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強襲編
第71章 戦火のほとぼり
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キサラギの里を襲った惨禍から数日が経ち、里人たちは復興に向けて動き出していた。
里が所有しているオーバーテクノロジーは、結局、ガンダラ王国の国庫へと移され、軍の管理下に置かれることになった。
エクトプラズマーらの襲撃により、里を守っていた隠蔽の術式が失われ、さらに、戦闘員の多くも疲弊していた。そのため、再び襲撃に見舞われた場合には、里の武力だけではオーバーテクノロジーを守り切れないとの判断が下ったのだった。
その代わり、『見返り』として、軍から里には、復興支援の物資や資金が提供されることになっていた。
今回の襲撃で、里が被ったダメージは小さくない。オーバーテクノロジーを軍の管理下に置くことは、それを狙うドグマハート一味の目的を阻害し、かつ、軍の援助を受けることで、里の復興を早めるための、苦渋の決断だった。
犠牲になった戦闘員。
破壊された家屋と町並み。
里を守る隠蔽の術式の源だった、キサラギ本家の墓は、見る影もなく打ち砕かれてしまった。
軍から聞いた、首謀者の名前を反芻し、当主ジルは静かに誓う。
「ドグマハートとその一味、か。舐めた真似をしてくれる連中だ。キサラギの里の誇りを踏みにじった罪の重さ、今に思い知らせてやるよ。」
ひとり娘を再び送り出し、キサラギの秘薬の副作用をいち早く乗り越え、彼女の目には、今、当主としての責任感と矜持が赤く燃えていた。
一方、バンは、量産型機兵の残骸を見つめながら、眉を寄せていた。
ゲンジから受けた傷の痛みはまだ、戦の記憶と共に、体の奥深くに重く居座っている。それでも、機兵の体の造りや造形をつぶさに観察し、心の中でつぶやく。
「(この技術に、意匠のセンス・・・。そして、狙いは『古代超文明』の『オーバーテクノロジー』。まさか・・・あなたなのか、『ドグザ』
。)」
キサラギの里に身を置くよりも前の日々が、脳裏に蘇る。
・・・
人の手では本来生み出せない文明と技術の数々。
情熱を燃やし、明け暮れるは探求の道。
思想、議論、対立。
『我々は選ばれた存在なのだ。人を超越した存在として、凡俗を従えずして何とする。』
『確かにすごい技術ですが、これは本来、我々人間の力ではない。人々の役に立てるために研究するのであれば、賛成ですが、支配者を気取ることに、何の意味が何あるというのですか。』
砂の上に底上げして築かれた栄華の上で、口角泡を飛ばした。
やがて突然に訪れた『災厄』。
なす術もなく燃え崩れった楼閣。
どうにか落ち延び、たどり着いたこの地で出会った仲間、そして家族との日々。
・・・
「(もしも本当に彼が、支配者としてこの世界を否定しようとしているのならば、止めなければならない。)」
まだ確証は得られていない。
それでも、バンの目には仄かに、しかし、確かな温度を持った決意が立ち上がり始めていた。
・・・
メタル、ティル、レイチェル、ジェノの4人は、軍の医療施設に入院していた。
スカーフェイスの体力が回復次第、『リペアボディ』による治療を受けることになっていた。
ジェノは全身の骨を傷めているので、整復手術の後、治癒能力を施す予定だ。
メタルはジェノと同室で、安静にしている。
ティルとレイチェルは、キサラギの秘薬の副作用がまだ治まっていなかったが、峠は超えつつあった。副作用による高熱は、脳幹の機能が狂わされたことによるものであるため、スカーフェイスの能力の治療対象外となる。どうにか自力で乗り切るしかなかった。
「(すごい薬だけど、使い放題ってわけには行かないかな。)」
「(もう、2度と飲みたくないです・・・。あの味も、また飲み下せる気がしません・・・。)」
キサラギの里の決戦では、躊躇いなく秘薬を口にした2人も、副作用の苛烈さを身を以て経験し、今後の使い方には慎重になっていた。また、そもそも薬の製造に希少品であるオーバーテクノロジー『銀の歯車』を削り出した粉末を使うため、簡単に追加生産出来るものでもなかった。
スカーフェイスもまた、エプシロンとの戦いで負ったダメージを癒すべく、医療施設の一室で安静にしていた。
スカーフェイスの力には遠く及ばないまでも、医療スタッフの治癒能力と手当を受け、経過は良好だ。
「すまんな、医者の不養生とはこのことだ。」
「あまりムリしないで下さいよ。先生がいなくなっちゃったら、現場は大変なんですから。」
「皆にも負担をかけてしまっているな。動けるようになったら、すぐに戻る。」
治癒を施す妙齢の女性スタッフの視線には、尊敬と仄かな熱がこもっていたが、スカーフェイスはそれに気づく様子もなく、険しい顔で自らの四肢の感覚を確かめていた。
キラサギの里の変の後、ある者は己が受けた傷と向き合い、ある者は既にその先を見据え始めていた。
