歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

文字の大きさ
51 / 155

魔王の軍議

しおりを挟む
「良く来たな。まぁ座って楽にしてくれ」
 
 後日、魔王の部屋に再び訪れると、昨日とは打って変わってテーブルの上には地図が広げられており、各部隊の指揮官らしき者達も並んでいた。
 さながら、軍議の様相であった。
 因みにそこには、ジョバンニもいた。
 
「さて、全員そろった所で軍議を始めよう。まずは、オラグール、各兵器の状況は?」
「は」
 
 すると、オークの男が喋り始める。
 ということは兵器部門担当なのだろう。
 
「各兵器、すべて異常ありません。また、輸送隊の報告によると、後数日で魔王都より兵器が複数送られてくるとのことです。敵の攻撃で多少破損しても、即座に補填は効きます」
「うむ。兵器部門は本当によくやってくれている。次にアンドゥル。各部隊、兵員以上は無いな?」
 
 次は犬型の魔物、いや魔族であるアンドゥルと呼ばれたコボルトが喋り始める。
 ということは恐らくだが自衛隊でいう当直のような何かなのだろう。
 自衛隊では、当直が人員の欠員や怪我などをほうこくしていたという。
 彼もそれなのだろう。
 
「は! 体調不良者もおりません! 欠員無しです!」
「うむ。総勢一万の兵員の管理をアンドゥルもよくやってくれているな。本当に助かってるぞ」
「は! ありがたきお言葉!」
 
 サティスは一人一人に褒め言葉を贈っている。
 指揮官から送られるそういった言葉は非常に励みになるものだ。
 
「じゃあ、次に糧食班長、テムン。備蓄は問題無いな?」

 すると、今度はゴブリンが答えた。
 成る程。
 彼女が一々名前を呼んでいるのは紹介も兼ねているのか。

「へい! 備蓄も勿論、各兵の手持ちの糧食も抜かりありません! 輸送隊も次々と届けてくれるおかげでなんとかなってます!」
「うん。ご苦労。糧食は士気に関わる大事な分野だ。その調子で頼む」
「へい!」
 
 ゴブリンのテムンは元気よく答える。
 すると、リザードマンが手を挙げた。
 
「魔王様……ご報告が」
「なんだ? 要塞管理のカーダか、遠慮せずに言え」
「は。実は要塞内の一部が老朽化により崩落。幸いにも入り組んでおりますので孤立したりはないのですが、一部の道が使えず、不便を強いられております。補修作業にかかりたいのですが私の手の者の数では少し心細く、人員の派遣をお願いしたいです」
 
 すると、サティスは笑顔で頷く。
 
「うむ。勿論だ。お前達は補修作業や改修作業等があるからな。手が回らないのも仕方がない。だが老朽化により崩落したという事は他の箇所もその可能性がある。点検は怠らないようにな?」
「は!」
「うむ。報告ありがとう。皆も何かあれば臆すること無く意見してくれ! 可能であれば対処するぞ!」
 
 成る程。
 彼女がまだまだ若いのに魔王として君臨出来ている理由が理解出来た。
 彼女は若いが故に、自分が未熟であると理解し、周りの意見を聞き入れてきたのだ。
 血筋で選ばれた魔王の座。
 その使命感からか、非常によくやっている。
 ……というか、見た目は若いが、実際どうなんだろうか……。
 
「佐切。異世界人であるお前から見て、何か意見できる事は無いか? 何かあれば申すが良い」
「……そうですね……」
 
 ならば、一つ気になっていた事がある。
 
「実は、搦手砦で魔王軍を指揮した際、非常に不便に感じた事が」
「ほう……それは?」
 
 臆することは無いと言った。
 ならば、意見させてもらおう。
 
「通常の軍の編成がどうかは知りませんが、搦手に派遣された軍の編成が他種族の混成軍でした」
「……それが?」
 
 サティスはそれがどうかしたのかと言うかのように答えた。
 やはり、それが普通なのか。
 
「はい。魔王軍には多種多様な種族がおります。機動力に優れたケンタウロス族、夜目に優れた者や小さく小回りの利く者、体が大きく、体力の優れた者。これらの種族が混ざり合って軍を編成することであらゆる事態に対処できますが、問題もある」
「ふむ……」
「それは、機動力です」
 
 皆、静かにこちらの話を聞いている。
 
「この編成のままでは、軍は一番足の遅い種族に合わせて動かねばならない。なので、自分からは軍編成の見直しを提案致します」
 
 軍編成の見直し。
 これが俺の初仕事、か。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...