死を視る俺と異能力者達

青薔薇

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満室の夏 プール編続

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蝉という生き物ははっきりいって五月蝿い。八月蝉いと書いても間違っていないように。
しかし蝉も蝉なりに頑張っているのだ。
一週間という短い猶予の中で地上で精一杯声を出し、運命の相手を見つけ子孫を残す。それこそ命懸けで。
それはわかっている。それはわかっているだが…。



「暑い…」
これで何度目だろうか、この言葉を今日一日で発した回数は。
俺達は今プールに入るべく準備運動をしている。
・・・十分近くも…。
「あのー萌木先輩…準備運動まだやるんですか?」
するとアキレス腱伸ばし(十三回目)をやっている萌木先輩が俺の方を向いた。
「え、えぇ…準備運動は大切ですからね。万が一、なんてことがあったら取り返しがつきませんからね」
うん、それはわかってる。
ものすごく正論だし、俺も実際そう思っている
だが、ここまでやる必要は無いだろうっ!?
そんなにもあのピチピチの水着でプールに入りたくないのだろうか?
「あのーそろそろ入りません?いやなら私達だけでも先に入ってきましょうか?」
流石に真白ちゃんもしびれを切らしたようだ。
まぁ…無理もない。
「え?あ、ちょっと待ってくださいよ!」
プールへと向かっていったみんなを半泣きな萌木先輩が追っていった。
最近萌木先輩サービス精神豊富だな…なんて思う俺だった。
「せんぱぁーい、早く行きますよー」
「あぁ、うん!」

「せ、せせせ先輩!絶対に離さないでくださいね!!」
そういえばこの娘、運動神経皆無だったや…。
しかし俺の体から離れようとしない真白ちゃん。そうなると必然と体が密着するわけで…やっぱり女の子の体って、柔らかいんだな…。
絶対に口には出さないけど。
プールで震えてる後輩をよそに他の場所に目を向けてみる。
「…っとあれは萌木先輩か?」
まぁ疑問形ではなく確定なのだが…。
「流石だなぁ」
ついつい感嘆の声を上げてしまう俺、しかしそれは無理もない。
なにしろさっきまであんなにも恥ずかしがっていたのが、今じゃ猛スピードで泳いでいるのだ。
「ほら見ろ真白ちゃん、あれを見習うんだ」
「あんなにも速く泳げませんよぉ…」
・・・たしかに…正直俺が本気出してもドッコイドッコイの速さだ。
「いやー萌木の化物っぷりに魅入っているのは構わないがねお二人さん、そろそろ離れないと保護者としても口を出さなければいけなくなるかもよ?」
冴華さんがヌッと水の中から出てきた。
怖っ…。
「保護者として?」
真白ちゃんはそう呟くと自分の体を見るべく視線を落とした。
「あ…す、すいません!!」
真白ちゃんは叫ぶと共に俺から遠のいた。
「わわっ!」
ブクブクブク…
「あ、沈んだ…」
てかここ普通に足つくぞ?どうやって沈んだのだろうか…?
流石に可哀想だったので引き揚げた。
「鼻に水…頭が…」
再び俺に密着しながら頭を押さえる真白ちゃん。
「別にやましい事は考えないからしばらく俺に掴まってなよ」
「ううっ…ありがどうございばず…」
すごく鼻声だ。
しかしやましい事は考えない、か…。
・・・ちょっと無理そうだな。



「勝ったー」
「ゲホッゴホッ!!」
負けた。雅に泳ぎで。
息を切らした俺に対してけろりとした様子の雅。
しかしそれもそのはず…。
「ズルイぞ…能力を使うなんて…」
「えへへ…バレてた?」
テヘッと舌を出す雅。何かキャラちがくないか?
「だってそうでもしないと勝てないし。まぁでも勝ったことには変わりないし」
「・・・たしかにルールは決めてなかったな…」
「ビクトリー!」
夏はここまで人を変えてしまうものなのか…。
「ていうか能力なしにも結構速かったな」
「まぁ一応水泳習ってたしね。小さい頃だけど」
「それは意外だな…根っからインドアな習い事をしてそうだけど」
「先入観だけで人を判断したらダメだよ?」
「ホントそれを思い知らされたよ」
そう言いながら頭に手を当てる俺だった。

