腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~

さいとう みさき

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第十三章:魔法学園の日々

13-27ヤリスの後宮

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 明日はティナの国に移動となるので、ガレント王国最後の日はヤリスの後宮とやらに行って見ることにした。


「凄いのよ、予定以上に内装も奇麗でそれこそ私の理想のお部屋になってるの!」

「いや、後宮って離れの隔離された建物なんじゃ……」

 生前に「大奥」とかってのを話で聞いたけど、男性禁止の女性だけの世界だとか。
 そう言えば中国にも昔に「紫禁城」ってのがあったらしいけど、同じような物だったらしい。
 要は時の権力者のお世継ぎを作るための施設。

 生前に見た小説とか漫画では凄いこと書かれてたよなぁ……

 そんな生前の知識を思いだしながらヤリスについて行く。


 と、廊下でヴォクシー殿下とばったり会ってしまった。


「これはこれはアニシス王女、それと美しいエルフのリルさんにルラさん。ごきげんよう」


 ヴォクシー殿下はそう言って胸に手を当て挨拶をしてくる。

「あらあらヴォクシー殿下、ごきげんようですわ」

 言いながらアニシス様もひざを折る簡易的な挨拶をする。
 私もルラも頭を下げてご挨拶。

「お、おはようございますヴォクシー殿下」

「おはようございま~す」

 ぺこりと頭を下げてからヴォクシー殿下を見ると、キラキラフォーカスを使いながら白いさわやかな歯を見せる。


 きら~ん☆


「皆さんそろってどちらへ? もしよろしければ私とテラスでお茶など如何ですか?」


 優雅にそう言ってアニシス様の手を取りキスをする。
 次いで私やルラの手にも同じくキスをするのだけど、思わず背筋がぞわぞわしてしまった。

 うん、こう言うの慣れない。

 
「お兄様、残念ですがリルもルラも私の後宮に行くんです、邪魔しないでください!」

「なっ!?」

 しかしヤリスが割り込んできてぴしゃりとそう言うとヴォクシー殿下は驚きに背景を真っ暗にして自身も真っ白になり雷を落す。


 かっ!
 ガラガラどっしゃ~んッ!! 


「ヤ、ヤリス今何と言った?」

「だ~か~ら~、リルもルラも私の後宮に行くの!」

「な、何と言う事だ! こんな可憐で美しいエルフの少女がヤリスに手籠めにされる何てっ!」


「いや、されませんから! ヤリスがそこ見せてくれるって言うから見に行くだけですから!!」


 なんか勝手に話がとんでもない方へと流れて行くので思わず突っ込みを入れてしまった。
 するとヴォクシー殿下はハタと気付いたように目をぱちくりさせてまた私の手を取る。


「ではリルさんはまだお相手が決まってないのですね? ガレント王国とエルフ族は友好を結んだ間柄、私とリルさんがもっと深い絆でつながっても問題無いですよね!」

「いや問題大有りです! 私エルフとしてはまだ成人を迎えていません!! 私が成人を迎える頃には皆さんお爺ちゃんになっちゃいますって!!」


 思わずそう言って手を引っ込めると、ヴォクシー殿下は驚きの表情で目をぱちくりしている。
 そして周りの人に目を配らせその真意を確かめる。

「お兄様、だからリルとルラに手を出しやダメって言ってるでしょう? この姉妹のいちゃ付く様は尊いのよ、もう見てるだけで、『むっはー!』なのよ!!」

「そうですわよ~同意を得なければ愛でていればいい。リルさんとルラさんの姉妹愛は尊いのですわぁ~」

 いや更に誤解をされるような事言わないでぇっ!!


「そ、そうだったのか…… ガレント王国の女性は皆胸が豊かでそのような女性ばかり紹介されてうんざりしていたのだ…… エルフの女性はひかえ目な方が多いので美しくスリムで可憐な様は私の憧れでもあったのだが…… リルさんとルラさん、今生は残念ですが次こそは私と共に…… それでは失礼する」


 ヴォクシー殿下はそう言ってふらふらと立ち去ってしまった。
 いや、一体何だったのだろう?


「はぁ~、お兄様の貧乳好きは相変わらずね。まあリルとルラはそこが可愛いんだけどね~」

「ヤリス、今サクッと酷い事言いましたよね?」


 駄目だガレント王家の人たち。
 この国本当に大丈夫なのだろうか?

 私は大きなため息を吐くしか無かったのだった。


 * * * * *


「ここが私の後宮! さぁさぁ、入って入って!」


 ヤリスに促されやってきたお部屋は王族のプライベート区で、許可が無ければ立ち入る事すら出来ない場所だった。
 その廊下の奥の方に一つの部屋があって、ヤリスの名前が扉には付けられていた。
 隣にはヴォクシー殿下の名前が張り付けられた部屋とか有るのでやっぱりそう言う場所なのだろう。
 まさかヴォクシー殿下、私たちをここへ入れるつもりだった??

