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兄の気持ち妹知らず、だがその逆も?
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私、紗那 月子には昔の記憶がない。
というのも、洗濯機の操作方法や授業内容といった比較的重要じゃない(重要だけど…)ことや、友達のことは覚えているのだが親戚や家族、つまり遠かれ近かれ血の繋がりがある人のこととその人たちとの思い出が全くないのだ。もちろん兄さんのことも。
私の記憶の始まりは今でも覚えている。
それは兄さんが何も覚えていない私に優しくしてくれたこと。しかし私はその優しさに甘え、何回も反発した。
しかし兄さんはそんな私を見捨てるどころか私が反発する前以上の愛情を持って私に接してくれた。
あの頃の私にとってどれだけ救いになったか。
そして私は今、その感謝するべき相手と気まずい感じになっている。
「兄さん、どこに行ったのかな…」
あの一件の後、兄さんは帰ってきたと思った途端にどこかへ出掛けてしまったのだ。
何故こうなったのか、これは遡ること数時間前。
「あーどうしたもんかなぁ…」
私はワシャワシャと頭をかきむしりガックリと項垂れる。
実は私にとってのとある記念日が近づいているのだ。
何故その日が記念日なのかは今は割愛するが、その日に私は兄さんにプレゼントをしようと思っているのだ。
「うーん…男の人って何で喜ぶのかなぁ」
私が悩んでいると、
「どどどどうしたの?しゃしゃしゃ紗那さん?な、悩み事ですか?もしよければそそそ相談にのりましょうきゃ?」
噛んだ…この男の子はクラスメイトの管田君。
別に管田君だから噛んだと言った訳ではない。
しかしすごく緊張している?どうしてだろう?
「あ、えーっと…」
管田君を巻き込むのは気が引けるけど…男の子の意見は貴重だし…。
「あのね管田君、実は…」
こうして相談にのってもらうことになったのだ。
結局迎えてしまった【とある記念日】。
あの後のことを管田君に話したらばれないようにこっそりとプレゼント選びを手伝ってくれた。
管田君にはまたお礼しないとな…。
「はぁ、いざとなると緊張してきたな…」
そう言えば管田君が言っていた、プレゼントは気持ちがこもっていれば良い。
「今日こそはちゃんと伝えるって決めたんだから…」管田君の言葉を思い出した私は覚悟を決めた。
「よ、よーしっ!」
パンパンッ
頬を叩いた。ジンとして痛い。やるんじゃなかった…。
コンコン
「に、兄さん。その…話があるの」
さぁ頑張らなきゃ、私。
「明日は古文の小テストだったな」
俺は教科書を開く。
・・・ダメだ、全然身に入らん…。
あの一件以来、全く授業が身に入らず、そのせいで復習もままならない。
「どうしたもんかなぁ…」
すると…
コンコン
扉をノックする音だ。
誰だろう…って家にいるのは俺と月子だけか。
「に、兄さん。その…話があるの」
話?何だろうか。
はっ!?まさかついに結婚の許可をもらいに?
それとも、もう子供がいるとかっ!?
待て、落ち着くんだ紗那 月刄。そもそも月子が選んだ相手だぞ?変なやつではないだろう。というか月子が幸せになるなら本望なんじゃないか?
うーむ…。
「いないの?兄さん?」
「あぁ月子、入っていいぞ?」
ガチャッ
悩んでも仕方がない、ここは大人な対応をば。
「つつつ月子?きょきょきょ今日はいいいい良い天気だな?」
「今日は雨だし…ってそうじゃない、聞いてほしいことがあるの」
「こ、心の準備が…」
「あの、その、ごめんなさいっ!」
「やっぱり子供がはなしでぇ…って、え?」
予想外の台詞に俺は拍子抜けしてしまう。
「兄さんには関係無いだなんてひどいこと言ってごめんなさい…ても本当に管田、あの子とはなんでもないの、ただ相談にのってもらってただけなの…」
「相談?それなら俺にしてくれても…」
「兄さんには相談できないことなの…」
相談できない?俺ってそんなに頼りない?
