歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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流れ矢

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「ジョバンニ! 入るぞ!」
「魔王様。どうなさいましたか?」
 
 サティスは勢い良く戸を開け、ジョバンニさんのいる部屋へ入る。
 もしかしたら二人が良い雰囲気になっているかもしれないというのに……。
 いや、魔王なのだからその当たりは別に良いのか。
 そこは個人の人柄の問題で、魔王なのだからこの扉を開けること事態は何の問題も無い。
 
「佐切から話を聞いてな! どうなってるのか見に来た!」
「ってちょっと!?」
 
 前言撤回。
 この上司、暴走したら何するか分からん。
 到達に売られてしまった。
 
「そうですか。彼女はあれ以降特に何も話してくれませんね」
「……そうか……」
 
 ロームは椅子に縛り付けられており、俯いていた。
 そしてあまり進展していない様子に、サティスは肩を落とす。
 そしてジョバンニも俺が告げ口したことについて特に何も思っていないようであった。
 しかし、少し気になったので聞いてみよう。
 
「……ジョバンニさん。俺がサティスに状況を説明したの……不味かったですかね?」
「……ふむ……」
 
 ジョバンニさんは少し考えた後、笑顔で返す。
 その妙な間が怖い。
 
「いえ、何も問題はありません。ただ……」
 
 やはり注意されるか……。
 仕方が無い。
 甘んじて受けよう。
 
「佐切殿は、魔王様の事を呼び捨てしているのですね」
「……あぁ……さっきの間はそういう……」
 
 予想外の返しに少し驚いたが、誤解の無いように説明しておこう。
 
「それは戦闘前にサティスからお願いされた事で、近しい者に畏まられると正しい意見とかが伝わらないとかって理由で敬語は無し、と言われたので」
「成る程……私はてっきりお二人の仲がよろしくなったのかと思いましたが。フィアナ嬢やレナ殿もいる中随分と……と、勝手に思ってました」
 
 ジョバンニはやはり笑顔で言う。
 なんとなく嫌がらせか、何か含みがあるようにも聞こえるが、やはりサティスに告げ口した件、多少気にしているようだ。
 
「いやいや、相手は魔王様。いくら何でもあり得ませんよ。あの二人もどちらかと言うと保護者のような……見守る側の視点で見ているのでそういうふうに発展する事はあり得ませんよ」
 
 笑いながらそう答える。
 が、ジョバンニは笑っておらず、サティスの方を見ていた。
 
「……ん?」
 
 それが気になったので、そちらを見ると、明らかにサティスが肩を落としていた。
 
「……成る程……あ」
 
 今度はジョバンニが扉の方へ視線をやり、そこで止まる。
 
「……」
「……」
 
 そこにはフィアナとレナがおり、部屋に入ってこようとしていた所で完全に動きを止めていた。
 二人はまるで何かに絶望したかのような顔をしていた。
 
「……成る程、私のせいで予期せぬ流れ矢が飛んだようだ」
 
 流れ矢……成る程、流れ弾か。
 銃のないこの世界では流れ弾ではなく流れ矢というのか。
 というかジョバンニさんは何かを理解したようだが、まるでわからない。
 
「佐切殿……貴方は軍略よりも学ぶべきものがあるようだ……」
「……はぁ……」
 
 やはり良くわからない。
 ジョバンニさんは俺に何かを気づかせようとしているようだが……難しいな。
 
「……ねぇ、捕虜の前で何してるの? 暇なの?」
 
 すると、椅子に縛り付けられていたロームが声を上げた。
 存在をすっかり忘れていた。
 
「……何も話すつもりなかったけど、アホすぎて声かけちゃったじゃない」
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