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第一章Hello日本デース
1-10(金)変な英語デース
しおりを挟むリンダが来てから毎日がドタバタする日々を過ごしているけどだんだんと慣れてしまっている自分が恐ろしい。
「んはぁっ!」
「さあ仕上げデース!」
あれだけ用心したのに今朝もリンダに朝から襲われている。
ふにふにふにふにっ!
「くっ、はぁぁああああぁぁぁんッ!!」
思わずキラキラとしたフォーカスがかかって汗が飛び散り背景がピンク色になってしまう。
「ふうぃ~、いい汗流したデース」
「リ、リンダぁ~‥‥‥」
ぴくぴくしながら私はリンダに文句を言うけど何かをやり遂げたかのように額の汗を腕で拭うリンダは爽快そうな笑顔をして学校へ行く準備のため自分の部屋に戻る。
私はぐったりしながらいろいろと着替えるのだった。
* * * * *
「はぁ~」
「由紀恵ちゃんどうしたの?」
「い、いや、なんでもない‥‥‥」
休み時間に紫乃が私の所まで来て雑談をしている。
後ろの席のリンダはクラスのみんなに取り囲まれて楽しくおしゃべりしているけど完全にこのクラスに溶け込んでいる。
「あ、次の授業英語だっけ?」
紫乃とたわいない会話をしていると思いだしたかのようにそう言う。
私はちらっと教室の前に掲示されている時間表を見る。
確かに次の授業は英語だった。
既に予習はしているし特に問題はない。
と、チャイムが鳴って次の授業が始まる合図がする。
「ほら、席に着きなさい~。さあ授業を始めるわよ~」
チャイムとほぼ同時に英語の先生が教室に入って来た。
「OH-! マイガッ!!」
後ろでリンダが騒いでいる?
「どうしたのよ? 授業始まるわよ??」
「由紀恵大変デース、テキスト忘れたデース!!」
はぁ?
教科書忘れるとは何やってんのよ?
でもリンダなら英語の授業何てなんてことないのでは?
「英語の授業ならそんなに慌てなくても大丈夫じゃ無いの? 何かあったら私の見せてあげるわよ?」
「OH-! 助かりマース、日本の英語難しいデース!」
はぁ?
何言ってんだこの外人!?
あんたの母国語でしょ??
私はその時は気にもしないで授業を受け始めるのだった。
* * *
「はい次の所、長澤さん訳してみて」
「はい、えーと『私は昨日の夜初めてを知った』~」
「はいそうですね。過去形なのに現在進行形のように訳す所です。よくできました。次は‥‥‥ アンダーソンさんに日本語訳は難しいかな?」
「大丈夫デース! 由紀恵の続きしますデース!」
リンダはそう言って私の背中をよいちょいとつつく。
ああ、そうだった、教科書忘れてきたんだっけ?
私は付箋をつけて後ろの席のリンダに教科書を渡す。
「えーとデース。『それがし例えわが身が滅しようと貴女への募りし思いは変わらずこの身が~』‥‥‥」
「ちょ、ちょっとアンダーソンさん!? 今は古典の授業じゃなくてですね‥‥‥」
「でもこの英語古典デース。今はこんな古い言い回ししないデース。だから今の日本語訳すとこうなるデース!」
リンダはそう言ってにっこりと笑う。
そう言えば前にテレビでもそんな事をやっていたような。
確か現在文部省が推薦する英語の教科書はずっと以前からあったものがそのまま使われ続け、間違いでは無いものの英語圏の人間が日本で使われている英語を聞くとやたらと堅っ苦しかったり古すぎる言い回しで場合によっては理解できないとか笑ってしまうとか。
しかし受験やテストはこれでやってきているし、授業としてはこれでやっていくしかない。
「うーん、アンダーソンさんからそう言われるとそうなんだろうけど、とりあえず授業としてはこのマニュアルしか無いし‥‥‥」
きーんこーんかーこーん
先生が悩んでいたら授業の時間が終わった。
「うーん、とりあえず今日はここまでね。アンダーソンさんには悪いけど一応テキスト通りで行きましょう。口語はどんどんみんなに話しても良いからね」
先生逃げたな‥‥‥
しかしこれも仕方ない事。
逆に海外で教えられている日本語は今の私たちからするとだいぶ古い言い回しらしいし、言葉って流行り廃りあるもんね。
「ねね、リンダちゃん、じゃあさこう言うのは今なんて言うの!?」
「なんかわかりにくい言い回しでもかっこいいの使ってみたいね!」
「オーストラリアとアメリカでも表現違うって聞いたけど、そうなの?」
休み時間になったのでクラスの女の子たちが集まって来てリンダにあれやこれや聞いている。
今まで変な日本語と知識ですっかり忘れてたけどリンダはちゃんと外国人なのだ。
こうして英語で話しているリンダはやっぱり様になっている。
と、不意にリンダと視線が合う。
リンダはちょっと赤くなってあたしに話しかける。
「んー、由紀恵、I came into this world to meet you♡ デース!」
なんかとてもうれしそうに言ってくるけど何それ?
えーと、「この世界であなたに会いに来る」かな?
私がクエスチョンマークを頭の上に浮かべているとリンダはニヤリと笑って頷く。
「今のは私のSecretデース♡」
なんだか上機嫌なリンダ。
一体何なんだろうか?
分からずじまいの私は気にすることなく次の授業の準備をするのだった。
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