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婚約者の初恋を応援するために婚約解消を受け入れました
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思えばネーデル侯爵家の令嬢であるアレクシアの初恋は、六才になったばかりの頃だった。
相手は侯爵邸で雇っている料理長の息子、リックである。鼻先にソバカスの浮かぶ茶色の髪をした彼は、ちょっぴりガサツな面のあるやんちゃ小僧である。けれど、将来は自分も父親と同じ料理人になるのだと、鳶色の瞳をキラキラ輝かせて語るところがカッコいい、一才年上の平民の少年だった。
言うまでもなく、この恋はアレクシアの片想いだった。とは言え、告白はしたのだ。
「リック、大好き。将来はわたくしのお婿さんになって、ネーデル侯爵家に婿入りしてちょうだい!」
「えー、嫌だよ。俺は父さんみたいな立派な料理人になるんだから」
告白して秒で失恋してしまったが、それも今となっては良い思い出である。
あれから十一年。現在のリックはネーデル侯爵家の料理人見習いとして、厨房の中で毎日がんばってくれている。将来は父親を超える素晴らしいシェフになることだろう。
リックには付き合って二年になる恋人がいるらしい。見習いを卒業していっぱしの料理人として認められた時、その彼女と結婚する約束をしているのだと、父親である料理長が嬉しそうに話してくれた。
ここ数年、リックとは直接話をするどころか顔を合わせることもないけれど、リックはアレクシアにとって初恋の人。幸せになって欲しいと願わずにはいられない。
初恋の大切な思い出をくれたリック。
どうか、どうか幸せに…………。
なーんて、懐かしい思い出に浸ってしまったのは、現実逃避のためなのかなんなのか。けれど、それも仕方ないではないかとアレクシアは心の中でこっそり思うのだ。
なぜなら今、アレクシアには大変なことが起こっているのだから。
「アレクシア、申し訳ないが、わたしたちの婚約を解消させてもらいたい」
十年来の婚約者であるこの国の第二王子であり、また王太子でもあるセドリックから、なんの前置きもなく婚約解消をお願いされてしまったのだから、現実逃避したくなってもそれは仕方のないことだろう。
場所は貴族が通う王立学園の生徒会室。生徒会長を務めるセドリックから呼び出しを受け、放課後、アレクシアは言われた通りやってきたのであるが、まさか婚約解消の話をされるとは考えてもみなかった。
この場にいるのはアレクシアとセドリック、そしてセドリックの側近候補であり、アレクシアの義弟でもあるユヴェールの三人だけである。
アレクシアは突然の婚約解消の話に驚きながらも、冷静さを保ってセドリックに質問した。
「殿下とわたくしとの婚約は政略的なものであり、王家からの打診により取りまとめられたものです。婚約解消をしても本当によろしいのですか? 国王陛下はこのことを御存じなのですか? そもそも、婚約解消の理由はなんなのです?」
「それが実は、その、あー……」
いつもは堂々としたセドリックだが、珍しく覇気がなく歯切れも悪い。そんな主に代わってユヴェールが淡々と答えた。
「殿下は好きな女性ができたそうです。なので、義姉上とは結婚したくないそうですよ」
「まあ!」
「ユ、ユヴェール! そんな露骨な言い方――」
「でも、このままでは義姉上と結婚して国王になるしかない。陛下もそれを望んでいる。でも、それは困る。なので義姉上をこっそり呼び出し、事情を説明して味方になってもらい、一緒に陛下を説得してもらいたい……というのが殿下の実に身勝手なご希望なわけです」
「おいっ、 ユヴェール!」
セドリックは慌ててユヴェールの口元を抑えるが、時既に遅し。話を聞いたアレクシアも、さすがに驚きは隠せていなかった。
しかし、そこは教育をしっかり受けた貴族令嬢である。咳払いを一つすると、アレクシアはすぐに冷静さを取り戻した。
「な、なるほど、そうだったのですね。念のための確認ですが、殿下と相手のご令嬢とは両想いなのですよね?」
「一応は両想いです。ちなみに相手は男爵家のご令嬢ですので身分が低く、殿下の正妃には到底なれないお方です」