「実は、その…これっ」
そう言って突き出されたのは綺麗に包装された小振りな箱。
「これは?」
「あ、開けてみて」
ピリピリ
ちなみに俺はこういうのは丁寧に開ける派だ。
パカッ
中にはシルバーのペンダントが入っていた。
よく見るとペンダントトップは太陽を象っていた。
「今日が何の日か覚えてる?」
今日は六月二十五日。
「あ、アウクスブルク信仰告白が神聖ローマ皇帝カール五世に捧げられた日?」
「いや知らないよ…まぁ覚えてないのも当然か」
何の日?うーん…。
「アンサープリーズ…」
そう言うと月子はニコッと微笑んだ。それはまさしく天使のように。
天使の微笑み。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
「どうしようもなく路頭に迷って、居場所なんてないって言った私を、兄さんが初めて怒ってくれた」
居場所がないと思うなら自分で作れば良い。作れないんだったら、俺がなってやる。お前が変えるべき居場所に┃┃
居場所ってのは理屈じゃなくて、ただ心から楽しいと思える場所なんだと思う。まぁ俺の解釈が間違ってなければだけどな┃┃
頼りなくて不甲斐ない兄ちゃんだけどさ、お前を笑わせるくらいならできる┃┃
もう一人だなんて思うな、お前には俺がいる。兄ちゃんってのはそういうもんだと思う┃┃
泣きたいときには思いっきり泣けばいい。怒りたいときには思いっきり怒ればいい。だからこそ、笑いたいときには思いっきり笑え。お前は笑ってる顔が一番可愛いんだから┃┃
「いつも優しかった兄さんが、私を怒ってくれて嬉しかった。でも心が痛くて、でもやっぱり嬉しかった。だから今度は、ありがとう、兄さん」
「月子…」
月子が打ち明けてくれた気持ち。
こんなことは初めてだったかもしれない。
「こちらこそありがとうな」
「えへへ…どういたしまして」
「やっぱりその顔だな」
月子の満面の笑みを見て俺も笑ってしまう。
そう言えば相談にのったということは、あいつはプレゼント選びを手伝ったのだろうか…なんだか悪いことをしたな。
「謝りに行くとするかな…」
「お義兄さん、妹さんを僕にくださいっ!」
「やっぱり許さぁぁぁんっ!!」
前言撤回、悪いことはしてない。俺良い子。
というのも、洗濯機の操作方法や授業内容といった比較的重要じゃない(重要だけど…)ことや、友達のことは覚えているのだが親戚や家族、つまり遠かれ近かれ血の繋がりがある人のこととその人たちとの思い出が全くないのだ。もちろん兄さんのことも。
私の記憶の始まりは今でも覚えている。
それは兄さんが何も覚えていない私に優しくしてくれたこと。しかし私はその優しさに甘え、何回も反発した。
しかし兄さんはそんな私を見捨てるどころか私が反発する前以上の愛情を持って私に接してくれた。
あの頃の私にとってどれだけ救いになったか。
そして私は今、その感謝するべき相手と気まずい感じになっている。
「兄さん、どこに行ったのかな…」
あの一件の後、兄さんは帰ってきたと思った途端にどこかへ出掛けてしまったのだ。
何故こうなったのか、これは遡ること数時間前。
「あーどうしたもんかなぁ…」
私はワシャワシャと頭をかきむしりガックリと項垂れる。
実は私にとってのとある記念日が近づいているのだ。
何故その日が記念日なのかは今は割愛するが、その日に私は兄さんにプレゼントをしようと思っているのだ。
「うーん…男の人って何で喜ぶのかなぁ」
私が悩んでいると、
「どどどどうしたの?しゃしゃしゃ紗那さん?な、悩み事ですか?もしよければそそそ相談にのりましょうきゃ?」
噛んだ…この男の子はクラスメイトの管田君。
別に管田君だから噛んだと言った訳ではない。
しかしすごく緊張している?どうしてだろう?
