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第十三章:魔法学園の日々
13-28ティナの国に移動
しおりを挟む「それではお世話になりましたわ」
アニシス様はそう言ってヴォルガ大臣に挨拶をする。
ここガレント王国とティナの国には直接移動できるゲートがある。
通常は簡単には使えないものだけど、ちゃんとした手続きをすれば王族なら使える。
なのでアニシス様はお付きのサ・コーンさんとウ・コーンさん、それとスィーフの雌犬……もとい、お付きとなったミリンディアさんたちと、ガレント王国第一王女アイシス様と第四王女ヤリス、そして私とルラの大所帯で移動する事となった。
「ヤリス、それではアニシスに魔力供給しなさい」
「は、はい! アイシスお姉さまっ!!」
地が出た時にアイシス様もティナの国に遊びに行くと言い出し、断り切れずに一緒に行く事となった。
これだけの大所帯だと魔力も結構使うのでヤリスの魔力供給の補助が必要となる。
ヤリスは体をぼうっと輝かせて瞳を金色にし、ぴょこんとこめかみの上に左右に三つづつのトゲの様なくせっけを出す。
「それじゃぁアニシス様、魔力供給しますね」
「はい、お願いしますわ」
そう言って魔力供給をして私たちは一気にゲートを潜り抜けティナの国に行くのだった。
* * * * *
「着きましたわぁ~。皆さんティナの国にようこそですわ」
到着と同時に肌に感じる空気が涼しい。
ウェージム大陸の北の方、ノージム大陸に近いここは夏でも涼しいらしい。
夏季休暇中で行ったガレント王国も汗ばむほどではなかったけどちょっと動くと汗をかくぐらいには夏らしかった。
でもここティナの国はまるで軽井沢にでもいるような涼しさがあった。
「はぁ~やっぱりティナの国は涼しいわねぇ~」
「ほんとだね、なんか山の上みたい」
ヤリスもルラもすぐに肌に感じる気温の差に気付く。
「では皆さんこちらにどうぞですわ。話はもうついていますので、父上に謁見なんて面倒な事はしなくていいのですわ~」
ニコニコとしながらアニシス様はすたすたと歩き始める。
その後ろをサ・コーンさんとウ・コーンさんが付いて行き、アイシス様やヤリスもついて行く。
私とルラはスィーフの皆さんと顔を見合わせてから慌てて付いて行くのだった。
* * *
「ようこそ、ティナの国へ」
そう言って応接間で出迎えてくれたのは頭に耳があるお姉さんだった。
いや、よく見ると尻尾もある?
「アスベリア、ただいま戻りましたわ~。早速その尻尾をもふもふさせてくださいですわぁ~」
「アニシス様、やめなさい。皆さんの前でしょう? いつも言ってますよね、同意が無ければ手を出してはいけません!」
「ううぅ~、久しぶりだからいいではないですのぉ~」
ケモミミのお姉さんにぴしゃりと怒られているアニシス様、珍しく彼女に甘えているようにも見える。
なんかアニシス様が幼児退行しているような……
「お久しぶりですアスベリア殿。ティナ王家の方々はお元気ですか?」
「これはこれはアイシス殿下にヤリス殿下も。お久しぶりにございます。ティナの国の者はお陰様で皆元気にしておりますよ」
「そうですか、それは何より。して陛下は今は?」
「執務室におりますが」
「ではご挨拶に行かせていただきましょう。謁見は必要ないとアニシスが言っておりますが、挨拶くらいはさせていただかないと、これから数日御厄介になりますからね」
アイシス様はアスベリアさんと言うきつねっぽい人にそう言ってヤリスに持たせた荷物を差し出す。
「ガレント産のエールです。北の方には弱い酒やもしれませんが、出来はなかなかのものですよ」
「これはこれは、わざわざありがとうございます。そんな事はありませんよ、ガレントのエールは程よい苦みと喉をシュワシュワと流れる飲み心地が絶品、陛下たちもきっとお喜びになられます」