またもや主を差し置いて返事をするユヴェールの隣で、セドリックが悔しそうに唇を噛んだ。その様子を見ていたアレクシアが、真剣な顔をしてセドリックに問う。
「第二王子である殿下が立太子できたのは、我がネーデル侯爵家の後ろ盾を得たから。それを失うということは、王太子の座を失うと言うこと。それが分かっていてなお、殿下はそのご令嬢との未来を選ぶと、そうおっしゃっているのですか?」
「…………」
「派閥の均衡は崩れ、内乱になるかもしれません。殿下がいずれ国王になると信じ、殿下のために働くことを己が使命と信じ、努力を重ねてきた側近候補たちを裏切ることにもなります。陛下や王妃様の信頼を裏切り、悲しませることにもなるでしょう。それでも殿下、あなた様はそのご令嬢を選ぶのですか?」
俯き加減に真剣な顔をして考えていたセドリックだったが、やがて顔を上げ、真っ直ぐにアレクシアを見つめた。
「それでもやはり、わたしは彼女との未来を望みたい。彼女と出会うまでのわたしは、アレクシアと結婚し、いずれ自分がこの国の王になることを疑うことはなかった。この国と国民のために生涯を尽くそうと思っていた。けれど、わたしは……」
セドリックは苦しそうな顔で、広げた自分の手の平を見つめた。それをぎゅっと握る。
「わたしは彼女に出会ってしまった。真実の愛を知ってしまった。この国はわたしがいなくとも、兄上がいて下さるから先の心配はない。しかし、彼女にはわたししかいないし、わたしにも彼女が必要だ。彼女がいなければ、わたしはこの先幸せを感じることはできないだろう」
「それほどまでに、そのご令嬢のことを……」
「王太子の地位を捨てることでしか彼女との未来が望めないのであれば、わたしは迷うことなくそれを捨てることができる」
「では王族から除籍され、平民となって国外追放されても構わないということですか?」
「除籍と国外追放? そ、それは……」
さすがにそこまでは考えていなかったのだろう。アレクシアからのその質問に、セドリックも苦痛の表情をみせた。
「確かに、わたしが王族として国に留まれば、内乱の火種となりうるな」
「はい。これまで第二王子派だった貴族派閥の方々は、そう簡単には殿下の廃嫡を受け入れようとはしないでしょう。最悪、第一王子殿下の暗殺を謀る者まで出るかもしれません」
「宰相であるミルシリア公爵の家門などが、その筆頭でしょうね」
ユヴェールが義姉の言葉に同意するように呟いた。
それを耳にしたセドリックは大きく息を吐いた。そして、一遍の迷いの色もない瞳で力強く言った。
「できる。平民となって生きることになっても、二度と祖国に足を踏み入れることができなくとも、愛する彼女さえ一緒にいてくれるなら、わたしは幸せに生きていける」
それを聞いたアレクシアは、その美しい顔に心からの笑顔を浮かべた。
「そこまでのお覚悟があるのでしたら、最早わたくしに言うことはございません。陛下の説得、わたくしもお力添えさせていただきます」
「アレクシア、心から感謝する。本当にありがとう。そして、君という素晴らしい婚約者がいながら、他の女性に心を奪われたわたしを、どうか許して欲しい」
「お気になさらず。恋心がなくとも、殿下はわたくしの大切な方です。幸せになって下さればわたくしも嬉しいですわ。ああ、そう言えば……」
なにかを思いついたように、アレクシアは長年の婚約者だったセドリックに対し、こんな質問をした。
「その男爵家のご令嬢に対する想いですが、もしかして、殿下の初恋だったりするんですの?」
皮肉でもなんでもなく、単なる興味本位として楽し気に質問してきたアレクシアに、セドリックは照れたように笑った。
「実はそうなんだ。君を愛することができれば、こんなことにはならなかったのだろうな。本当にすまない」
「もう謝るのはおやめ下さい。でも、そうですか、やはり初恋だったのですね……」
「ちなみに、アレクシアの初恋の相手は?」
「あー、わたくしの初恋は……勿論、殿下ですわ」
にっこり言ったアレクシア。
「よくもまあ、いけしゃあしゃあとそんな嘘をつけますね。義姉上の初恋は料理人見習いのリックじゃありませんか」
ユヴェールにさくっとバラされて、アレクシアの顔が笑顔のまま固まった。やがて真っ赤になる。
