アルム~アラ40女子がいきなり異世界の第三王子に転生して無意識に無双してプチハーレム状態なんだけど、私はBL要素が見たいの!!~

さいとう みさき

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第四章:転移先で

4-35:ガルザイル出発

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「あれが連合軍の駐在所ですか……」

 
 私たちはなんやかんや言ってタフトと一緒に学園都市ボヘーミャに向かっていた。
 馬車でひと月弱もかかるらしい。
 しかもその間ほとんどがガレント王国領になる。

 ガレント王国は世界の穀物庫と言われるほど穀物の生産量が多い。
 その生産量は全世界のなんと六割にも及ぶと言われている。
 なので、ガレント王国からの穀物輸入をしなければ何処の国も基本自給自足が難しい。
 過去には自給自足を行っていた国もあるが、効率を考えるとガレント王国から穀物を輸入した方が断然いいという事になる。

 そしてそれだけの生産をするのだからこの国は豊かだ。
 毎年の収入に加え、各衛星都市は各衛星都市でいろいろと産業を持っている。
 私たちが途中立ち寄ったユーベルトの街などは典型的だ。
 あそこはマシンドールや「鋼鉄の鎧騎士」のパーツや、遊戯の品々の生産に特化している。
 この世界にもなぜか将棋やチェス、オセロと言ったボードゲームやカードが存在している。
 その遊戯のほとんどがそのユーベルト発祥というのだから、私同様に異世界転生して者がきっといるはずだ。
 だってどう考えたってあっちの世界の遊戯なんだもん。

 そんなことをぼんやり思っていたらマリーが窓の外を見ながらそんなことを言ってきた。


「連合軍?」


「はい、各国の軍隊が協力しあって有事の時はすぐに対応をする組織です。噂では特にジュメルに対してはその動きが活発と聞きます」

 そう言ってマリーはじっと郊外にあるその建物を見る。
 外から見る感じはまるでコロシアム。
 円形の建物に囲まれたっぽいそれはかなりの大きさだ。
 耳をすませば何か大きな音がしているので、もしかしたら「鋼鉄の鎧騎士」同士で訓練をしているのかもしれない。


「アルムは『鋼鉄の鎧騎士』に興味があるのかい?」

 私もマリーにつられてそれを見ていると、タフトがそう聞いてくる。

「いや、『鋼鉄の鎧騎士』ってなんか散々な目になったような気がしてね…… 覚えては無いのだけど、かかわりあいたくはないような気がするんだ」

「そうか? 『鋼鉄の鎧騎士』は魔道の集大成、僕はとても興味があるのだがな…… それに、我がガレント王国の宝物庫には十二体しか存在しないと言われるオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』があるんだよ! と、そういえばイザンカ王国にも一体あったはずだが……」

「ごめん、その辺の記憶もないんだ」


 うーん、何だろう?
 イザンカの「鋼鉄の鎧騎士」と聞いた瞬間女性の影がちらつくのは……


 なぜか心がざわつきながら私は視線をその先の街道へと移すのだった。


 * * * * *


「暇だぁ……」


 馬車で移動する事四日目。
 聞いてはいたけど街道の左右は地平線が見える畑が連なっていた。

 一毛作ではないようで、小麦を植えている隣で収穫をしているという風景にはちょっと驚かされた。
 生前の記憶でも、小麦って一年に一回しか収穫できなかった記憶がある。


「はははは、延々と小麦畑の連続だからね。まぁガレント王国では『麦は大地の恵み』と言われいつでも採れるからね、小麦で困ったことはないだろうね」

 タフトはそう言いながら魔導書に目を落とす。
 日中馬車の移動時にはこうして魔導書を読んでいる。
 そして休憩時の夕刻には軽く魔道や剣の鍛錬をして、夕食後に体を拭いて寝るという生活。
 たまに町や村があると宿屋に泊まれるけど、圧倒的に野宿が多い。

 そして移動時にはいつ終わるのかわからない畑を左右に変わらない風景にあくびが出てくる。
 そんなまどろみながらも、ふと気になってタフトに聞いてみる。


「でも、これだけの穀物が毎年手に入るんじゃ、他国も黙っていないんじゃないの?」

「だから『鋼鉄の鎧騎士』がいるんじゃないか。君の母国イザンカなどはそれ以外にも魔獣駆除に役立っているとは聞いたが、イージム大陸自体が異様に魔獣や魔物が多い。ドドス共和国への量産型の売却も本来それが目的だったはずなのだが…… すまなかった、戦争に勝てたとはいえ我がガレント王国によってアルムの国が大変なことになってしまった……」

 どうやらドドスと戦争になったことについてガレント王国の原因を言っているようだけど、私はその辺の記憶がないんだよなぁ~
 私は頭を下げるタフトに対して慌てて言う。

「いやいや、タフトのせいじゃなんだから。頭を下げないでよ。王族がそうそう簡単に頭を下げちゃまずいでしょうに」

「しかし、君は友人だ。友人に不利になるようなことをしたのだ、謝罪させてくれ」

 そう言ってもう一度頭を下げるタフト。
 誠実なところもあるのは分かるけど、やめて欲しい。

「わかった、わかったから頭を上げて! もう、そんなこと言われたって僕はその辺の記憶がごっそりと無いって言うのに……」

 いわれのないことで頭を下げられているようなものだ。
 実際には聞いた話の範疇では、確かに影響はあったろう。
 でも記憶にない事だし、戦争には勝利したようだし、もういいんじゃないかな?


「タフト、その辺にしておきなさいよ。アルム君も困ってるわよ?」

「しかしエル姉様……」

「はいはい、このお話はここまで。それよりこれやらない? 私はまだ一回もアルム君に勝ってないんだからね! さぁ、勝負よ!!」

 そう言ってエルさんはオセロのボードを開く。
 これって四隅を取った方が圧倒的に有利なんだけど、エルさんは目の前の利益ばかり追って、その辺に未だ気づいていない。
 言おうかどうか迷ったけど、意外とみんなこの辺を知らないので私は黙っておくことにした。

 そのうち気づくとは思うんだけどなぁ……


「とにかく、暇なら勝負よ! 今度こそはぁ!!」

「はいはい、わかりました。それじゃぁエルさんからどーぞ」



 私はそう言って、エルさん相手に退屈な馬車の旅をオセロで紛らわせるのだった。 

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