「あ、えーっと…」
管田君を巻き込むのは気が引けるけど…男の子の意見は貴重だし…。
「あのね管田君、実は…」
こうして相談にのってもらうことになったのだ。
結局迎えてしまった【とある記念日】。
あの後のことを管田君に話したらばれないようにこっそりとプレゼント選びを手伝ってくれた。
管田君にはまたお礼しないとな…。
「はぁ、いざとなると緊張してきたな…」
そう言えば管田君が言っていた、プレゼントは気持ちがこもっていれば良い。
「今日こそはちゃんと伝えるって決めたんだから…」管田君の言葉を思い出した私は覚悟を決めた。
「よ、よーしっ!」
パンパンッ
頬を叩いた。ジンとして痛い。やるんじゃなかった…。
コンコン
「に、兄さん。その…話があるの」
さぁ頑張らなきゃ、私。
「明日は古文の小テストだったな」
俺は教科書を開く。
・・・ダメだ、全然身に入らん…。
あの一件以来、全く授業が身に入らず、そのせいで復習もままならない。
「どうしたもんかなぁ…」
すると…
コンコン
扉をノックする音だ。
誰だろう…って家にいるのは俺と月子だけか。
「に、兄さん。その…話があるの」
話?何だろうか。
はっ!?まさかついに結婚の許可をもらいに?
それとも、もう子供がいるとかっ!?
待て、落ち着くんだ紗那 月刄。そもそも月子が選んだ相手だぞ?変なやつではないだろう。というか月子が幸せになるなら本望なんじゃないか?
うーむ…。
「いないの?兄さん?」
「あぁ月子、入っていいぞ?」
ガチャッ
悩んでも仕方がない、ここは大人な対応をば。
「つつつ月子?きょきょきょ今日はいいいい良い天気だな?」
「今日は雨だし…ってそうじゃない、聞いてほしいことがあるの」
「こ、心の準備が…」
「あの、その、ごめんなさいっ!」
「やっぱり子供がはなしでぇ…って、え?」
予想外の台詞に俺は拍子抜けしてしまう。
「兄さんには関係無いだなんてひどいこと言ってごめんなさい…ても本当に管田、あの子とはなんでもないの、ただ相談にのってもらってただけなの…」
「相談?それなら俺にしてくれても…」
「兄さんには相談できないことなの…」
相談できない?俺ってそんなに頼りない?
「実は、その…これっ」
そう言って突き出されたのは綺麗に包装された小振りな箱。
「これは?」
「あ、開けてみて」
ピリピリ
ちなみに俺はこういうのは丁寧に開ける派だ。
パカッ
中にはシルバーのペンダントが入っていた。
よく見るとペンダントトップは太陽を象っていた。
「今日が何の日か覚えてる?」
今日は六月二十五日。
「あ、アウクスブルク信仰告白が神聖ローマ皇帝カール五世に捧げられた日?」
「いや知らないよ…まぁ覚えてないのも当然か」
何の日?うーん…。
「アンサープリーズ…」
そう言うと月子はニコッと微笑んだ。それはまさしく天使のように。
天使の微笑み。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
「どうしようもなく路頭に迷って、居場所なんてないって言った私を、兄さんが初めて怒ってくれた」
居場所がないと思うなら自分で作れば良い。作れないんだったら、俺がなってやる。お前が変えるべき居場所に┃┃
居場所ってのは理屈じゃなくて、ただ心から楽しいと思える場所なんだと思う。まぁ俺の解釈が間違ってなければだけどな┃┃
頼りなくて不甲斐ない兄ちゃんだけどさ、お前を笑わせるくらいならできる┃┃
もう一人だなんて思うな、お前には俺がいる。兄ちゃんってのはそういうもんだと思う┃┃
泣きたいときには思いっきり泣けばいい。怒りたいときには思いっきり怒ればいい。だからこそ、笑いたいときには思いっきり笑え。お前は笑ってる顔が一番可愛いんだから┃┃
「いつも優しかった兄さんが、私を怒ってくれて嬉しかった。でも心が痛くて、でもやっぱり嬉しかった。だから今度は、ありがとう、兄さん」
「月子…」
月子が打ち明けてくれた気持ち。
こんなことは初めてだったかもしれない。
「こちらこそありがとうな」
「えへへ…どういたしまして」
「やっぱりその顔だな」
月子の満面の笑みを見て俺も笑ってしまう。
そう言えば相談にのったということは、あいつはプレゼント選びを手伝ったのだろうか…なんだか悪いことをしたな。
「謝りに行くとするかな…」
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前言撤回、悪いことはしてない。俺良い子。
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