「ちょっ、ユヴェールったら、お黙りなさい!!」
「嘘をつく方が悪いんですよ」
「そっ、それは悪かったけれど――」
「確か告白して速攻でフラれたんですよね。義姉上が六才の時のことだとか」
「いやーっ、もうやめて!!」
「六才か。わたしたちが出会う前のことだな。ふむ、妬けるな」
顎を指で挟み、わざとらしく悲し気に言ったセドリックである。そんな彼を、アレクシアが真っ赤な顔で羞恥に涙を滲ませながら睨んだ。
「もう、殿下まで! 心にもないことをおっしゃらないで下さいませ!」
「本当だぞ? なにせ、わたしの初恋は君なのだからな」
「ちなみに俺の初恋も義姉上ですよ」
「ユヴェール、くだらない嘘はやめなさい! 殿下はついさっき、男爵令嬢が初恋の相手だとおっしゃったばかりではありませんか!」
「ふっ、君を真似て嘘をついてみた」
ついさっき、初恋の相手をセドリックだと嘘をついたことを当て擦られていると気付き、アレクシアが眉根を下げる。
「うー、それは……嘘をついて申し訳ありませんでした。テレ臭かったもので」
「俺の初恋が義姉上というのは本当のことですが?」
「うんうん、そうだな、ユヴェールの初恋はアレクシアだ」
「当然です、俺の初恋が義姉上以外の人だなんてありえません」
「この世のすべての男たちの初恋の相手は、きっとアレクシアだ」
明らかに自分で遊んでいる二人の前で、アレクシアが恥ずかしそうに両手で顔を隠した。
「もうっ、お二人ともわたくしを揶揄うのはやめて下さいませ! 淑女をいじめるだなんて、紳士として恥ずべきですわよ!!!」
そう言って、すっかり拗ねてしまったアレクシアに、セドリックとユヴェールの二人は、苦笑いしながら必死に機嫌をとらされることになったという。
その後、アレクシアとセドリックは国王に会見を申し込み、事の次第を全て包み隠さず報告した上で、 二人の婚約の解消を願い出た。
セドリックの将来に期待し、二人の婚姻を楽しみにしていた国王は大いに落胆したが、セドリックの本気を感じ取ると、最終的には頷いてくれたのだった。
ただし、セドリックにはそれ相応の罰が下された。
落馬して負った怪我が元で鬼籍に入った、と国内外に発表されたのである。そして、国王の個人資産からいくばくかの金銭を渡され、秘密裏に国外追放に処されたのだった。
厳しいようだが、実は国王から息子へ向けた恩情である。その後の人生を自由に生きることが許されたのだから。
そして愛する婚約者を亡くした侯爵令嬢アレクシアは、セドリックの葬儀後の一年間を喪に服することになった。そして、喪が明けるとすぐにユヴェールと婚約し、その半年後には結婚式を挙げて二人は夫婦となったのである。
そもそも、一人娘だったアレクシアが王家に嫁ぐことで後継ぎがいなくなり、次期侯爵として遠縁から養子に迎えられたのがユヴェールなのである。セドリックとの婚約が解消されたアレクシアがユヴェールと結婚し、侯爵家を継ぐことは当然の流れと言えた。
二人が結婚して一ヵ月が過ぎた日のことである。
侯爵邸の美しい中庭に建てられた四阿で、アレクシアとユヴェールは午後のティータイムを楽しんでいた。
香り高いお茶を口にしたアレクシアは、ホッと一息ついた。しかし、すぐに困った顔になり、それがユヴェールを心配させてしまう。
「どうしましたか、義姉う……じゃなくて、アレクシア。なにか心配事ですか?」
「いいえ。ただ、世の中ってままならないものだなって、少し切なくなっただけ」
「それってもしかして、あなたの元婚約者のことを言ってます?」
アレクシアは頷いた。
初恋の人である男爵令嬢との未来を望み、地位も名誉も、これまでの人生をも捨てたセドリックだったが、驚くべきことに件の男爵令嬢とは添い遂げることができなかった。なんと、男爵令嬢に求婚を断られたのである。
「だって、セドリック様が未来の王様になると思ったから誘惑したんだもの。それなのに、平民になったですって? 嫌よ、絶対に結婚なんかしないわ。しかも国外追放だなんて、冗談じゃないわよ! わたし、王妃は無理だとしても、絶対に高位貴族の奥さんになるんだから! お金持ちになって、幸せに暮らすんだから! 平民になったセドリック様なんて、なんの魅力もないわよ! 顔がいいだけの世間知らずじゃない!!」
