立ちはだかるは魔獣の王から毒親まで⁉︎ 少年剣士と翼の少女と仲間たちの、絆と成長の物語 ー鋼魂戦記(こうごんせんき)ー

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キサラギの里編

第68章 キサラギの里の攻防10 逆転

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「素晴らしい!このオレが!3人がかりとはいえ、押されている!ぬおおおぉぉぉ!!」

ジェノの魂気を上乗せし、出力を増したカオスフレアが、破壊の波動を押し戻し始めた。
岩石のごとく硬質化したジグロの体に、細かい亀裂が入る。敵もまた、限界まで力を搾り出している証拠だった。

しかし次の瞬間、レイチェルを強烈な頭痛と吐き気が襲う。視界は霞み、熱くなった全身からは滝のような汗。
他者の魂気を取り込んだことで、魂と肉体のハブである脳が拒絶反応を起こしていた。加えて、秘薬の副作用。

「(そんな・・・あと少しなのに、負けられないのに・・・)」

歯を食いしばり、出力を保とうとするが、体に力が入らない。視界が狭まり、鼻の奥から血の味が込み上げる。

「レイチェル!レイ、チェル・・・!」

彼女を鼓舞するティルもまた、秘薬の副作用で眩む意識を、必死に繋ぎ止めながら、翼の推進力をどうにか保っていた。
しかし、カオスフレアの出力がピークを過ぎてしまい、押し返され始める。

「流石に限界か。本当によくやったぞ、お前たちは。今日も死ぬには、良い日だった!」

勝利を確信したジグロが、惜しみない賛辞を送る。破壊の波動が、2人の少女を飲み込もうと迫っていた。

そんな様子を横目に、メタルはウェルダンの猛攻に耐えていた。
魔獣形態になったことで一段と力を増した、炎の爪を振り回し、咆哮は灼熱の衝撃波となって、メタルを襲った。

「(つ、強い!身を守るので精一杯だ。)」

森の木々に炎が燃え移り、視界を赤く染め始めていた。
敵の弱点を突こうにも、今は剣に取り込める氷もない。炎を取り込んでも、炎を使う敵には下手をしたら逆効果かもしれない。

「私のこの醜い姿を見たからには、生かしてはおかん!八つ裂きだ!火炙りだ!」

敵の恐るべき執念と勢いに、防戦一方だ。
このままじゃ、ティルたちももう保たない。

「(せめて、少しの間だけでも近くに行ければ・・・試したいことがあるのに!)」

メタルの頭には、ある考えが浮かんでいたが、ウェルダンの元を離れる余裕がない。せめて一瞬でも、隙が出来れば。

その時、風を切る音が耳を鳴らし、ウェルダンの背中に何かが突き刺さる。
それは、キサラギの忍たちの、魂気を帯びた手裏剣やクナイだった。
一撃目のジグロの『ファイナルインパクト』の衝撃で、散り散りに吹き飛ばされてしまっていたが、
数少ない生き残りが、満身創痍、駆けつけていた。

「・・・強大な敵を君たちのような若者に任せてしまって、すまない。我々も、この里を守る・・・!」

さらに。

燃え盛る木々を掻き分け突進してきた獰猛な影が、振り翳した刃をウェルダンの脇腹に突き立てた。森に生息していたキラーマンティスの中でも、特に大型で獰猛な一体。縄張りを荒らされて怒り狂い、すでに全身ボロボロになりながらも、最後の力を振り絞って突撃して来たのだ。

「この、下等生物どもが・・・!」

不意を突かれたウェルダンの攻撃の手が、一瞬緩む。

「今だ!『エナジーセイバー』出力全開!」

剣に渾身のオーラを込めて、メタルはウェルダンの胴体を、袈裟斬りする。
一撃では仕留められないまでも、その体を大きくのけ反らせた。

勢いそのままに身を翻し、メタルはティルとレイチェルの元へと走り出した。

「も、もうダメです・・・」

「私も、もう力が・・・」

ティルとレイチェルは、限界を迎え、破壊の波動が今にも2人を飲み込もうとしていた。
レイチェルのカオスフレアの光は、もはやかき消される寸前だった。

「まだだ!」

その最後の光を、メタルの剣が掬い取った。
刀身が明滅し、眩いばかりの極彩色の輝きを放つ。その周りを、黒い火花が俊敏なトカゲのように走る。

「出来た!『カオスセイバー』・・・ぐあああ⁉︎」

「メ、メタルさん⁉︎なんて無茶を!」

剣にカオスフレアを取り込んだメタルの全身に、激痛が走る。まるで、体中の血管に熱湯を注ぎ込まれたかのようだ。エネルギーが逆流し、体を蝕んでいる。
極一部の『魔導士』にしか使いこなせない、混沌の波動。炎や氷を取り込むのとは、やはり訳が違った。

それでも、故郷を、仲間を、家族を守りたいというみんなの気持ちを、繋がないわけには行かない。それは自分だって同じ。故郷に残る家族、さらに、仲間の顔が頭を駆け抜け、崩れ落ちそうになる体に檄を飛ばす。

剣を握る手に力を込めて、極彩色に輝く刃を、メタルは渾身の力で振り抜いた。

「・・・『カオスクラッシュ』!」

混沌の波動が地面を破りながら突き進み、目の前まで迫っていたジグロの『ファイルインパクト』を、一気に押し戻した。

「このオレが、敗れるか・・・!見事だぁ!」

衝撃波は、勝ちを確信していたジグロ、さらには、メタルに追撃を加えようと近づいて来ていたウェルダンをも飲み込み、闇夜の終わりを告げるかのように、高々と光の柱を上げた。

メタルたちは、皆、全ての力を使い果たし、体も限界を超えていた。息を切らし、倒れ込みそうになりながらも、最後に放った一撃の行方を見届けようとした。

やがて、地鳴りが収まり、立ち込めていた黒煙が晴れ渡る。

そこにあったのは、岩石の鎧を全て砕かれ、生身を露わに天を仰ぐジグロと、全身から硝煙を立ち上らせ、白目を剥い地面に伏す、ウェルダンの姿だった。

歓喜の叫びを上げる力すら残っていない。
それでも、全てを出し切ったという思いと、安堵が胸に湧き起こる。
いよいよ力が抜けて、背中から仰向けに倒れる。

見上げた空には、煌めく星々が、手鳴らしで彼らを讃えるかのように広がっていた。















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