戦士たちの鼓動は確かに次の戦いへ向かっていた。
そしてーー、鋼魂精鋭隊のS級戦士達に、再び、国王からの招集がかかったのは、翌日のことであった。
里が所有しているオーバーテクノロジーは、結局、ガンダラ王国の国庫へと移され、軍の管理下に置かれることになった。
エクトプラズマーらの襲撃により、里を守っていた隠蔽の術式が失われ、さらに、戦闘員の多くも疲弊していた。そのため、再び襲撃に見舞われた場合には、里の武力だけではオーバーテクノロジーを守り切れないとの判断が下ったのだった。
その代わり、『見返り』として、軍から里には、復興支援の物資や資金が提供されることになっていた。
今回の襲撃で、里が被ったダメージは小さくない。オーバーテクノロジーを軍の管理下に置くことは、それを狙うドグマハート一味の目的を阻害し、かつ、軍の援助を受けることで、里の復興を早めるための、苦渋の決断だった。
犠牲になった戦闘員。
破壊された家屋と町並み。
里を守る隠蔽の術式の源だった、キサラギ本家の墓は、見る影もなく打ち砕かれてしまった。
軍から聞いた、首謀者の名前を反芻し、当主ジルは静かに誓う。
「ドグマハートとその一味、か。舐めた真似をしてくれる連中だ。キサラギの里の誇りを踏みにじった罪の重さ、今に思い知らせてやるよ。」
ひとり娘を再び送り出し、キサラギの秘薬の副作用をいち早く乗り越え、彼女の目には、今、当主としての責任感と矜持が赤く燃えていた。
一方、バンは、量産型機兵の残骸を見つめながら、眉を寄せていた。
ゲンジから受けた傷の痛みはまだ、戦の記憶と共に、体の奥深くに重く居座っている。それでも、機兵の体の造りや造形をつぶさに観察し、心の中でつぶやく。
「(この技術に、意匠のセンス・・・。そして、狙いは『古代超文明』の『オーバーテクノロジー』。まさか・・・あなたなのか、『ドグザ』
。)」
キサラギの里に身を置くよりも前の日々が、脳裏に蘇る。
・・・
人の手では本来生み出せない文明と技術の数々。
情熱を燃やし、明け暮れるは探求の道。
思想、議論、対立。
『我々は選ばれた存在なのだ。人を超越した存在として、凡俗を従えずして何とする。』
『確かにすごい技術ですが、これは本来、我々人間の力ではない。人々の役に立てるために研究するのであれば、賛成ですが、支配者を気取ることに、何の意味が何あるというのですか。』
砂の上に底上げして築かれた栄華の上で、口角泡を飛ばした。
やがて突然に訪れた『災厄』。
なす術もなく燃え崩れった楼閣。
どうにか落ち延び、たどり着いたこの地で出会った仲間、そして家族との日々。
・・・
「(もしも本当に彼が、支配者としてこの世界を否定しようとしているのならば、止めなければならない。)」
まだ確証は得られていない。
それでも、バンの目には仄かに、しかし、確かな温度を持った決意が立ち上がり始めていた。
・・・
メタル、ティル、レイチェル、ジェノの4人は、軍の医療施設に入院していた。
スカーフェイスの体力が回復次第、『リペアボディ』による治療を受けることになっていた。
ジェノは全身の骨を傷めているので、整復手術の後、治癒能力を施す予定だ。
メタルはジェノと同室で、安静にしている。
ティルとレイチェルは、キサラギの秘薬の副作用がまだ治まっていなかったが、峠は超えつつあった。副作用による高熱は、脳幹の機能が狂わされたことによるものであるため、スカーフェイスの能力の治療対象外となる。どうにか自力で乗り切るしかなかった。
「(すごい薬だけど、使い放題ってわけには行かないかな。)」
「(もう、2度と飲みたくないです・・・。あの味も、また飲み下せる気がしません・・・。)」
キサラギの里の決戦では、躊躇いなく秘薬を口にした2人も、副作用の苛烈さを身を以て経験し、今後の使い方には慎重になっていた。また、そもそも薬の製造に希少品であるオーバーテクノロジー『銀の歯車』を削り出した粉末を使うため、簡単に追加生産出来るものでもなかった。
スカーフェイスもまた、エプシロンとの戦いで負ったダメージを癒すべく、医療施設の一室で安静にしていた。
スカーフェイスの力には遠く及ばないまでも、医療スタッフの治癒能力と手当を受け、経過は良好だ。
「すまんな、医者の不養生とはこのことだ。」
「あまりムリしないで下さいよ。先生がいなくなっちゃったら、現場は大変なんですから。」
「皆にも負担をかけてしまっているな。動けるようになったら、すぐに戻る。」
治癒を施す妙齢の女性スタッフの視線には、尊敬と仄かな熱がこもっていたが、スカーフェイスはそれに気づく様子もなく、険しい顔で自らの四肢の感覚を確かめていた。
キラサギの里の変の後、ある者は己が受けた傷と向き合い、ある者は既にその先を見据え始めていた。
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