おにぎり日常

赤花雪夜

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おにぎり六個

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    あれから一ヶ月。早くもあり遅くもある日常。
     僕は順風満帆に生活している。
     一ヶ月前に始めたアルバイトは忙しいと言うあれは無くまた、暇と言うのも無かった。
    シフトは主に平日の夕方から七時まで、休日はお昼から七時迄で基本短く僕的にも気が楽だった。お店の鍵も貰い(スペアキー)切子さんは「いつでもお店に来ていいからね」っと言ってくれた。
     そしてこの一ヶ月で分かった事が色々ある。 
     朝に掃除でもしようと自転車でおにぎり屋を訪れると切子さんは朝からおにぎりの具の仕込みをしていたりご飯を焚いていたりして準備をしていたり。
     来るお客さんは個性的で皆もおにぎりが好きだったり。
     作業も切子さん直伝の握り方だったり、意外とこれがおにぎりに合う具だったり。
     おかげでおにぎりの事を沢山知れた。
      商店街ではもう顔馴染み。自転車を通れば常連客の人が「今日も来るわね」とか「仕事頑張れよ」と色々な声が貰える。
     お給料も手渡し。
     幾ら貰っているかは教えられないけど時々切子さんは「お小遣い」と言いながら給料を多くする事がある。それはダメだ!
     お客さんも常連の人や若い人がやって来てよく色んなおにぎりを買ってくる人が少なくも無い。
    時々そのお客さんからチップとしてくれる時があるがそれも丁重にお断りしている。
     そして今日も僕は今、おにぎりを握っている。
     あっ、勿論家じゃなくてバイトだよ。
     無くなってきたおにぎりを補充する為におにぎりを十個握ってそれを綺麗にラップで包んでカウンターに出す。
    値段は定番は一個百円でお肉系や少し大きい物は百五十円で値段は安く覚えやすい。
    そして種類が滅茶苦茶多い!
    こんなにあると流石に飽きない。説明したいがここで省きます。 
    そして僕はある一つの疑問に気づく。こんなに安いのにどうしてこんなにお店が続くか。川田の話では僕達が産まれる前、切子さんがまだ若い頃にこのお店はあったのだと川田から聞いた。
     それだけ常連のお客さんが居るのか、真実は闇の中だ。
      無くなって来たおにぎりを握ってラップで綺麗に包みお店に並べていく。
     それが終わって時間があったら洗い物したり軽く外で箒で掃除したりおにぎりの新作の具を考えたり。
      正直僕は今、物凄く楽しんでいる。
      バイトをしている事は両親にはもう報告済み。
      それでも変わらず仕送りは続くが金額は少し減っただけで特に何もない。
     ただ、一つだけ問題が。

    新作のおにぎりどうしようかな?  事件!

