと」
俺の答えを聞いてマールは、
「パンツってそんな簡単に・・・て言うかスキルでパンツは作れるの?湖から上がったらまた!」
顔を赤くしてぶつぶつと動揺を落ち着けようと考えを整理しようとするマール
「見たいなら見てもいいけど、今度は投げ飛ばしたり、ぶっ飛ばしたりするのは無しだからな?」
俺は確認するようにマールに言うと、彼女は赤い顔で唇を尖らせながら
「わかってますよう!」
少しだけむくれながら可愛く言った、そして気を取り直して俺がやろうとしてる事にのか聞いてきた。
「もう少し近くで見ててもいいですか?」
「いいよ、別に隠すもんでもないし」
「いや、もう少しその気遣ってくれた方が・・・いえ、何でもないです。」
何やら葛藤しているようだが、俺はストックしてある鹿の皮をいくつか取り出す。
そしてパンツの形を決めてスキルを発動させて魔力を注ぐ。
「ふえ~」
初めて見るものに興味津々といった感じで錬成術に見いっているマール。
「おし、出来た!」
術を行使して簡単にパンツを作って履く。
ちなみにパンツの形はボクサーブリーフを採用した。
ボクサーを選んだ理由はトランクスとかだと素材が合わないからだし普通のブリーフは俺個人が好きじゃないからだ、だからこの形にした。
俺がパンツを履くと、マールが警戒しながら近づいて来る。
何か警戒心も強いが好奇心も強い猫か犬のようだ(苦笑)
そうして俺の隣にたどり着いた彼女は、俺の身体を見ながら首をかしげる。
「どうすれば、この身体にあの瞬発力やパワーが宿るのでしょうか?」
やはり先程の戦いは大変不本意だったようだ。
「ステータスは見るか?」
その事を忘れてそうな彼女に俺は問いかける。
「は、はい!お願いします!」
顔を赤らめて返事を返す彼女に俺は頷いてステータスを出す。
するとそれを目の当たりにした彼女は呆然としながら見いってぶつぶつと呟いている。
「生命力はおろか、精神力に身体能力、魔力に操作系に運までよくわからない事になってるし、スキルはもうこれは私には理解できない、というかしたくない!何ですか頭にイメージしたスキルが形になるスキルって!?これはズルイです。」
そう言いながら、身体能力の細かいステータスもチェックする
「身体能力の細かい項目も全部、測定不能ってどんだけですか!?しかもこの魅力の項目の説明・・・何ですか!?全てを魅了する魔性の漢って!」
何か俺が把握していない単語が飛び出して来たぞ!
俺はすぐさまその項目をチェックする。

[(魅力)種族を越えて全てを魅了する魔性のおとこ]
種族の垣根を越えて、そこにいるだけで魅了してしまうだけの魅力を持ってしまったあなたにこの言葉を贈ります。

俺は、目をこすり、空を見て、ステータスをまた見るを3回繰り返してマールに言った。
「気にしたら負けだから気にしないで(ヒラヒラ)」
大丈夫、気にしてなんかいないさ(空元気)
「あの、大丈夫ですか?」
心配そうに俺を見上げて来る彼女にドキッとしながら無意識に手を出してしまい、頭を優しく撫でながら返事を返す。
「うん、平気だよありがとう、心配してくれて」
「んっ」
俺はマールの頭を撫でてしまった事に気づき謝る。
「ごめん、会ったばかりの娘にやる事じゃないよね」
と彼女を見ると
「別にもっと撫でてくれてもいいですよ?」
俺の隣にぴったりくっつきながらそう答える。
「あまりそういう事を言うと、勘違いするよ?」
まだ会ったばかりなのに、そう俺が注意しようとすると彼女はすごい事を言い出した。
「龍人族の女は強い男が好みなのです。そして私は前々から自分よりも強い人に全てを捧げるつもりでしたから、勘違いではないですから好きにしてくれていいですよ?」
只でさえ美人でスタイルまでいい彼女にこのような事を言われてぐらつかない男は存在するのだろうか?
少し前まで普通の一般男性だった俺には、理性に深刻過ぎるくらい深刻なダメージを負っていた。
「とりあえずあの石にでも腰をかけながら話さないか?」
俺は虫の息の理性をどうにか使って彼女の手を引くと彼女も嬉しそうに
石の上に座っても彼女はぴったりとに座る。
そして恥ずかしそうにしながらも俺の左手を彼女の右手の方まで持っていく。
そして、気づいたようにこう告げる。
「こんな風に傍にいたり触れたりするのは、ケーマが初めてですからね!」
恥ずかしそうにそう答える彼女に俺の理性は死に絶えた!
「んっ!!」
理性が飛んだ俺はマールの身体を抱きしめながら唇を奪った。
マールはマールで熱に浮かされたような潤んだ瞳で俺を見つめ、
俺はマールの全身を手で撫でながらキスをしながら彼女の名を耳元で呼ぶ
「マール」
彼女はビクッと身体を反応させながら俺にこう告げる。
「ケーマ、今日はこのままあなたと二人でいたい!」
俺はマールの言葉に頷いて、誰にも見られないように結界を張った。
「これで二人っきりだな」
マールを抱きしめながらキスをして、ありったけの毛皮を出して、俺たちはそこで一晩明かした。
その時の事は俺の一生の思い出であった事だけは伝えておく。

