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第6話(3)
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アレクサンドラは、窓口設置に関する話を一切しなくなった。
打ち合わせについては、メンバーの解散はしないものの次回開催未定と申し伝えた。
手続見直しの仕上げについて、職員達からの報告を受け相談に応じ、ともに頭を悩ませる。
台帳管理の方は、何度もさせていた修正を途中で打ち切り、使用時のルール違反はどんな場合でも厳禁であるという周知を徹底させるに留めた。
以前のように、庁舎に遅い時間まで留まり、職務に打ち込むことはなくなった。
公証長への就任前に戻ったようなアレクサンドラの大人しさに、ある者は不気味に感じ、ある者は心配しながらも、本人に対しては誰もそれを表明しなかった。
侯爵伯爵への挨拶回りはまだ続いており、アレクサンドラは父伯爵へ帯同し、淑女の挨拶を粛々と披露した。
それ以外は、相手方と父伯爵との会談に大人しく耳を傾け、問われない限り口を開く様子はなかった。
これまでは帰途にそのままオルロフの邸宅に立ち寄り、父伯爵への相談や母夫人との喫茶など打ち解ける時間を取ったが、今は途中で邸宅前で馬車を乗り換え、そのままザハーリン邸に向かった。
帰り着くと、公爵が在宅であれば挨拶の後、夕食の時刻まで私室に篭り、公証長を務めた女伯爵の記録を取り寄せて漫然とページを繰る日々を送っていた。
オルロフの女公証長は2人いて、うち1人は当時の公証長が若くして亡くなり、弟が成人するまでの1年弱のみが任期だった。
残る1人は若くして女伯爵兼公証長となり、永く采配を振るったと書かれていて、読んでいくと、申請書の雛型の微修正や手数料の改定を彼女の時代、約200年前に行ったことが実績として数えられていたが、事務的な記録であるゆえに、苦労話など主観的な内容は射程外であった。
本当はそこが知りたかったが、とアレクサンドラは、無作法に頬杖を突いた。
その女伯爵は約40年公証長を務め、子を3人育んだと家族史にはあった。
当然、領地経営も行ったはずだが、どのように責任ある日々を乗り越えたのか、潰れそうにはならなかったのだろうか、問いが次々に去来するが、記録は何も答えてはくれない。
元老院の公爵・侯爵方に運動をする、その前に案を再検討する、そのどちらも、今のアレクサンドラに対応できる気がしなかった。
案の方は、信頼回復が図られ収入が元に戻るまで待つしかない。
運動するならば、先にサロンに赴くところから始まるが、巻き戻りとともに社交性をなくしていたアレクサンドラは、サロンに赴いたことはなく、構成員に伝手を持つ夫人達は誰で、どのサロンに属しているのか、どうすればそこに参加できるかを調べる必要があった。
さらに、情報はどこで入手するのかという問題に気が付いたアレクサンドラは、記録を乱暴に閉じた。
母夫人に相談する気にはまだなれなかった。
事情を話せば、また妻の責務が、と小言を受けるだろう。
当然の注意だと思う一方で、公証でのことに目途を付けなければ、今のところは何の問題も起きていない夫の方に心を傾ける余裕がない、というのが正直な気持ちだった。
夫にそういう扱いをするのは、続柄としても身分でも大変に礼を失しているのは重々承知していて、そのことがアレクサンドラをさらに苦しめていた。
夫のことから逃げ出そうとしながら、彼女は
(ニコライ様は……何か伝手をお持ちだったりは、しないだろうか)
そんな思い付きを、頭の中で転がしたりした。
打ち合わせについては、メンバーの解散はしないものの次回開催未定と申し伝えた。
手続見直しの仕上げについて、職員達からの報告を受け相談に応じ、ともに頭を悩ませる。
台帳管理の方は、何度もさせていた修正を途中で打ち切り、使用時のルール違反はどんな場合でも厳禁であるという周知を徹底させるに留めた。
以前のように、庁舎に遅い時間まで留まり、職務に打ち込むことはなくなった。
公証長への就任前に戻ったようなアレクサンドラの大人しさに、ある者は不気味に感じ、ある者は心配しながらも、本人に対しては誰もそれを表明しなかった。
侯爵伯爵への挨拶回りはまだ続いており、アレクサンドラは父伯爵へ帯同し、淑女の挨拶を粛々と披露した。
それ以外は、相手方と父伯爵との会談に大人しく耳を傾け、問われない限り口を開く様子はなかった。
これまでは帰途にそのままオルロフの邸宅に立ち寄り、父伯爵への相談や母夫人との喫茶など打ち解ける時間を取ったが、今は途中で邸宅前で馬車を乗り換え、そのままザハーリン邸に向かった。
帰り着くと、公爵が在宅であれば挨拶の後、夕食の時刻まで私室に篭り、公証長を務めた女伯爵の記録を取り寄せて漫然とページを繰る日々を送っていた。
オルロフの女公証長は2人いて、うち1人は当時の公証長が若くして亡くなり、弟が成人するまでの1年弱のみが任期だった。
残る1人は若くして女伯爵兼公証長となり、永く采配を振るったと書かれていて、読んでいくと、申請書の雛型の微修正や手数料の改定を彼女の時代、約200年前に行ったことが実績として数えられていたが、事務的な記録であるゆえに、苦労話など主観的な内容は射程外であった。
本当はそこが知りたかったが、とアレクサンドラは、無作法に頬杖を突いた。
その女伯爵は約40年公証長を務め、子を3人育んだと家族史にはあった。
当然、領地経営も行ったはずだが、どのように責任ある日々を乗り越えたのか、潰れそうにはならなかったのだろうか、問いが次々に去来するが、記録は何も答えてはくれない。
元老院の公爵・侯爵方に運動をする、その前に案を再検討する、そのどちらも、今のアレクサンドラに対応できる気がしなかった。
案の方は、信頼回復が図られ収入が元に戻るまで待つしかない。
運動するならば、先にサロンに赴くところから始まるが、巻き戻りとともに社交性をなくしていたアレクサンドラは、サロンに赴いたことはなく、構成員に伝手を持つ夫人達は誰で、どのサロンに属しているのか、どうすればそこに参加できるかを調べる必要があった。
さらに、情報はどこで入手するのかという問題に気が付いたアレクサンドラは、記録を乱暴に閉じた。
母夫人に相談する気にはまだなれなかった。
事情を話せば、また妻の責務が、と小言を受けるだろう。
当然の注意だと思う一方で、公証でのことに目途を付けなければ、今のところは何の問題も起きていない夫の方に心を傾ける余裕がない、というのが正直な気持ちだった。
夫にそういう扱いをするのは、続柄としても身分でも大変に礼を失しているのは重々承知していて、そのことがアレクサンドラをさらに苦しめていた。
夫のことから逃げ出そうとしながら、彼女は
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そんな思い付きを、頭の中で転がしたりした。
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