呼んでいる声がする

音羽有紀

文字の大きさ
24 / 61

呼んでいる声がする(その24)海の向こう

しおりを挟む
「雪の中このこの海岸に来たの。」



「寒かったでしょ。」



頷いて瑠子は言った。



「それがね、あんまり感じ無かったの。」」



蓮花は笑った。瑠子も笑った。



「それで、その時、世界中にたった一人でこの世界に



いる感じがしたの。海は暗く砂浜は雪で覆われていたわ。それでね、なんだか安心したの。一人でも

寂しく無かった。」



 蓮花は、黙って下を向いた。



「わかる。」



そう言ってからまたきらきら昼間の光に波間が揺れている方を向き直ると言った。



「あたしね、あの海の向こうに行ってみる。ずっと向こうの。」



「行きたいね。いつか行こうよ。」



彼女は嬉しそうに頷いた。



冬の潮風は冷たい。けれど瑠子には感じなかった。



ただ、あの海の向こうに行っている自分を想像した。 



「あたしね、家が嫌で出てきたの。アパートのイエローハウスに。」



「イエローハウス?」



「アパートで外壁が黄色いの。」



「それでイエローハウスなのね。いいな、あたしも家出たい。」



「蓮花さんは、兄弟は?」



「いないの、親戚の人と暮らしてるの。父は再婚して母も出て行ったから。」



似ている自分の境遇と、内心瑠子は驚いた。



けれど、蓮花の横顔が暗く感じたので瑠子は明るく言った。



「ここに越してくる前は丘に囲まれていたの。家が密集していてあんまり居心地良くなかったな。」



「でもねあたしの家は、ここから樹海線で1時間もかかるの、もちろん海なんて無いしここに比べると薄暗い感じがする。」



「そうね、ここら辺の方が明るく感じる。」



「羨ましいな。」



「蓮花さんもどう?この辺。」



「来たい。」



「けれど、今のままでも仕事帰りに夜景は見れるよね。」



砂をいじりながら瑠子は言った。



「そうだね、夜のコンビナートすごく綺麗。」



その意見におおいに賛成な瑠子は大きく頷いた。



「そうだよね。キラキラしてね。」



そう言いながら蓮花が先程注いでくれた紅茶を飲んだ。



それから、はっとした様に声を発した。



「あ、そうだ。」



そう言うとリュクサックから先程買ったチョコポッキーを取り出した。



「はい。」



「ありがとう。」



そう言うと蓮花は口に入れた



「美味しい。」



瑠子は自分も口に入れた。



その蓮花の言葉に瑠子も続けた。



「うん、紅茶も温かくて美味しい。」



それから、どこまでも続く海を見つめた。            


                               つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

地味男はイケメン元総長

緋村燐
青春
高校一年になったばかりの灯里は、メイクオタクである事を秘密にしながら地味子として過ごしていた。 GW前に、校外学習の班の親交を深めようという事で遊園地に行くことになった灯里達。 お化け屋敷に地味男の陸斗と入るとハプニングが! 「なぁ、オレの秘密知っちゃった?」 「誰にも言わないからっ! だから代わりに……」 ヒミツの関係はじめよう? *野いちごに掲載しているものを改稿した作品です。 野いちご様 ベリーズカフェ様 エブリスタ様 カクヨム様 にも掲載しています。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...