sideレミィ
マールを置いて集落に戻るまでにかかった時間は、おおよそ10分くらいでお父様の説明にどれくらい時間がかかるかが問題だった。
屋敷まであまり目立たないように急ぐと横から声をかけられた。
「よぉレミィ何を急いでるんだ?」
正直に言って集落で一番嫌いなやつに声をかけられた。
「ザッス、仮に私が急いでいてそれをあなたに言う必要があるの?」
焦りを表に出さないように努力はしたが、やっぱりダメだ!
「何だよつれねぇなぁ、俺は同じ集落の仲間じゃねぇのかよ?」
傍に、いや視界にはいってるだけでイラつく!こいつキライ!
「同じ集落の出身である事は三億歩譲って認めてあげてもいいわ、でもねあなたの性格と戦い方は私が認める事は絶対にないわ!」
こいつは絶対に弱いやつを狙うそれも子供や病気のやつなんかを徹底的に狙ってトラウマを刻む。
それのせいで子供たちの中には狩りに出る事はおろか戦いの稽古や只の遊びといった時にパニックを起こす時がある、それも龍化をコントロールできないくらいに、だ。
可愛い弟分や妹分にふざけた事をするこいつを好きになれる訳がない!
「あまり長々と話してる暇はないの、用がないのならどっか行ってくれない?」
ザッスは私の言葉を聞いて、面白そうに
「いいのかよ?またおチビちゃん達が危ない目に会うかもなぁ~?」
それを聞いた瞬間私は、こいつを殴る為に全力で踏み込み、拳を繰り出した瞬間に止められた。
「ケンカよくない」
オーガのような顔をした男が私の一撃をあっさり止めた。
「ガルム!邪魔をするな!」
私はオーガのような顔をした男に吠える。
「落ち着け、さっきのハナシ、オレ聞いてた、だからオレがこいつを見張る!」
鼻からブシ~と息を吐き出し、更に彼の言い分は続く。
「レミィ様がこいつ倒す、こいつまた子供イジメる、レミィ様がこいつ殺す、族長が悲しむ、だからオレがこいつをボコボコにする!」
何気に彼、今の話を聞いて怒ってるようだ。
ガルムの体から湯気のように闘気が揺らめくと、ザッスは青い顔をしてしゃべりだす。
「お、おいおい前のあれは事故であって別にわざとじゃねぇよ」
ザッスの言い訳を聞いてガルムは更に闘気を高めながら言う。
「オレあのトキ見ていた!オレあのトキわかった!オレあのトキ感じた!オマエが子供たちをイジメるつもりだったのを!だからコンド、オレお前イジメる!」
凄まじい怒りだった、そして、
「ブゥルァァァァァァ!!!!」
彼の一撃が炸裂した。
「ギャベバァッ!!」
ザッスの体は宙を飛び、そしてガルムが更に追撃を極める。
オーガ・ダンス鬼人舞踏!!」
空中でステップを踏む高等技術を連続で極めながらザッスに打撃を加える。
「さすが、この集落で2番目に強い男ね!ありがとう、ガルム!」
私は彼にお礼と賛辞を送り、かなり時間を消費してしまったが当初の目的を話す為にお父様の所へ急ぐ。