そんなことを愛する人から言われたセドリックは、一体どんな気持ちだっただろう。少し離れた所から二人の話を聞いていたユヴェールは、男爵令嬢を呪い殺したくなったという。
結局、セドリックは一人で国外に追放されることになった。既に国内外に向けてセドリックの死は公布されており、今更なかったことにはできなかったのである。
「彼は今頃どこでなにをしているんでしょうね。考えの甘いところはあったけれど悪い人ではなかったし、付き合いも長かったから、やはり心配になりますね」
「そうね。元気にしていらっしゃるといいわね。失恋の傷も癒えて、新しい恋でもしていることを祈るばかりだわ」
と、そこまで言ったところで、ふう、とアレクシアは再度ため息をついた。
「初恋は叶わないものだっていうけれど……本当なのかもしれないわね」
「どうしてそう思うんですか?」
「だって、わたくしはリックと結ばれなかったし、セドリック様も男爵令嬢に見捨てられたもの」
憂いを含んだ声でそう言うアレクシアに、ユヴェールが悪戯っぽく笑った。
「でも、俺の初恋は叶いましたよ。アレクシア、あなたと結婚できましたから。前に言いましたよね、俺の初恋はあなただと」
「あ、あれはわたくしを揶揄うために言った冗談だったんじゃ……」
「まさか。俺は養子になるためにこの侯爵家にきて、あなたに初めて会ったその瞬間に恋に落ちました。まごうことなき初恋でした」
甘く蕩けるような瞳でユヴェールに見つめられて、アレクシアの頬が赤く染まる。そんなアレクシアをかわいく思いながら、ユヴェールは己の手をアレクシアの手に重ね置き、更に赤くなった妻の頬にキスをした。
「愛しています、初恋の人。一生大切にします」
真摯な想いを感じ取り、アレクシアの胸が喜びに熱くなった。
弟としか思っていなかったユヴェール。そんな彼と婚約することになった当初はかなり戸惑ったが、今ではアレクシアも心からユヴェールを想うようになっている。
「わたくしもあなたを愛しているわ、ユヴェール。結局、実った恋が初恋であるかないかは、たいして意味はないのかもしれないわね。あなたは初恋の人ではないけれど、それでもわたくし、あなたと結婚できてとても幸せだもの」
「そうですね。まあ、俺は初恋が実りましたけどね」
自慢げにそう言うユヴェールに、アレクシアは子供っぽく頬を膨らませた。
「どうせわたくしの初恋は見事に散っているわよ」
「おかげで俺のものになってもらえた」
微笑みながら手の甲に口付けられて、てアレクシアは赤くなることしかできない。
「好きです、アレクシア」
言いながらユヴェールの顔がアレクシアの顔に近付いていった。二人の唇がそっと重なる。
やがて唇が離れると、アレクシアはユヴェールの手をとり、それを自らの頬に押し当てながら言った。
「今になって思えば、わたくしの初恋は叶わなくて正解だったわ。ユヴェール、あなたとこうして結ばれることができたのですもの」
「ちなみにですが、半年前に結婚したリックも、俺と同じく初恋相手と結婚できたそうですよ」
それを聞いたアレクシアが、少し複雑な顔をする。
「つまり、わたくしは恋愛的な意味において、リックから少しも好かれていなったということね」
「悲しいですか? 困りましたねぇ、嫉妬のあまり俺はリックを解雇したくなってきましたよ」
「まあ、ふふふ、ダメよ、ユヴェール。リックのことは、とうの昔に良い思い出になっているわ。あなたが気にすることはなにもないのよ。それに腕の良い料理人を解雇するなんて、我が侯爵家にとって損失でしかないでしょう?」
「分かっていても嫉妬してしまうんですよ。これもアレクシアを愛するがゆえです」
「まったくもう、あなたときたら、上手いことばかり言うんだから」
文句を言いながらも嬉しそうな妻の姿に、ユヴェールは小さく微笑んだのだった。
結局、初恋が実ろうと実るまいと、人は愛する人と結ばれて幸せになることができるのだ。ただし、初恋が実らなかったものには、遠い日の懐かしくも切ない思い出が、まるで宝物のように胸に残ることになる。
そしてまた、新しい恋をするたびごとに、思い出が増えていくのだ。
それを考えると、初恋が実らなかった人間の方が、恋の思い出をより多く持てることになり、得をするのではないのかしら。
