立ちはだかるは魔獣の王から毒親まで⁉︎ 少年剣士と翼の少女と仲間たちの、絆と成長の物語 ー鋼魂戦記(こうごんせんき)ー

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キサラギの里編

第69章 キサラギの里の攻防11 もうひとつの決着

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キサラギの里から少し離れた、森の一角にある墓地では、特別強化機兵エプシロンと、精鋭隊S級戦士の1人、スカーフェイスが、攻防を続けていた。

エプシロンは、左腕を変形させた砲身の口をスカーフェイスに向け、斜線を細く絞った速射性重視の光線を撒き散らす。

「お前の攻撃方法は、完全に掌握した。現状の兵装で、十分に再現可能だ。」

「(こいつ、戦闘能力もさることながら、学習の速さが尋常じゃない。戦いが長引くほど、手札を見せるほど、こちらが不利になる。)」

スカーフェイスは、元は医者だったとは思えないほどの卓越した身のこなしと、黒衣に魂気を織り込んで防御膜とする『ディフェンスクローク』を駆使して、猛攻をいなし続けるが、徐々に被弾が増え始める。

「ぐっ・・・ぬっ・・・!」

光線に四肢の肉を削がれる度、焼き付けるような痛みが走り、苦悶の声が漏れる。自ずと顔が歪み、額からはドロリとした汗が滴る。

「(回避しているだけでは勝てない。攻撃に転じなければ。)」

一か八か、反撃に打って出るために『ディフェンスクローク』を解除し、『人魂流星群(ソウルファンネル)』を展開した。

彷徨う霊魂のような飛翔体が、スカーフェイスの周りを囲んだその時。

「攻撃に移行するタイミングは、予測済みだ。」

狙い澄ましたように強く地面を蹴り、一気に距離を詰めると、エプシロンは『エナジーサーベル』
を手にした右腕を振るい、光の刃で『人魂流星群(ソウルファンネル)』を軒並み叩き落としてしまった。

「!・・・まだまだ!」

残ったファンネルから光線を放ち、なおも反撃を試みるが、エプシロンが左腕をかざすと、攻撃の軌道を逸らされてしまった。

「お前の防御膜も解析済だ。それなりに便利そうだな。」

人工皮膚で形作られた、甘いマスクを歪めてニヒルに笑うと、前蹴りを腹部に叩き込んだ。

「が・・・!」

苦悶の声と、衝突音。
吹き飛ばされたスカーフェイスの体が、ガラガラ墓石を薙ぎ倒し、そのまま地面に崩れ落ちた。

「攻撃と防御の切り替えが必須。さらに、それだけダメージを負っても、自らを修復しようとする気配が無い。まさか、自分の回復が出来ないとはな。」

「・・・ほざけ。」

悠然と歩みを進めながら迫るエプシロンを、スカーフェイスは地面に手をつきながら、なおも睨め上げる。

「戦闘員としても、治療者としても中途半端。お前から得るものは、もうこれ以上無さそうだ。終わりにしよう。」

血の通わぬ冷たい瞳で見下ろし、エプシロンが『エナジーサーベル』を天に掲げた。

振り下ろされた刃が、残光を引いて闇夜もろとも標的を両断するかと思われたその時、エプシロンの動きが止まった。

「(腕が振り下ろせない。見えない何かに、動きを封じられている?解像度を上げて解析・・・これは・・・魂気の、繊維か!)」

動きを止めた右腕に、エプシロンが意識を向けたのは、時間にしてコンマ数秒の出来事だったが、
腕を振り解こうとした次の瞬間、繊維を伝って大量の魂気が撃ち込まれた。

「『女郎蜘蛛の一撃(ショックスパイダー)』」

炸裂音。
一等星のごとき眩さで、墓地が照らし出され、背後に人影が立つ。

気配を殺し、単身墓地へと忍び寄っていた、ジル・キサラギの姿だった。

「新手か、このオレが接近の気配に、気づけなかったというのか。」

エプシロンの右腕は、ジルの一撃で吹き飛ばされていた。肩口からは、金属の骨格や配線が露出し、火花と黒煙が立ち上がる。

「今日は、暴れっぱなしだからね。少しは忍らしいことをさせてもらったよ。獲物を刈ろうとする瞬間の墓荒らしは、隙だらけだったね。」

「ようやく首領のお出ましか。ここには、真っ先にお前が飛んでくると予想していたのだが、少し想定が狂ったな。」

「人間には、色々事情があるのさ。」

ジルは追撃を加えるべく、構えを取る。

「(少し遊び過ぎたか。手負いとは言え、S級戦士相当の手練れ2人が相手。こちらの損傷も差し引くと、勝率は50パーセントといったところか。)」

エプシロンが、双方の戦力と勝率の解析を行なっていたその時、森の別の一角で、一際大きな爆炎が上がった。

「(ジグロたちが進行してきた方角か。エクトプラズマー共の魔力が、消失している。信じ難いが、全員敗れたと考えるべきか。)」

視線は険しいままに、眼前のジルが一瞬、微かに口元に笑みを浮かべた。
ジルは、この時、戦況を悟らせないために、感情を表に出さないよう細心の注意を払っていた。
しかし、エプシロンの超越した観察眼は、彼女の胸の奥で湧き起こった情動の昂りがもたらした刹那の綻びを、捉えていた。
これは、味方の勝利を、確信している者の顔だ。

続いて、エプシロンは視線を西の空に向ける。
それは、ゲンジが解き放ったメッセージバードが飛んでいくのを、スカーフェイスとの戦闘中に横目で確かめた方角だった。

「(『プランB』の仕込みも進んでいるようだ。ここは、引き際と判断しよう。)」

エプシロンは、左手を砲身に変えると、夜空に向けて赤々とした眩い光弾を撃ち上げた。

「(信号弾?撤退するつもりか。)このまま帰すと思うのかい?仕置きの時間だ!」

ジルが指先を操り、魂気の繊維を目にも止まらぬ速さで振るった。

しかし、エプシロンが残された左手をかざすと、またもや攻撃が逸らされ、周囲の墓石や木々が甲高い音を立てて断裂された。

スカーフェイスから学習した『ディフェンスクローク』の応用だった。

「!!」

攻撃を弾かれたジルが、反撃を警戒して身を固めた刹那、巨大な影が星明かりを覆い隠す。
けたたましい咆哮を轟かせ、夜空に舞い上がったのは、ジグロの『ペット』の内の一体、飛竜ワイバーンだった。

エプシロンは地面を蹴り、高く舞い上がると、ワイバーンの背中に乗り、ジルとスカーフェイスを眼下に見下ろした。

「逃がすか・・・!」

よろめきながら起き上がったスカーフェイスが、対空砲火を行うべく、『人魂流星群(ソウルファンネル)』を繰り出そうとするが、ジルが手をかざして制止した。

「私の繊維を弾くとはね。不意打ちには成功したが、思った以上に手強そうだ。こちらも万全じゃあない。深追いは無用だ。」

忌々し気に、空から見下ろす怨敵を睨みつけた。

「お前たちの想定以上の足掻きに免じて、今日の所は引き上げよう。だが、次に会う時こそは、古びた人間の営みを、全て否定してやろう。」

エプシロンは、冷血な眼差しで言い残すと、飛竜の羽音を不穏に響かせながら、夜空の彼方へと消えていった。




















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