家に着くなり、私玄関の扉を力一杯に開ける!
「お父様!!いらっしゃいますか!?」
すると奥から、
「何じゃ?騒々しい!」
口調の割には若い、ナイスミドルが出てきた。
このナイスミドルがこの集落の族長 ヴォルグ、私の父親でこの集落で一番強い人だ。
私は急いで事情を説明しようとしたら、マールから思念魔法で通信が来て、ガックリと項垂れた。
「どうした?何かあったんじゃないのか?」
「その、色々あってどこから説明したものか・・・」
「ふむ」
顎に手で撫でながらお父様は私にマールの事を聞いてきた。
「マールは、いっしょではなかったのか?」
今は亡きヴェイル叔父様とお母様の親友だったマリー叔母様の忘れ形見であるマールの事をお父様はいつも心配しているが・・・
「(今回はこれがすごい面倒な事に、下手に説明をするとお父様が湖に行って、マールの邪魔をするのは確実!そしてマールが笑顔で稽古に誘って来るに決まっているわ(3割増で)!!しかも彼は強くて優しくておまけに集落の男連中とは気の使い方から何から何まで全部違う!マールの理想の男性と言ってもいい!そんな人と少しでもいっしょにいたらマールが攻めない訳がない!断言できる!)」
「レミィ?どうしたレミィ?」
かなり長々と葛藤した結果、とりあえず私はお父様にいきなり飛び出さない事を約束させて1から順に説明する事にしたらかなり時間がかかってしまった為に日が出るくらいの時間にお父様と二人でひとまず会わせる事にした。

sideケーマ
翌朝になってようやく(タイミングよく?)集落の族長を連れて来たようだ。
俺は結界をといて二人の前に現れると、パンツ一丁の俺に驚いた顔をした。
「わかってはいるけど改めてそういう顔をされれば傷つくな。」
そんな風に落ち込んでいると、
「ちゃんと二人が着替えを持って来てくれましたから今は我慢して、ね?」
マールがそっと俺に寄り添い、励ます。
二人は俺たちがこうなったのを知っていたのか、何も言わずとりあえず服を渡してきた。
「おおよその事情は、レミィから聞いておるからとりあえず服を着てからにしよう」
そう言って俺に服を渡す。
素材が何かわからないが、マールが着ている胴着の男版って感じのデザインでマールが感激したように族長の方を見る。
「どうした?」
マールのテンションの上がり具合を疑問に思った俺はマールに聞いてみた。
「それ私のお父様の胴着なんです!」
すごい嬉しそうな笑顔で教えてくれた。
それに俺は、
「いいのか?」
「はい!」
笑顔で返された俺は大事にしないとな、改めて自分が着ている胴着を見る。
白と黒の色合いがシブイ一品だ、しかも俺が作った衣服よりも頑丈だし今度はそう簡単には脱げないだろう(脱いだつもりはないよ!)。
それから、簡単な自己紹介が始まった。
「ワシはヴォルク、この先の集落で族長をしておる。」
族長さんが自己紹介をしたので俺もそれに続く。
「俺は新道 桂馬です。ケーマで大丈夫ですのでそう呼んでいただければ、とりあえず俺が異世界から来たと信じてもらっている感じですか?」
「うむ、そうなるな」
とりあえず話が早くて助かるな、後は俺としては神関係の情報が欲しいな。
などと考えていると、
「だが、ワシよりも強いというのは少々信じられぬな」
手合わせはしてもいいが、折角の胴着がボロボロになるのは避けたい。
「やるのは構わないですが、この胴着がボロボロになるのは嫌なので、他に自前の胴着を作ってからでも良ければ、お相手させていただきます。」
「そうか、では一旦集落に向かうとしよう」
そこでマールが気づいたのか、俺に質問した。
「ケーマは空を飛べるのですか?」
「まぁ、どうにかなると思うぞ」
そう言いながら風と重力を操って俺は身を浮かせて空を舞う。
一通り試した所で降りて大丈夫だと伝える。
すると族長が、
「では、行くとしようか」
族長とレミィは龍になって空に向かって飛んだのに対してマールは、俺に抱きつき
「ケーマと一緒がいいです!」
そう言った彼女をお姫様抱っこして、俺はどこかのZ戦士のように空を飛んで二人の後を追って集落に向かった。
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