そんなことを胸の奥深くで考えながら、アレクシアは愛する夫との楽しいティータイムを満喫するのであった。
end
相手は侯爵邸で雇っている料理長の息子、リックである。鼻先にソバカスの浮かぶ茶色の髪をした彼は、ちょっぴりガサツな面のあるやんちゃ小僧である。けれど、将来は自分も父親と同じ料理人になるのだと、鳶色の瞳をキラキラ輝かせて語るところがカッコいい、一才年上の平民の少年だった。
言うまでもなく、この恋はアレクシアの片想いだった。とは言え、告白はしたのだ。
「リック、大好き。将来はわたくしのお婿さんになって、ネーデル侯爵家に婿入りしてちょうだい!」
「えー、嫌だよ。俺は父さんみたいな立派な料理人になるんだから」
告白して秒で失恋してしまったが、それも今となっては良い思い出である。
あれから十一年。現在のリックはネーデル侯爵家の料理人見習いとして、厨房の中で毎日がんばってくれている。将来は父親を超える素晴らしいシェフになることだろう。
リックには付き合って二年になる恋人がいるらしい。見習いを卒業していっぱしの料理人として認められた時、その彼女と結婚する約束をしているのだと、父親である料理長が嬉しそうに話してくれた。
ここ数年、リックとは直接話をするどころか顔を合わせることもないけれど、リックはアレクシアにとって初恋の人。幸せになって欲しいと願わずにはいられない。
初恋の大切な思い出をくれたリック。
どうか、どうか幸せに…………。
なーんて、懐かしい思い出に浸ってしまったのは、現実逃避のためなのかなんなのか。けれど、それも仕方ないではないかとアレクシアは心の中でこっそり思うのだ。
なぜなら今、アレクシアには大変なことが起こっているのだから。
「アレクシア、申し訳ないが、わたしたちの婚約を解消させてもらいたい」
十年来の婚約者であるこの国の第二王子であり、また王太子でもあるセドリックから、なんの前置きもなく婚約解消をお願いされてしまったのだから、現実逃避したくなってもそれは仕方のないことだろう。
場所は貴族が通う王立学園の生徒会室。生徒会長を務めるセドリックから呼び出しを受け、放課後、アレクシアは言われた通りやってきたのであるが、まさか婚約解消の話をされるとは考えてもみなかった。
この場にいるのはアレクシアとセドリック、そしてセドリックの側近候補であり、アレクシアの義弟でもあるユヴェールの三人だけである。
アレクシアは突然の婚約解消の話に驚きながらも、冷静さを保ってセドリックに質問した。
「殿下とわたくしとの婚約は政略的なものであり、王家からの打診により取りまとめられたものです。婚約解消をしても本当によろしいのですか? 国王陛下はこのことを御存じなのですか? そもそも、婚約解消の理由はなんなのです?」
「それが実は、その、あー……」
いつもは堂々としたセドリックだが、珍しく覇気がなく歯切れも悪い。そんな主に代わってユヴェールが淡々と答えた。
「殿下は好きな女性ができたそうです。なので、義姉上とは結婚したくないそうですよ」
「まあ!」
「ユ、ユヴェール! そんな露骨な言い方――」
「でも、このままでは義姉上と結婚して国王になるしかない。陛下もそれを望んでいる。でも、それは困る。なので義姉上をこっそり呼び出し、事情を説明して味方になってもらい、一緒に陛下を説得してもらいたい……というのが殿下の実に身勝手なご希望なわけです」
「おいっ、 ユヴェール!」
セドリックは慌ててユヴェールの口元を抑えるが、時既に遅し。話を聞いたアレクシアも、さすがに驚きは隠せていなかった。
しかし、そこは教育をしっかり受けた貴族令嬢である。咳払いを一つすると、アレクシアはすぐに冷静さを取り戻した。
「な、なるほど、そうだったのですね。念のための確認ですが、殿下と相手のご令嬢とは両想いなのですよね?」
「一応は両想いです。ちなみに相手は男爵家のご令嬢ですので身分が低く、殿下の正妃には到底なれないお方です」
またもや主を差し置いて返事をするユヴェールの隣で、セドリックが悔しそうに唇を噛んだ。その様子を見ていたアレクシアが、真剣な顔をしてセドリックに問う。
