ドラゴンすら肥える異世界農園〜最弱スキルで世界の胃袋を掴みました〜

ライカタイガ

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【第5話】ドラゴンは野菜がお好き?

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 土喰い虫の一件から数日が経った。
 村では“魔物を退治した男”として俺の名前がすっかり知れ渡り、
どこを歩いても「タケルさん」と声をかけられるようになった。正直、ちょっと照れくさい。

 畑仕事も相変わらず忙しい。毎日“微成長”をちょこちょこ使っては、地味に疲れて、村の木陰で昼寝する
そんな日々が心地よく感じていた。

 そんなある日のこと。
「タケルさん、畑の南側が少し荒れてるって村の子供たちが……」
 リリィに呼ばれて向かった先には、確かに畝が崩れている一角があった。
そしてそこには、信じられない光景が広がっていた。

「……ドラゴン?」

 畑のど真ん中に、ちんまりと座り込んでいる小さなドラゴン。
体長はせいぜい1メートルほど。橙色の鱗が陽の光を浴びてきらきらと輝いている。

 その小さなドラゴンは、俺が昨日育てたニンジンを美味しそうにバリバリと食べていた。

「こらこらこら! それ俺が育てたやつだって!」

思わず駆け寄って叫ぶと、ドラゴンはビクッと肩を震わせた。
だが逃げる様子もなく、丸い目で俺をじっと見つめたあと、にんじんを半分かじった状態で差し出してきた。

「……分けてくれるの?」

 俺は苦笑しながら、差し出されたニンジンを受け取り、一口かじった。

「……うまっ!?」
 甘くて、歯ごたえもよく、野菜の旨味がぎゅっと詰まっていた。
今までのどのニンジンよりもうまい。
 ドラゴンが尻尾をぱたぱた振っている。どうやら敵意はまったくなさそうだ。

「タケルさん……これ、まさか“微成長”で育てた野菜が、美味しすぎて寄ってきたとか?」
 リリィが苦笑交じりに呟いた。

「そんな……まさか……いや、でも……」

 畑にあった他の作物も、一部はかじられていた。だが全部ではない。
明らかに“俺がスキルを使ったもの”だけが食べられている。
 俺の“微成長”スキル、どうやら味や香りの質まで上げていたらしい。
.
.
.

 その夜。
 ドラゴンは追い払っても帰ってくるので、仕方なく納屋の隅に藁を積んで寝床を用意してやった。

「名前、どうしようかな……」
 俺は小さな体を丸めて眠るドラゴンを見ながら、ぼそっと呟いた。

「そうね……“モフ”なんてどうかしら」
 横でリリィが楽しそうに笑う。俺もそれを聞いて思わず頷いた。

「モフか……まあ、悪くないかもな」
 こうして、異世界農園生活に新たな仲間──モフが加わった。

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