 ぞっとしながらヤリスの後宮と言う部屋に入ると……


「いや、想像はしていたけど……」

 いきなりエルハイミさんの金ぴかの銅像があった。
 勿論その横にはシェルさんがしなっと寄りかかっている。
 
 そしてどピンク色に調色された数々の家具。
 あちらこちらにエルハイミさんグッズがあって、そこにメイドの人たちが忙しくお掃除やお片づけをしている。
 
「ね、ね、凄いでしょ! 私の部屋にあった秘蔵のコレクションで特にすごいのをここに持って来て、女の子たちと眺めたり愛でたりするの! あ、勿論あっちにはベッドもあるから疲れたら一緒に寝てね~」

 確かに調度品とか高級そうな奇麗なものが多い。
 後宮って言うからかなりあれかなと思ったけど、どちらかと言えばメンヘラなお部屋って感じ。


「ね、いいでしょう、私の後宮!」

「良いと言うか何と言うか、ヤリス後宮の意味知ってるんですか?」

「子作りする所でしょ?」


「ぶっ!」


 ストレートに言われて思わず吹く。
 いや、間違ってはいないのだけど……


「子作りするお部屋なの、お姉ちゃん?」

「ルラにはまだ早い! いいからこれあげるからあっち行って大人しくしていなさい!!」

 言いながらりんご飴をポーチから出してあっちへ行かせる。
 ルラは素直に喜んでりんご飴を手に取ってあっちのソファーに行く。


「あら、うらやましいですわね、りんご飴ですわ~」

「いや、アニシス様も知ってるでしょう? 後宮はお世継ぎの為に子作りするお部屋。私たち同性では子作りは出来ませんよ?」

 指をくわえてうらやましそうにルラを見るアニシス様にもりんご飴渡してそう言うと、アニシス様もヤリスも首をかしげる。


「私たちの始祖である女神様はティアナ姫の生まれ変わりと子を成し、それが私たちの祖先になっていますわよ?」

「女神様に手伝ってもらえれば女同士でも子作り出来るって女神信教でも言ってたし」


 いや、それ無理だから!
 あり得ないから!!
 それにいちいちエルハイミさんたちが手伝いになんか来ないでしょうに、あの人女神様で忙しいんだから!!


「って、そう言えばエルハイミさんたち『ジルの村』とかに行ったっきりだけど、どうなったんだろう?」

「『ジルの村』ですの? 女神様が直々に行っているのですの? と言う事はティアナ姫が覚醒したのはそこなのですわね!! もしかするとオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』をお使いになられるかもしれませんわ!!」

 ふと思い出し、私がそう言うとアニシス様が目を輝かせそう言う。

「オリジナルの、何ですか?」

「ティナの国にはティアナ姫専用のオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』があるのですわ! その昔女神様が手を加えたそれは伝説の『狂気の巨人』とも戦ったと言われてますわ。十体のオリジナルの中で最強を誇るそれは数代前のティアナ姫の願いでティナの国に封印されたままですの。でも必要となればまたその封印を解くやもしれませんわ! ああ、オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』、しかもティアナ姫専用は空さえ飛べたと言いますわ、あの女神殺し黒龍や赤竜とすら対等に戦えたという機体、是非とも見てみたいですわぁ」

 アニシス様がもの凄く興奮している。
 やはり「鋼鉄の鎧騎士」についてはアニシス様もかなり興味を持っているからそのティアナ姫ってのが覚醒したってのはかなりの事なんだ。

「でも、もう二年以上もエルハイミさんたちジルの村に行ったままですよ?」

「おかしいわね、もし覚醒したら天界に行くはずなのにね。あ、もしかしてまたティナの国かガレント王国、もしくは聖地ユーベルトに行くつもりなのかな?」

「そうすると今生のティアナ姫がおられる限り天界人が下界に住まわれることになりますわね。ああ、何と素晴らしい事でしょうですわ!!」

 え~。
 エルハイミさんたちが人の世界に住むって?
 なんかトラブルの匂いしか感じないなぁ、シェルさんもいるし。

 私がそんなこと思っているとヤリスがにっこりと聞いてくる。


「まあとにかく凄く良い部屋でしょ? ね、リルもルラもここに来ない? そして私の子供産むの! きっとかわいい子が生まれるわよ!!」

「だから、私たちはまだ成人してません! それに……まだあれも来てないし、二百歳位にならないと子供も産めない体なんですよ!」

「あ~、そうだった。じゃあこの部屋で一緒に女神様のすばらしさについて語りましょう!」

「遠慮しておきます!!」



 ななんかすごい部屋を想像していたけど、結局ヤリスの部屋を対外的に来客があった時に見てくれをよくするために「後宮」と言う名前で異物を移動させるのが目的だったとヴォルガ大臣にこっそりと聞いたときはヤリスに同情をしたものだった。

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