「第二王子である殿下が立太子できたのは、我がネーデル侯爵家の後ろ盾を得たから。それを失うということは、王太子の座を失うと言うこと。それが分かっていてなお、殿下はそのご令嬢との未来を選ぶと、そうおっしゃっているのですか?」
「…………」
「派閥の均衡は崩れ、内乱になるかもしれません。殿下がいずれ国王になると信じ、殿下のために働くことを己が使命と信じ、努力を重ねてきた側近候補たちを裏切ることにもなります。陛下や王妃様の信頼を裏切り、悲しませることにもなるでしょう。それでも殿下、あなた様はそのご令嬢を選ぶのですか?」
俯き加減に真剣な顔をして考えていたセドリックだったが、やがて顔を上げ、真っ直ぐにアレクシアを見つめた。
「それでもやはり、わたしは彼女との未来を望みたい。彼女と出会うまでのわたしは、アレクシアと結婚し、いずれ自分がこの国の王になることを疑うことはなかった。この国と国民のために生涯を尽くそうと思っていた。けれど、わたしは……」
セドリックは苦しそうな顔で、広げた自分の手の平を見つめた。それをぎゅっと握る。
「わたしは彼女に出会ってしまった。真実の愛を知ってしまった。この国はわたしがいなくとも、兄上がいて下さるから先の心配はない。しかし、彼女にはわたししかいないし、わたしにも彼女が必要だ。彼女がいなければ、わたしはこの先幸せを感じることはできないだろう」
「それほどまでに、そのご令嬢のことを……」
「王太子の地位を捨てることでしか彼女との未来が望めないのであれば、わたしは迷うことなくそれを捨てることができる」
「では王族から除籍され、平民となって国外追放されても構わないということですか?」
「除籍と国外追放? そ、それは……」
さすがにそこまでは考えていなかったのだろう。アレクシアからのその質問に、セドリックも苦痛の表情をみせた。
「確かに、わたしが王族として国に留まれば、内乱の火種となりうるな」
「はい。これまで第二王子派だった貴族派閥の方々は、そう簡単には殿下の廃嫡を受け入れようとはしないでしょう。最悪、第一王子殿下の暗殺を謀る者まで出るかもしれません」
「宰相であるミルシリア公爵の家門などが、その筆頭でしょうね」
ユヴェールが義姉の言葉に同意するように呟いた。
それを耳にしたセドリックは大きく息を吐いた。そして、一遍の迷いの色もない瞳で力強く言った。
「できる。平民となって生きることになっても、二度と祖国に足を踏み入れることができなくとも、愛する彼女さえ一緒にいてくれるなら、わたしは幸せに生きていける」
それを聞いたアレクシアは、その美しい顔に心からの笑顔を浮かべた。
「そこまでのお覚悟があるのでしたら、最早わたくしに言うことはございません。陛下の説得、わたくしもお力添えさせていただきます」
「アレクシア、心から感謝する。本当にありがとう。そして、君という素晴らしい婚約者がいながら、他の女性に心を奪われたわたしを、どうか許して欲しい」
「お気になさらず。恋心がなくとも、殿下はわたくしの大切な方です。幸せになって下さればわたくしも嬉しいですわ。ああ、そう言えば……」
なにかを思いついたように、アレクシアは長年の婚約者だったセドリックに対し、こんな質問をした。
「その男爵家のご令嬢に対する想いですが、もしかして、殿下の初恋だったりするんですの?」
皮肉でもなんでもなく、単なる興味本位として楽し気に質問してきたアレクシアに、セドリックは照れたように笑った。
「実はそうなんだ。君を愛することができれば、こんなことにはならなかったのだろうな。本当にすまない」
「もう謝るのはおやめ下さい。でも、そうですか、やはり初恋だったのですね……」
「ちなみに、アレクシアの初恋の相手は?」
「あー、わたくしの初恋は……勿論、殿下ですわ」
にっこり言ったアレクシア。
「よくもまあ、いけしゃあしゃあとそんな嘘をつけますね。義姉上の初恋は料理人見習いのリックじゃありませんか」
ユヴェールにさくっとバラされて、アレクシアの顔が笑顔のまま固まった。やがて真っ赤になる。
「ちょっ、ユヴェールったら、お黙りなさい!!」
「嘘をつく方が悪いんですよ」
「そっ、それは悪かったけれど――」
「確か告白して速攻でフラれたんですよね。義姉上が六才の時のことだとか」
「いやーっ、もうやめて!!」
