ドラゴンすら肥える異世界農園〜最弱スキルで世界の胃袋を掴みました〜

ライカタイガ

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【第4話】はじめての依頼と、畑に潜むもの

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 リリィとの会話から数日が経った。俺のスキル“微成長”は、村の中でも徐々に注目を集めはじめていた。

 成長のスピードは遅いものの、確実に効果があるということで、今では畑に出るたびに誰かしらが

「ちょっとこっちも頼めるか?」と声をかけてくる。

体力の消耗が激しいので一度に何十株もというわけにはいかないが、
それでも日々の実感として「役に立っている」感覚は俺の心を穏やかにした。

 そんなある日、村の広場でリリィが慌てた様子で駆け寄ってきた。

「タケルさん、大変です! 北の畑が、何者かに荒らされてるみたいで!」

「荒らされてるって、獣か?」

「それが……普通の動物じゃないっていう人もいて……」

 さっそく現場に行ってみると、確かに畑の一角が踏み荒らされ、作物が無残な姿にされていた。
足跡のようなものもあるが、明らかに獣のものではない。

 爪跡のような線、引きずったような痕。そして何より
 作物の中に、不自然に黒ずんだ、枯れた一角があった。

「……これは、腐敗……? いや、違うな。枯れてるっていうより、吸い取られたような……」

 その場にいた村人の一人が、恐る恐る口を開いた。

「昔な……この辺りに“土喰い虫”って魔物が出たことがあってよ。
地中に潜って作物の栄養を吸い取るやつだ」
 土喰い虫。見た目は巨大なミミズのような魔物で、農地にとっては最悪の害獣らしい。

 その夜、リリィの提案で俺が罠を仕掛けることになった。
俺は村の倉庫にある種から、特に匂いの強い種類のハーブを選んだ。

それを畑の中心に集めて植え、俺の“微成長”スキルでじっくりと育てる。
香りが強く、土壌の中にも浸透しやすくなるよう、時間をかけて光を送った。

「これ、ちゃんと来るかな……」

「大丈夫です。タケルさんの“微成長”には、植物を“生きたまま魅力的に”する力があるみたいなんです。土喰い虫なら、間違いなく気づきますよ」

 自信満々なリリィに押されて、俺も罠の仕上げに取りかかった。
村の防衛隊と協力して地面を掘り、仕掛ける場所に強化ロープ付きの捕獲網を埋めた。
その網は特殊な鉱繊維でできていて、地面が動いた瞬間に自動で締まる仕組みになっているらしい。
俺の役目は、餌となるハーブを魅力的に育てること。そして、見張ることだった。


.
.
.

 そして深夜。月明かりの下、俺たちは離れた納屋の屋根から畑を見張っていた。

 すると……地面が、揺れた。微かに波打つような動きが、畑の奥からこちらへと近づいてくる。

「来た……!」

 畑の一角がボコリと盛り上がり、土がパカリと割れる。

そして、現れたのは想像以上に巨大な……ミミズ。


 とはいえ、紫色のヌメッとした体は見るからに不気味だが、どこか愛嬌すら感じる丸い目をしていた。
「こ、これが……土喰い虫……」

 体をくねらせながら、奴はハーブに近づいていく。
そして、頭部を突き出してその香りを嗅ぎ、
わずかに震えたかと思うと勢いよくかぶりついた。

 その瞬間、地面の仕掛けが反応した。
音もなく動き出した網が、的確なタイミングで巻き上がり、土喰い虫の胴体を絡め取る。
バチンという音と共に、地面の罠が完全に閉じられた。

「成功……した!?」

 翌朝、村中がこの出来事で騒然となった。
まさか本当に魔物が出るとは誰も思っていなかったらしく、
 村の長老まで出てきて俺に深々と頭を下げた。

「タケル殿……あんたは、救世主じゃ」

 なんて言われるとは思ってなかったけど、悪い気はしない。
 こうして、異世界農園生活を始めて数日。俺は“最弱スキル”で、村を救ったのだった。
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