立ちはだかるは魔獣の王から毒親まで⁉︎ 少年剣士と翼の少女と仲間たちの、絆と成長の物語 ー鋼魂戦記(こうごんせんき)ー

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強襲編

第75章 野望の片鱗

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背後から現れたメイカは、通路に倒れている隊員2人に視線を下ろすと、何かを思いついたかのような怪しい笑みを浮かべ、思いがけない言葉を発した。

「どういうことだ、シェリー。これは、お前がやったのか?」

メイカの言葉がにわかに信じられず、シェリーは驚き呆れるが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

「そんなわけないだろう。メイカこそ何でここに?いや、それより2人を救護しないと。」

「芝居が下手だな、シェリー。血相を変えて謁見の間から出て行ったのが気になってね。部下に後をつけさせていたんだが、あろうことか繁華街に足を運んだ後、軍の保管庫があるこの施設に向かったというじゃないか。不審だと思ってね。」

「・・・いい趣味してるね。」

茫然自失としていたとは言え、尾行に気が付かなかった自分の不甲斐なさに、思わず舌を打つ。

「責任感が強いと言って欲しいね。
万が一ということがあってはと飛んできたら、この有様だ。秘薬のことも、納得していないようだったし、オーバーテクノロジーを独断で処分するつもりだったんじゃないのか?それともまさか、酔いにでも当てられたか?」

「何をバカな!そ、それに、今日は飲んでないよ。」

新入隊員だったころ、他の同期とは一線を画す実力を評価されて気が大きくなったことと、時折心に影を落とす痛みを紛らわせたいという思いで、酒気帯びで訓練に出てしまったことがあった。

・・・

『何を考えてるんだ、この馬鹿者めが!』

『ほ、ほら。大丈夫だよ、魂気で肝臓をブーストして・・・。ほら、もうシラフに戻ったから。』

『そういう問題じゃない。魂気の無駄遣いをするな!』

『やれやれ、しっかりしてくれよ?君には期待しているんだから。』

・・・

バルトスに大目玉を食らい、メイカに失笑された日のことを、まざまざと思い出す。


それに、気の迷いに駆られたとは言え、魔が差しかけていた自覚もあった。痛い所をつかれ、シェリーは少しばかり歯切れが悪くなる。

「どうだかな。お前には『前科』があるし、この状況をどう説明するつもりだ?」

メイカはここぞとばかりに、追い討ちをかける。

シェリーはゾッとした。
メイカのことは、時に野心的な言動や、立ち回りの狡猾さを感じることはあったが、それは自身の印象や行き過ぎた憶測に過ぎず、あくまで志を共にする同志だと信じて疑わなかった。
しかし・・・

「(この男は、私のことを、いや、精鋭隊の仲間のことを、『競争相手』だと思っているんだ。
利害が一致するうちは協力的だけど、隙あらば蹴落とし、淘汰することも厭わないとでもいうの?)」

今、メイカの顔には、攻撃者特有の愉悦すら滲んでいるではないか。
愕然としながらも、シェリーは努めて冷静に、倒れているダリオとエイトの救護を提案した。

「疑惑を持たれても仕方がない状況なのは、分かったよ。でも今は、2人を助けて、早くこのことを皆に知らせないと。」

急所を痛打されているので、予断は許さないだろうが、2人の意識が戻れば、犯人の正体も分かるかもしれない。

その時、メイカが凶悪な笑みを浮かべる。
一瞬、眼光が鋭くなると、微かに大気の震える気配が。それは、彼が何かをしたという確証につながるほどではない、ほんのわずかな揺らぎだった。しかし、次にシェリーが倒れた2人に視線を戻した時、彼らの生体反応が消失していた。
まるで、つい先ほどまでは灯っていた残り火が、音もなく吹き消されたように。

「(2人の生命反応が消えた⁉︎まさか、メイカが何か・・・。いや、確証は持てないけど・・・。もし、2人の口を封じたんだとしたら、そこまでして私を犯人にしたいというの⁉︎)」


「どうやら、2人は手遅れだったようだな。軍の保管物を毀損しようとしただけでなく、隊員の殺害。重罪だな。おとなしく投降してもらおう。さもなくば・・・」

貼り付けたような沈鬱な顔を一瞬だけ浮かべると、冷徹な眼差しを、シェリーに向けた。

「!」

「(ボクの見立てでは、ダリオとエイトは後頭部を砕かれ、脳にダメージを負っている。恐らくスカーフェイスの『リペアボディ』を受けても完全復活は難しい。ならば、戦えない戦士に、利用価値を見出してやろうじゃないか。)」

「さもなくば、どうだって言うんだい?これ以上、言いがかりをつけるなら、私も黙っていないよ。」

シェリーもメイカを真っ直ぐに睨み返す。
両者の間には、一触即発の空気が漂っていた。

「(いいぞ、シェリー。もっと挑発に乗って来い。恐らく、犯人は他にいるんだろうが、ここでお前が失脚してくれれば、先々のライバルが1人消えることになる。A級戦士2人の離脱はアクシデントだが、これはこれで好都合だ。)」

視線をぶつけ合い、互いの動向を探り合っていた。
それだけで、大気が鳴動するかのような圧力が、場を包んでいた。

しかし、不意にシェリーが臨戦体制を解き、両手を挙げた。

「分かった。軍の調査を受けるよ。ここであんたと争っても仕方ない。気が済むまで調べてくれていいよ。」

メイカの動向は確かに怪しい。
しかし、時系列的に少なくとも彼が2人を襲撃した犯人ということはなさそうだ。
それに、保管庫を開けるためには鍵を奪わなければいけない。
オーバーテクノロジーが無くなっていたとしても、シェリーにはそれを持ち出し、どこかに隠すような時間もなかったことは明らかだ。
ムキになっても事態は何も解決しない。身の潔白を証明するのが賢明だと考えた。

シェリーは、冷静さを取り戻していた。

「賢明な判断だな。(若気の至りで歯向かってくれた方が簡単だったが、流石にそこまで安い奴ではなかったか。まぁいい。身柄さえ押さえれば、白を黒で押し通す方法など、いくらでもある。)」

メイカは口元を怪しく上げながら、ゆっくりと頷いた。

両者は互いに矛を収め、シェリーは軍の調査を受けることになった。





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