「六才か。わたしたちが出会う前のことだな。ふむ、妬けるな」
顎を指で挟み、わざとらしく悲し気に言ったセドリックである。そんな彼を、アレクシアが真っ赤な顔で羞恥に涙を滲ませながら睨んだ。
「もう、殿下まで! 心にもないことをおっしゃらないで下さいませ!」
「本当だぞ? なにせ、わたしの初恋は君なのだからな」
「ちなみに俺の初恋も義姉上ですよ」
「ユヴェール、くだらない嘘はやめなさい! 殿下はついさっき、男爵令嬢が初恋の相手だとおっしゃったばかりではありませんか!」
「ふっ、君を真似て嘘をついてみた」
ついさっき、初恋の相手をセドリックだと嘘をついたことを当て擦られていると気付き、アレクシアが眉根を下げる。
「うー、それは……嘘をついて申し訳ありませんでした。テレ臭かったもので」
「俺の初恋が義姉上というのは本当のことですが?」
「うんうん、そうだな、ユヴェールの初恋はアレクシアだ」
「当然です、俺の初恋が義姉上以外の人だなんてありえません」
「この世のすべての男たちの初恋の相手は、きっとアレクシアだ」
明らかに自分で遊んでいる二人の前で、アレクシアが恥ずかしそうに両手で顔を隠した。
「もうっ、お二人ともわたくしを揶揄うのはやめて下さいませ! 淑女をいじめるだなんて、紳士として恥ずべきですわよ!!!」
そう言って、すっかり拗ねてしまったアレクシアに、セドリックとユヴェールの二人は、苦笑いしながら必死に機嫌をとらされることになったという。
その後、アレクシアとセドリックは国王に会見を申し込み、事の次第を全て包み隠さず報告した上で、 二人の婚約の解消を願い出た。
セドリックの将来に期待し、二人の婚姻を楽しみにしていた国王は大いに落胆したが、セドリックの本気を感じ取ると、最終的には頷いてくれたのだった。
ただし、セドリックにはそれ相応の罰が下された。
落馬して負った怪我が元で鬼籍に入った、と国内外に発表されたのである。そして、国王の個人資産からいくばくかの金銭を渡され、秘密裏に国外追放に処されたのだった。
厳しいようだが、実は国王から息子へ向けた恩情である。その後の人生を自由に生きることが許されたのだから。
そして愛する婚約者を亡くした侯爵令嬢アレクシアは、セドリックの葬儀後の一年間を喪に服することになった。そして、喪が明けるとすぐにユヴェールと婚約し、その半年後には結婚式を挙げて二人は夫婦となったのである。
そもそも、一人娘だったアレクシアが王家に嫁ぐことで後継ぎがいなくなり、次期侯爵として遠縁から養子に迎えられたのがユヴェールなのである。セドリックとの婚約が解消されたアレクシアがユヴェールと結婚し、侯爵家を継ぐことは当然の流れと言えた。
二人が結婚して一ヵ月が過ぎた日のことである。
侯爵邸の美しい中庭に建てられた四阿で、アレクシアとユヴェールは午後のティータイムを楽しんでいた。
香り高いお茶を口にしたアレクシアは、ホッと一息ついた。しかし、すぐに困った顔になり、それがユヴェールを心配させてしまう。
「どうしましたか、義姉う……じゃなくて、アレクシア。なにか心配事ですか?」
「いいえ。ただ、世の中ってままならないものだなって、少し切なくなっただけ」
「それってもしかして、あなたの元婚約者のことを言ってます?」
アレクシアは頷いた。
初恋の人である男爵令嬢との未来を望み、地位も名誉も、これまでの人生をも捨てたセドリックだったが、驚くべきことに件の男爵令嬢とは添い遂げることができなかった。なんと、男爵令嬢に求婚を断られたのである。
「だって、セドリック様が未来の王様になると思ったから誘惑したんだもの。それなのに、平民になったですって? 嫌よ、絶対に結婚なんかしないわ。しかも国外追放だなんて、冗談じゃないわよ! わたし、王妃は無理だとしても、絶対に高位貴族の奥さんになるんだから! お金持ちになって、幸せに暮らすんだから! 平民になったセドリック様なんて、なんの魅力もないわよ! 顔がいいだけの世間知らずじゃない!!」
そんなことを愛する人から言われたセドリックは、一体どんな気持ちだっただろう。少し離れた所から二人の話を聞いていたユヴェールは、男爵令嬢を呪い殺したくなったという。