   この前切子さんが「昴くんも新作のおにぎり作ってみるかい?」と言われて凄く戸惑った。
    あまりにあたふたし過ぎて切子さんは「そんなに慌てなくてもいいんだよ。ゆっくりで」と言ってくれた。が!
    僕が新作のおにぎりを出していいのだろうか。
    川田や山田にも相談したが二人が返ってきた言葉は
「婆ちゃん突拍子もない事突然言い出すから。新作出来たら食わしてくれ。ジャッチしてやる」
「えっ!?  新作出すの!  一番に俺に報告してくれよ」
    何故かもう出す前提で話されてる。
    おにぎりノートにおにぎりに合いそうな具を書いて作り研究している。
   そして今日はおにぎり屋お休みの日。
    川田と山田に家に来てもらいおにぎり試食会が始まった。
「家族には晩飯いらねぇって言っておいた。これで心置きなくおにぎりがたらふく食える」
「俺も家族とバイトには連絡は入れておいた。ちなみに母ちゃんはおにぎり幾つか持って帰って来てねと言われたから思いっきり作って良いぞ、昴」
    いや無理して来なくても。
    特に山田、仕事無理して休まなくていいのに。
「何を言っている。昴の新作おにぎりがかかっているんだぞ。昴の作ったおにぎりが店に並ぶんだぞ」
「いや、作ったやつは普通に並んでるだろ。それに新作関係無く昴のおにぎり食いたいだけだろ」
    川田、いつもよりツッコミにキレがありますね。僕、川田のツッコミ好きだよ。
   それに山田はよくおにぎり屋で僕のおにぎり買って食べるじゃん。
「いつものと新作はまた別物」
「デザートは別腹みたいに言うな。それで昴、新作のおにぎりは」
    すでにこちらに用意してあります。
    僕は新作おにぎりを二人の前に出す。
    作ったのは三種類。
    まず一つ目!
     鯖の味噌煮おにぎり!
「鯖の味噌煮おにぎり!」
「おぉ~ご飯に合うおかずだな。じゃあ早速、いただきます!」
「………いただきます」
    二人は躊躇も無く最初のおにぎりを食べる。
    沈黙の中僕は二人がもぐもぐ食べるのをただじっと見ることしか出来ない。
「……上手い、けど」
「よくある味で、馴染みがありすぎる」
「手軽に食べられて良いけど……」
「なんかピンと来ない」
    うぅぅ……では次。二つ目!
    しゃけマヨおにぎり!
    好きなツナマヨおにぎりにツナではなく色々な魚とマヨに合う物を探さまくった。
    そして辿り着いたのはシャケ!
     これは自信がある!
「シャケマヨおにぎり…… 美味そうな響き」
「ツナではなくシャケか……どれ」
    二人はシャケマヨおにぎりを掴んで一口食べ味わっていた。もぐもぐと二人は味を噛み締めるように味わいながらゆっくりと食べ飲み込む瞬間迄目が離したくても離せなかった。
    ど、どう?
「う~ん、なんか脂っこかった」
「しゃけの脂とマヨで脂っこいな。夏は重いぞ」 
   そっか、ちょっと自信あったんだが。
   僕は自信がなくなってきた。こんなんで僕のおにぎりがお店に並べられるのか。  
「元気出せよ昴。食えない訳じゃないんだから」
「ん?  なぁ昴、このおにぎりは?」
   それも新作のおにぎりで。でもそれも馴染みがあってお店に出せないかも。
   そう言い僕はまたしょんもりした。
「具は?」
    サバのレモン煮と豚の塩ダレ。
    おにぎりの乗った皿に具を教えると川田と山田はなんの躊躇も無くパクッと口にいれた。
   自信なさげに二人が食べている様子をただただ見守ると二人の口から馬鹿でかい「うまい!」がリビングに響いた。
「えっ!?  なにこれ? えっ? めちゃうま」
「落ち着け川田、語彙力落ち過ぎだぞ。けど確かにこれはうまい。これ新作にいけるぞ!」
   えっ? でもこれも馴染みあるし店に出してもあまり売れないかもだし。
   僕は自信なさげに言うと二人かはあり得ない気迫を感じた。
「何言ってる!  おにぎり屋の婆ちゃんの孫である俺が言ってるんだぞ! 絶対いける」
「そうだぞ、ただでさえ馬鹿で食い意地張ってる川田がここまで言っているんだ。昴、もっと自信を持て。そして自分のおにぎりと自分自身を過小評価するな」
   二人の言葉に自信が付いた。嬉しかった、こんなに僕のおにぎりを褒めてくれるなんて。
   ありがとう、二人とも。明日、切子さんにこのおにぎり持ってくよ。
「絶対いける。店出たら俺が買い占める!」
「出禁になんぞ。俺も買いに行くよ」
   二人ともありがとう。
   二人のおかげでこの日僕は、自信がつき明日切子さんに試食してもらうおにぎりを作りながら鼻歌を歌った。いつもなら緊張して眠れぬ夜を過ごしていたかもしれないが今日はぐっすりよく眠れた。これも二人のおかげだった。
    そして次の日、学校帰り一旦家に帰って試食用のおにぎりを持ってバイト先に向かう。
   切子さんに食べて貰うと即採用が決まった。
   時々こんな軽くでいいのかと心配してしまうが、切子さんは「明日これをだそうか」と言われ具になる材料と作り方を教えた。
   そして、あれから一週間。
   僕の考案した「サバのレモンおにぎり」と「豚の塩タレ」おにぎりが飛ぶように売れた。
   山田や川田も本当に来て僕の新作おにぎりを買ってくれた。川田なんて本当に買い占める勢いだったが山田に手刀を入れられそれは免れた。
   常連さんも新作おにぎりは美味しいと言ってくれて前よりお客さんが来るようになった。
   今では学校の先生や教頭、校長も来てくれている。
   皆も新作おにぎり食べに来てね。
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