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08 伝えられない気持ち
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ティルマン様の不貞を知ってからも、公爵家へは定期的に通い続けている。
お父様から頼まれたからだ。
「いつもと違う行動をすると警戒されて、ティルマン殿の素行捜査がやりにくくなるかもしれない。不快だろうが、これまで通り公爵家での教育を受け続けて欲しい」
「分かりました」
「辛いことを頼んですまないね」
「気にしないで下さい。わたしは大丈夫ですから」
「クリステル……」
申し訳なさそうな顔をする父様に、罪悪感を覚えてしまう。
それは、わたしがティルマン様のことをどうとも思っていないからだ。浮気されても傷ついたりしないし、むしろ気持ちが楽になって喜んでいるくらいだ。
わたしもずっと心の中では浮気していた。
わたしの想いは、いつだってお義兄様だけに向かっている。
だからティルマン様の浮気を知った時、わたしだけが不誠実だったわけではなかったと知って、心がとても軽くなった。
ティルマン様だって好き勝手しているのだし、わたしも好きにさせてもらおう。今後もお義兄様だけを想い続けるけど、文句を言われる筋合いはないと開き直ったくらいだ。
それなのに、お義兄様と同じくお父様も「クリステルはティルマン殿を愛していて、結婚して幸せになる日を夢見ていた」と勘違いしてたらしい。しかもそれは今現在も継続中で、わたしを見るたびに痛ましいものを見る目をして悲しそうにする。
まあ確かに、わたしはこれまでティルマン様との婚約に不満を漏らしたことは一度もない。だから二人が勘違いするのも納得できる。
でも、不満を言わなかった本当の理由は、結婚相手は誰でもいいと思っていたからだ。お義兄様でない以上、誰だってどんな人だって、わたしにとっては「あまり興味を持てない相手」でしかないのだから。
とはいえ「婚約者のことが大好き!」という演技をしたつもりはなかったから、お父様とお義兄様の勘違いに気付いて、実は少し戸惑っている。
特に、お義兄様から「クリステルは心の底からティルマン殿を愛しているから、浮気を知った今でも結婚を望んでいる」と思われていることには、ものすごくショックを受けた。
声を大にして言いたい。
ティルマン様なんて、どうだっていい。
わたしが好きなのはお義兄様だけ。
始めてお会いした日からずっとずっと、お義兄様だけを愛している。
けれどそれを知られてしまっては、わたしを家族の一人としか思っていないお義兄様に迷惑をかける。困らせてしまうことになる。
だから言えない。
すごく辛い……。
お父様から頼まれたからだ。
「いつもと違う行動をすると警戒されて、ティルマン殿の素行捜査がやりにくくなるかもしれない。不快だろうが、これまで通り公爵家での教育を受け続けて欲しい」
「分かりました」
「辛いことを頼んですまないね」
「気にしないで下さい。わたしは大丈夫ですから」
「クリステル……」
申し訳なさそうな顔をする父様に、罪悪感を覚えてしまう。
それは、わたしがティルマン様のことをどうとも思っていないからだ。浮気されても傷ついたりしないし、むしろ気持ちが楽になって喜んでいるくらいだ。
わたしもずっと心の中では浮気していた。
わたしの想いは、いつだってお義兄様だけに向かっている。
だからティルマン様の浮気を知った時、わたしだけが不誠実だったわけではなかったと知って、心がとても軽くなった。
ティルマン様だって好き勝手しているのだし、わたしも好きにさせてもらおう。今後もお義兄様だけを想い続けるけど、文句を言われる筋合いはないと開き直ったくらいだ。
それなのに、お義兄様と同じくお父様も「クリステルはティルマン殿を愛していて、結婚して幸せになる日を夢見ていた」と勘違いしてたらしい。しかもそれは今現在も継続中で、わたしを見るたびに痛ましいものを見る目をして悲しそうにする。
まあ確かに、わたしはこれまでティルマン様との婚約に不満を漏らしたことは一度もない。だから二人が勘違いするのも納得できる。
でも、不満を言わなかった本当の理由は、結婚相手は誰でもいいと思っていたからだ。お義兄様でない以上、誰だってどんな人だって、わたしにとっては「あまり興味を持てない相手」でしかないのだから。
とはいえ「婚約者のことが大好き!」という演技をしたつもりはなかったから、お父様とお義兄様の勘違いに気付いて、実は少し戸惑っている。
特に、お義兄様から「クリステルは心の底からティルマン殿を愛しているから、浮気を知った今でも結婚を望んでいる」と思われていることには、ものすごくショックを受けた。
声を大にして言いたい。
ティルマン様なんて、どうだっていい。
わたしが好きなのはお義兄様だけ。
始めてお会いした日からずっとずっと、お義兄様だけを愛している。
けれどそれを知られてしまっては、わたしを家族の一人としか思っていないお義兄様に迷惑をかける。困らせてしまうことになる。
だから言えない。
すごく辛い……。
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