結局、セドリックは一人で国外に追放されることになった。既に国内外に向けてセドリックの死は公布されており、今更なかったことにはできなかったのである。
「彼は今頃どこでなにをしているんでしょうね。考えの甘いところはあったけれど悪い人ではなかったし、付き合いも長かったから、やはり心配になりますね」
「そうね。元気にしていらっしゃるといいわね。失恋の傷も癒えて、新しい恋でもしていることを祈るばかりだわ」
と、そこまで言ったところで、ふう、とアレクシアは再度ため息をついた。
「初恋は叶わないものだっていうけれど……本当なのかもしれないわね」
「どうしてそう思うんですか?」
「だって、わたくしはリックと結ばれなかったし、セドリック様も男爵令嬢に見捨てられたもの」
憂いを含んだ声でそう言うアレクシアに、ユヴェールが悪戯っぽく笑った。
「でも、俺の初恋は叶いましたよ。アレクシア、あなたと結婚できましたから。前に言いましたよね、俺の初恋はあなただと」
「あ、あれはわたくしを揶揄うために言った冗談だったんじゃ……」
「まさか。俺は養子になるためにこの侯爵家にきて、あなたに初めて会ったその瞬間に恋に落ちました。まごうことなき初恋でした」
甘く蕩けるような瞳でユヴェールに見つめられて、アレクシアの頬が赤く染まる。そんなアレクシアをかわいく思いながら、ユヴェールは己の手をアレクシアの手に重ね置き、更に赤くなった妻の頬にキスをした。
「愛しています、初恋の人。一生大切にします」
真摯な想いを感じ取り、アレクシアの胸が喜びに熱くなった。
弟としか思っていなかったユヴェール。そんな彼と婚約することになった当初はかなり戸惑ったが、今ではアレクシアも心からユヴェールを想うようになっている。
「わたくしもあなたを愛しているわ、ユヴェール。結局、実った恋が初恋であるかないかは、たいして意味はないのかもしれないわね。あなたは初恋の人ではないけれど、それでもわたくし、あなたと結婚できてとても幸せだもの」
「そうですね。まあ、俺は初恋が実りましたけどね」
自慢げにそう言うユヴェールに、アレクシアは子供っぽく頬を膨らませた。
「どうせわたくしの初恋は見事に散っているわよ」
「おかげで俺のものになってもらえた」
微笑みながら手の甲に口付けられて、てアレクシアは赤くなることしかできない。
「好きです、アレクシア」
言いながらユヴェールの顔がアレクシアの顔に近付いていった。二人の唇がそっと重なる。
やがて唇が離れると、アレクシアはユヴェールの手をとり、それを自らの頬に押し当てながら言った。
「今になって思えば、わたくしの初恋は叶わなくて正解だったわ。ユヴェール、あなたとこうして結ばれることができたのですもの」
「ちなみにですが、半年前に結婚したリックも、俺と同じく初恋相手と結婚できたそうですよ」
それを聞いたアレクシアが、少し複雑な顔をする。
「つまり、わたくしは恋愛的な意味において、リックから少しも好かれていなったということね」
「悲しいですか? 困りましたねぇ、嫉妬のあまり俺はリックを解雇したくなってきましたよ」
「まあ、ふふふ、ダメよ、ユヴェール。リックのことは、とうの昔に良い思い出になっているわ。あなたが気にすることはなにもないのよ。それに腕の良い料理人を解雇するなんて、我が侯爵家にとって損失でしかないでしょう?」
「分かっていても嫉妬してしまうんですよ。これもアレクシアを愛するがゆえです」
「まったくもう、あなたときたら、上手いことばかり言うんだから」
文句を言いながらも嬉しそうな妻の姿に、ユヴェールは小さく微笑んだのだった。
結局、初恋が実ろうと実るまいと、人は愛する人と結ばれて幸せになることができるのだ。ただし、初恋が実らなかったものには、遠い日の懐かしくも切ない思い出が、まるで宝物のように胸に残ることになる。
そしてまた、新しい恋をするたびごとに、思い出が増えていくのだ。
それを考えると、初恋が実らなかった人間の方が、恋の思い出をより多く持てることになり、得をするのではないのかしら。
そんなことを胸の奥深くで考えながら、アレクシアは愛する夫との楽しいティータイムを満喫するのであった。
end
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