立ちはだかるは魔獣の王から毒親まで⁉︎ 少年剣士と翼の少女と仲間たちの、絆と成長の物語 ー鋼魂戦記(こうごんせんき)ー

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キサラギの里編

第58章 キサラギの里の攻防2 乱戦

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「『インデックスバルカン』!」

ジェノが両手の指先から魂気弾を掃射し、ジグロ、ゲンジ、ウェルダンの3人に先制攻撃を仕掛けた。
連なる炸裂音と共に、白い火花が闇夜を照らす。

しかし、攻撃が届く前に、ゲンジの姿は闇に溶け込むように消える。空間転移の能力だった。
ウェルダンは俊敏なバネを生かして高く跳び、ジグロに至ってはジェノの攻撃をものともせず、正面から突っ込んで来た。

「ハッハァーー!痒いぞ痒いぞ!その程度か!」

「くそっ、なんてタフなヤツだ。」

「私に任せて下さい。『ライトニングボルト』!」

レイチェルもすかさず、『電撃魔法』を撃ち込む。

「ぬうっ⁉︎・・・こいつはいい、肩こりが治りそうだ!」

ジグロの巨体を青白い稲光が包み、一瞬だけ足を止めたものの、ダメージらしいダメージはなく、突進を止めることは出来なかった。

「ヤバい!皆、避けろ!」

メタルが叫ぶが早いか、3人は散り散りに跳び、辛うじてジグロの突進を逃れた。勢いそのままにジグロがなだれ込んだ巨木が、重い衝突音に続いて、引き裂かれるような音を立てて、根本から薙ぎ倒される。

「・・・!何という膂力!」

ジェノの額を冷たい汗が伝う。

しかし、難を逃れたのも束の間、空中に跳んでいたウェルダンの影に3人が気づいた時には、さらなる追撃が加えられていた。

「ホーッホホホホー!我が情熱の炎を見せて差し上げましょう。これが美です。『クリムゾンバースト』!」

重ねた掌から、灼熱のエネルギー波が放たれた。
味方であるはずのジグロもろとも巻き込んで、メタルたちを爆風が襲う。爆炎は辺りの森を飲み込み、燃え広がって行く。

「こいつら、メチャクチャだ!」

メタルとジェノは魂気で全身をガードして、爆風を凌ぎ、レイチェルも『結界魔法(リフレクション)』を張ることで、どうにか事なきを得ていた。

その時、立ちこめる煙の中からジグロの巨大な影が現れ、レイチェルを無造作に殴りつけた。

「きゃあ!」

自身に迫る攻撃に対して、半自動で展開される結界に守られ、直撃こそ免れたものの、レイチェルは拳の衝撃で茂みの奥へと吹き飛ばされてしまった。鈍い衝突音が響き、木々の揺れる音と共に、枝葉がバラバラと降り落ちる。

「レイチェル!」

「味方の心配をしている余裕などないぞ。」

景色の歪む気配。
メタルの背後に、空間転移で姿を消していたゲンジが現れ、おもむろにナイフを振るうと、斬撃状のエネルギー波が放たれた。

「ぐああ!」

咄嗟に魂気で身を守ったにも関わらず、身を切り裂かれ、メタルは苦悶の声を上げた。

ゲンジの特殊能力の1つ、『ディメンションクラック』の特性だった。彼の斬撃には、空間ごと対象を斬り裂く特性があり、攻撃をガードしても空間の断裂が、物質の特性を無視して、標的にダメージを与えるのだった。

「思い出したぞ、小僧。いつかの窮鼠の目をした野良のハンターか。多少は出来るようになったようだが、実力差は埋まらんよ。」

「・・・!何を、今度は負けない。『ソニックスラッシャー』!」

メタルが剣を振り抜き、魂気を纏った真空波の刃で応戦するが、ゲンジはまたもや闇の中に溶け込むように、空間転移で姿を消してしまう。

「くそっ!」

メタルは気を吐き、周囲を見回すが、ゲンジの姿を見つけることが出来ない。

一方、一度標的から距離をとり、闇の中に潜むゲンジは思案する。

「(里の忍どもではない魂気使いが来ている。軍属にせよ、ハンターにせよ、王国が里のオーバーテクノロジーに目をつけたと考えるべきか。ならば、プランBを仕込んでおくか。)」

懐から『パンドラの小箱』を取り出すと、中からメッセージバードを召喚する。戦闘力は皆無だが、人語を解し、飛翔速度には目を見張るものがある。伝令役として重宝するモンスターだ。ゲンジから何事かを囁かれたメッセージバードは、漆黒の空へと高く舞い上がり、西の空へと飛んで行った。

メッセージバードを見送ったゲンジは、視界を地上へと戻す。

「(ここはジグロたちに任せて、問題なさそうだ。オレは最短ルートで、標的の在処に向かうとするか。)」

視界の先に映る人里を眼に捉えると、不敵に口角を上げて再び闇の中へと姿を溶け込ませた。

一方、ジェノは、渾身の力を使って『カゲロウ』
を同時に4体造り出し、ウェルダンとジグロの双方に対して警戒を向けていた。
ただでさえ魂気の消耗が激しい傀儡を、4体同時召喚。レイチェルの戦線離脱により、やむを得ないとはいえ、負担は大きい。
心拍は跳ね上がり、全身が熱を帯びる。

「無理はいけませんねぇ。余裕のない姿は、美しくないですよ。ジグロ、ここは私に任せて、あなたはあの魔法使いもどきに、トドメを刺してくるのです。」

ウェルダンは、掌に灼熱の炎を纏わせ、自身の行手を阻むように立ち塞がる『カゲロウ』の一体に、掌底を撃ち込んだ。

「『サラマンダークロー』!」

その刹那、掌底を受けた『カゲロウ』が爆発し、森の闇を照らし上げた。

「ふおぉっ⁉︎」

爆風に巻き込まれたウェルダンが、身を仰け反らせる。まるで、ここだけは傷つけられたくないとばかりに、両腕で必死に顔面を隠し、爆風に晒されないようにしていた。

「お前たちこそオレたちを、鋼魂精鋭隊をなめるなよ!」

ジェノは残り3体の『カゲロウ』を、悠然と構えていたジグロへと差し向けた。

「いい歳して人形遊びが好きか、坊や?」

「悪いな、これは火遊びだ。」

余裕の笑みを浮かべて迎え討とうとしたジグロの至近距離で、カゲロウ3体を一斉に爆破した。

今宵一番の轟音と共に、凄まじい爆炎と火柱が上がり、ジグロの巨体を飲み込んだ。

「ナイスだジェノ!これなら流石に、あのデカブツも・・・。」

メタルがジェノの側に駆け寄る。
しかし、燃え盛る炎の中から現れたのは、ほとんどダメージもなく、涼しい顔をした仁王立ちのジグロの姿だった。

「ウソだろ⁉︎」

「化け物め・・・!」

メタルとジェノは、ジグロの難攻不落ぶりを目の当たりにし、戦慄した。


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