「紗那~」
「げ、冴華さん…」
「おいおい、化け物を見たような反応はやめたまえ。純情な乙女心が傷付くだろう」
「あーはいはい…んで?何か用ですか?」
すると冴華さんはブルーシートの上に背を向けに寝転がった。
「喜べー青少年。特別に日焼け止めを塗らせてやろう」
「却下です。さようなら」
「待て待て待て!何故そう無下に断れる。あ、もしかして恥ずかしいとか?安心しろ、私とお前の仲ではないか」
「・・・知ってます?セクハラって女→男でも成立するんですよ?」
「な、セクハラというかっ!?なー頼むよー」
「そこら辺の男の人にでも頼めばやってくれるでしょうに…男も捕まえれて一石二鳥ですよ?」
「むー…上司命令だ」
「パワハラだっ!!」
「いいじゃないか」
あまりにしつこいのでめんどくさくなってしまった俺は…。
「あーわかりましたよ…」
「素直なのは良い事だぞ♪」
・・・
びゅるる!
「ん、もっと…」
「ここがいいんですか?」
びゅびゅっ!
「すごく…苦い…」
「・・・あのちょっと静かにしてもらえますか?」
「だって口に入ったんだもーん」
「それは謝りますけど出来ればノーリアクションでお願いします」
「ちぇー」
まったく…子どもかこの人は…。



俺達は再びバスに揺られている。
傾いた夕陽が車内をオレンジ色に染めている。
「いやー今日は楽しかったですね」
「えぇ、時間を忘れても遊んでしまいました」
「わ、私は蹴伸びができるようになりました」
少し恥ずかしそうに言う萌木先輩と自信満々に言う真白ちゃん。
いや真白ちゃんはもう少し頑張った方がいいと思うけど…。
「さてここで問題、明日からどう遊ぶ?」
「なに保護者が真っ先に遊ぼうとしてるんですか…」
「まぁそう言うなって紗那、実はいい案があるのだけれど、みんな聞くか?」
「冴華さんのいい案って…」
と俺。
「良くない案という前触れなのでは?」
と真白ちゃん。
「ということで聞かない方向で…」
と萌木先輩。
「みんなして大人をいじめるな!だったら勝手に言ってやる!」
涙目で訴える冴華さん。とても大人とは思えんな…。
「実は合宿に行こうと思ってな」
「へぇ…冴華さんにしてはマトモなような…して、その合宿の訳は?」
「ん?ただみんなの絆を深めようと思っただけだが?」
「マトモだ…」
「明日は雪…?」
「そんなに私がマトモじゃないか!?」
「まぁまぁ…で一体どこに合宿に行くんですか?」
みんなをあやした俺は冴華さんに問う。
「ん?あぁ…夜杜神やとがみ村、という田舎村なんだけどな…」

はっきり言って、それはからの冴華さんの言葉は聞こえてはいなかった。
俺の頭の中にはただ、夜兎神村という単語が小玉していた。
そしてそれと共に、今年の夏は何だかとても暑くなりそうだ、そう感じていた。




…………………………………………………………………………………………………

あとがき(仮)

《死を視る俺と異能力者達》を分割して読んでいただいているありがたい方はお久しぶりです。一気にまとめて読んでいただいたありがたい方は初めまして。
夏が終わった直後に夏が題材のギャルゲーをプレイしてとてつもなく心に傷を負ってしまう青薔薇という者です。

ではまずは謝辞から。えっと、あの…すいませんでしたぁぁっ!!
最新話の更新がとてつもなく遅くなってしまったことについて、もう、ホント…言葉がありません…。
これからは少しでも頑張っていきますので、よろしくお願い致します…いやホント…。
あと前章のあとがき(仮)によく分からない台詞が載っていたことを付け加えて謝罪いたします…。

っと謝罪ばかりでは華がないので、少しばかり次回予告をば。
えー次の話からは合宿編なのですが、ハッキリ言うと過去編に入っていきます。まだ明かされていなかった月刄と月子の過去、楽しみにしていただけると幸いです。

最後に、お気に入り登録をしていただいた方々、この作品を読んでいただいた方々に、銀河級の感謝を述べたいと思いますっ!!
もちろん感想も待っております(泣)
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