と、アイシス様がお土産を渡しているのを見て私も慌ててポーチからユカ父さんに渡されたお土産と手紙を引っ張り出す。
「あの、初めまして。エルフのリルと言います。こっちは双子の妹ルラです。この度はいきなりお邪魔させていただきありがとうございます。これ、ボヘーミャの学園長からのお土産と手紙です」
私はそう言ってアスベリアさんにお土産と手紙を差し出す。
「どうも初めまして。経済大臣をしていますアスベリアです。見てのとおり獣人族です。エルフ族の方がこのティナの国に来られるのは珍しい、歓迎いたしますよ」
そう言ってにっこりと笑ったくれる。
そして差し出したお土産と手紙を受け取りアニシス様に言う。
「お友達が来られるというのは聞いておりましたが、エルフの方が来ると言うのは初耳でした。アニシス様、もしやこの方たちは……」
「ええ、お話にあったエルフの双子の姉妹ですわ! もう二人とも凄いんですわよ! 何とかこの数日で私の部屋にとどまってもらうようアスベリアも手伝ってくださいですわ!!」
「はぁ~、ですから何度も言っているではありませんか、同意が無ければだめですしこのお二方が例の双子の姉妹であればそうもいきませんよ?」
なんか私たちの事でいろいろ言われているみたいなんですけど……
何となくヤリスを見ると視線を外された。
これって、王族筋では私たちの事がいろいろと知られている?
「とにかく、皆さん自分の家と思いくつろいでくださいですわ! あ、そうそうアスベリア、こちらスィーフから来た新しいお付きの方々ですわ、ミリンディアさん、エレノアさん、ハーミリアさん、クロアさんたちですわ!」
ニコニコ顔でスィーフの皆さんを紹介する。
するとアスベリアさんは大きくため息をついてから言う。
「皆さんが同意あっての事と理解しておりますが、我がティナの国は奴隷制度を禁止しております。あなた方の意思であるのならば何も言いませんが本当によろしいのですか?」
アスベリアさんはミリンディアさんたちにそう聞くとスィーフの皆さんは声を揃えて言う。
「「「「勿論です、アニシス様は私たちのご主人様です!!」」」」
頬を染め、見えない尻尾が大きく振られるのが感じられるほど喜んで答えるスィーフの雌犬……もとい、人達。
それを見てアスベリアさんはまたまた大きくため息をつく。
「アニシス様、同意を得ているのならいいのですが、アニシス様のお部屋にはもう何十人とアニシス様のご友人がいらっしゃいます。少し控えていただかないと……」
「何十人!?」
私は思わずアスベリアさんのその言葉に驚きの声を上げてしまった。
「アニシス様、前に来た時は数人だったはずなのに……」
隣のヤリスも思わずうなる。
いや、数人てだけでも問題なのに。
「いやですわぁ、ちゃんと約束して帰りたくなったらいつでも帰っていいですわよって言ってありますわよ? でも皆さんまだちゃんと私の部屋にいるのですわね? それでは早速部屋に戻って皆さんにもあいさつしなければなりませんわね、ああそうだ、ミリンディアさん、エレノアさん、ハーミリアさん、クロアさんも一緒に来てくださいですわ。皆さんに紹介いたしますわ」
上機嫌のアニシス様。
それを見てアイス様は言う。
「それでは私とヤリスは陛下にご挨拶に行かせてもらいます。アニシス、また後でね」
「はいはいですわぁ~ そうだ、リルさんとルラさんも一緒に私の部屋に来てくださいですわ。約束ですものね!」
満面の笑みでそう言うアニシス様。
私は頬に一筋の汗を流しながら言う。
「わ、分かってますけど、変な事はしないでくださよ?」
「勿論ですわ~、ではこちらへどうぞですわ~♪」
私たちは仕方なくアニシス様について魔境、「アニシス様のお部屋」とやらへ付いて行くのだった。
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