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第13話(2)
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一通り聞いたと満足した様子のT夫人が、わざと無作法に焼き菓子を齧りながら、
「ああ、オルロフ家は羨ましいわ、このようなお美しい上に賢く、第1王子の奥方に、公爵夫人の座までお射止めになって。これから女伯爵にもなられるのよね。我が娘も肖(あやか)れたら」
と嘆いた。
J夫人が「大丈夫よ、今から丹精なさい。まだ2歳でしょう」と助言をすると、T夫人は「無理よ無理。既に顔立ちが夫そっくりですもの」と溜め息を吐いた。
「あら父親に似た方が美人になると言わなくて?」
「そうなのかしら。まあ娘は良いわ、これからだし。それに引き換え、我が家のやんちゃ達と言ったら。どうしましょうリータ」
リータ、マルガリータであるところのトルベツコイ夫人は、「本当に、どうしましょうねえ」と微笑みは浮かべつつ困り顔で応じた。
2人の話だと、それぞれの男児、アレクサンドラより少し年下というくらいでもはや青年であったがカードに夢中になり、相当に負けが込んでいるようだという。
初めは理由を隠したまま親達へ無心して穴埋めしていたが、立て続いたことで親達が疑いの目を持ち、そのうち1人が息子の後を付けさせて事態が発覚したようだった。
不幸中の幸いだったのは、如何わしいところから金を借りようとしていたのを寸でのところで食い止められたことで、結局のところ膨れ上がった借金は親達が返済し、さて青年らをどう矯正するかという段階になっている。
青年らは貴族の子息であり、跡継ぎである者も何人も含まれていて、醜聞は消せなくとも以後は素行良好な一貴族として振る舞わなければ破滅である。
しかし彼らは皆、それほど金に不自由しない階級なこともあって、中にはあと一回で勝てたのにと不貞腐れ、あるいはしおらしさの陰で親達の目を掻い潜ってカードを繰る目論見を立てている者がいるようだという噂が親達の間に流れ、どうすれば改心させられるのかで日々頭を痛めている、そういう事情が彼女達から語られた。
アレクサンドラは、賭け事依存になる人がいることは知識として知っていたが、このように身近なところで、貴婦人方を悩ませる問題として存在していることに驚き呆れた。
子供というのはこのように親を悩ませるものなのだろうか、2人の夫人は微笑んではいるが内心は嵐だと思うと気の毒でたまらないでいると、T夫人が言葉を接いだ。
「ごめんなさいねお耳汚しを。オルロフ家では起こらないことですものね、ああ羨ましいわ」
「アーニャ、でも弟のところはその代わりに、代わりと言うのはどうかと思うけれど、ほら跡継ぎ問題が」
「ああ、そうだったわね……どこでも平穏な家はないものなのね……」
トルベツコイ夫人がアレクサンドラに向かって、
「でも、せめて娘はザハーリン夫人のような淑女に育って欲しいわ」
と笑いかけた。
夫人と親しくなっておきたいと機会を狙っていたアレクサンドラにとって、話しかけられたのは好機であったが、返答には窮した。
賭け事に興味を持たないという点では自信があったものの、公証で演じている醜態を思うと、とても他の模範となるような要素を持っていないと自覚があり、躊躇が彼女を引っ張った。
トルベツコイ夫人は「ねえソーニャ」と彼女の隣、アレクサンドラの反対側に母に隠れるようにして座っている娘に呼びかけた。
ソフィア嬢は、母夫人の陰からちらちらと顔を覗かせてアレクサンドラを見ていたが、目が合うと飛び上がるようにしてまた陰に隠れた。
こういう場合は年長である自分から話しかけるべきなのだろうが、伯母のJ公爵夫人の子は皆アレクサンドラより年上、叔父の一家とは疎遠で、周囲に小さな子がいた試しがなく、子供の扱いを彼女は体験として知らなかった。
再びそろそろと現れた少女の片目にとりあえず笑いかけてみると、その顔が赤くなり再び隠れる。
「ああ、オルロフ家は羨ましいわ、このようなお美しい上に賢く、第1王子の奥方に、公爵夫人の座までお射止めになって。これから女伯爵にもなられるのよね。我が娘も肖(あやか)れたら」
と嘆いた。
J夫人が「大丈夫よ、今から丹精なさい。まだ2歳でしょう」と助言をすると、T夫人は「無理よ無理。既に顔立ちが夫そっくりですもの」と溜め息を吐いた。
「あら父親に似た方が美人になると言わなくて?」
「そうなのかしら。まあ娘は良いわ、これからだし。それに引き換え、我が家のやんちゃ達と言ったら。どうしましょうリータ」
リータ、マルガリータであるところのトルベツコイ夫人は、「本当に、どうしましょうねえ」と微笑みは浮かべつつ困り顔で応じた。
2人の話だと、それぞれの男児、アレクサンドラより少し年下というくらいでもはや青年であったがカードに夢中になり、相当に負けが込んでいるようだという。
初めは理由を隠したまま親達へ無心して穴埋めしていたが、立て続いたことで親達が疑いの目を持ち、そのうち1人が息子の後を付けさせて事態が発覚したようだった。
不幸中の幸いだったのは、如何わしいところから金を借りようとしていたのを寸でのところで食い止められたことで、結局のところ膨れ上がった借金は親達が返済し、さて青年らをどう矯正するかという段階になっている。
青年らは貴族の子息であり、跡継ぎである者も何人も含まれていて、醜聞は消せなくとも以後は素行良好な一貴族として振る舞わなければ破滅である。
しかし彼らは皆、それほど金に不自由しない階級なこともあって、中にはあと一回で勝てたのにと不貞腐れ、あるいはしおらしさの陰で親達の目を掻い潜ってカードを繰る目論見を立てている者がいるようだという噂が親達の間に流れ、どうすれば改心させられるのかで日々頭を痛めている、そういう事情が彼女達から語られた。
アレクサンドラは、賭け事依存になる人がいることは知識として知っていたが、このように身近なところで、貴婦人方を悩ませる問題として存在していることに驚き呆れた。
子供というのはこのように親を悩ませるものなのだろうか、2人の夫人は微笑んではいるが内心は嵐だと思うと気の毒でたまらないでいると、T夫人が言葉を接いだ。
「ごめんなさいねお耳汚しを。オルロフ家では起こらないことですものね、ああ羨ましいわ」
「アーニャ、でも弟のところはその代わりに、代わりと言うのはどうかと思うけれど、ほら跡継ぎ問題が」
「ああ、そうだったわね……どこでも平穏な家はないものなのね……」
トルベツコイ夫人がアレクサンドラに向かって、
「でも、せめて娘はザハーリン夫人のような淑女に育って欲しいわ」
と笑いかけた。
夫人と親しくなっておきたいと機会を狙っていたアレクサンドラにとって、話しかけられたのは好機であったが、返答には窮した。
賭け事に興味を持たないという点では自信があったものの、公証で演じている醜態を思うと、とても他の模範となるような要素を持っていないと自覚があり、躊躇が彼女を引っ張った。
トルベツコイ夫人は「ねえソーニャ」と彼女の隣、アレクサンドラの反対側に母に隠れるようにして座っている娘に呼びかけた。
ソフィア嬢は、母夫人の陰からちらちらと顔を覗かせてアレクサンドラを見ていたが、目が合うと飛び上がるようにしてまた陰に隠れた。
こういう場合は年長である自分から話しかけるべきなのだろうが、伯母のJ公爵夫人の子は皆アレクサンドラより年上、叔父の一家とは疎遠で、周囲に小さな子がいた試しがなく、子供の扱いを彼女は体験として知らなかった。
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