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始まり
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私は思い出してしまった。
この世界が乙女ゲームであること。
私がシェリーチュナ・ロー・キッケル公爵令嬢で、悪役令嬢なこと。
愛している婚約者がシールパープル・レ・ソレンユ第二王子でメイン攻略対象なこと。
政略結婚であっても仲が良かった私達。
そしていま、ヒロインが転けた所を愛する彼が助けた学園の始業式前の朝。
思い出してしまった...思い出してしまった...思い出してしまった!
ヒロインが転けた所を助けるのは、その攻略対象ルートに入ったということ。
私はシールパープル王子が...シルが...ヒロインを好きになり、私が嫉妬に耐えられなくってヒロインをいじめて、シルに邪険にされてしまう。
そんなの耐えられない。
だからといってシルを盗られるのは嫌!
でも、シルに嫌われたくない!
私の頭の中は様々な感情が暴れまわり渦巻いて、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。
もう、自分がどんな顔をしているのかわからない。
「シェリー...どうしたの?大丈夫?」
ヒロインと少し話をして戻ってきたシルが声を掛けてきたが、私は思わず後ずさってしまう。
「シェリー?」
心配げなシルが私の頬に触れようと、手をゆっくり上げるのが見えた。
私は反射的に叩き落とし、身を翻してがむしゃらに走る。
耐えられなかった。
もう側にいられないとわかって。
悲しくて、辛くって、苦しくって、怖くって、切なくって、憎くって、虚しくって...。
それでも愛しくて...。
走り過ぎて、ついに足がもつれて転んでしまった。
たどり着いた場所は、学園の奥の奥にあるバラ園。
私の近くに咲いているバラはパープル色。
シルの...色...。
もう私は耐えられなくって、座り込んでしまった。
思い出したくもないのに、考えたくもないのに、前世での攻略や今世で王子と一緒に過ごした幸せな記憶がぐちゃぐちゃに頭の中で走馬灯のように駆け巡る。
涙が溢れて止まらない。
「うっ...ひっく...っ...どっ...どぉしてぇ...ひどいよぉ...っく...ぐす...ひどいよぉ...なんでぇ...ひっく...どぉしてぇ...いやだよぉ...しるぅ...いやだよぉ...ひどいよぉ...あああ...。」
まるで小さな子供になったかのように、感情の制御が出来なくなり、勝手に出てくる言葉も抑えられない。
「ぁ...ぁっ...ぐす...んんっ...。」
散々泣いて、それでもと覚悟を決めて...。
止まらない涙に震えてしまう声。
身体も...手も震えが止まらない。
全てを無理矢理押し込めて、抑え込んで、両手を胸の前で組んで祈るように歌う。
「抗えぬ運命と決まってるのなら
私はあなたの幸せの為に
誰かのために生きてこその人生
私の全てをあなたの為に捧げよう
あなたの心が私から離れていくのなら
私はあなたの為に祈ろう
私の幸せが遠退いていくとしても
あなたの幸せの為ならば
きっときっと 私の心も満たされていくから
抗えぬ運命と分かっていても
私はせめてあなたの為に抗おう
あなたが幸せではない人生などいらないのだから
私があなたの幸せに邪魔なのなら
私の存在を消してしまおう
最期にあなたの幸せを祈らせて
きっときっと 私の心が満たされるだろう
せめてあなたの負担にならないように
ねぇ 私を嫌って」
全ての想いを込めて歌った。
この世界が乙女ゲームであること。
私がシェリーチュナ・ロー・キッケル公爵令嬢で、悪役令嬢なこと。
愛している婚約者がシールパープル・レ・ソレンユ第二王子でメイン攻略対象なこと。
政略結婚であっても仲が良かった私達。
そしていま、ヒロインが転けた所を愛する彼が助けた学園の始業式前の朝。
思い出してしまった...思い出してしまった...思い出してしまった!
ヒロインが転けた所を助けるのは、その攻略対象ルートに入ったということ。
私はシールパープル王子が...シルが...ヒロインを好きになり、私が嫉妬に耐えられなくってヒロインをいじめて、シルに邪険にされてしまう。
そんなの耐えられない。
だからといってシルを盗られるのは嫌!
でも、シルに嫌われたくない!
私の頭の中は様々な感情が暴れまわり渦巻いて、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。
もう、自分がどんな顔をしているのかわからない。
「シェリー...どうしたの?大丈夫?」
ヒロインと少し話をして戻ってきたシルが声を掛けてきたが、私は思わず後ずさってしまう。
「シェリー?」
心配げなシルが私の頬に触れようと、手をゆっくり上げるのが見えた。
私は反射的に叩き落とし、身を翻してがむしゃらに走る。
耐えられなかった。
もう側にいられないとわかって。
悲しくて、辛くって、苦しくって、怖くって、切なくって、憎くって、虚しくって...。
それでも愛しくて...。
走り過ぎて、ついに足がもつれて転んでしまった。
たどり着いた場所は、学園の奥の奥にあるバラ園。
私の近くに咲いているバラはパープル色。
シルの...色...。
もう私は耐えられなくって、座り込んでしまった。
思い出したくもないのに、考えたくもないのに、前世での攻略や今世で王子と一緒に過ごした幸せな記憶がぐちゃぐちゃに頭の中で走馬灯のように駆け巡る。
涙が溢れて止まらない。
「うっ...ひっく...っ...どっ...どぉしてぇ...ひどいよぉ...っく...ぐす...ひどいよぉ...なんでぇ...ひっく...どぉしてぇ...いやだよぉ...しるぅ...いやだよぉ...ひどいよぉ...あああ...。」
まるで小さな子供になったかのように、感情の制御が出来なくなり、勝手に出てくる言葉も抑えられない。
「ぁ...ぁっ...ぐす...んんっ...。」
散々泣いて、それでもと覚悟を決めて...。
止まらない涙に震えてしまう声。
身体も...手も震えが止まらない。
全てを無理矢理押し込めて、抑え込んで、両手を胸の前で組んで祈るように歌う。
「抗えぬ運命と決まってるのなら
私はあなたの幸せの為に
誰かのために生きてこその人生
私の全てをあなたの為に捧げよう
あなたの心が私から離れていくのなら
私はあなたの為に祈ろう
私の幸せが遠退いていくとしても
あなたの幸せの為ならば
きっときっと 私の心も満たされていくから
抗えぬ運命と分かっていても
私はせめてあなたの為に抗おう
あなたが幸せではない人生などいらないのだから
私があなたの幸せに邪魔なのなら
私の存在を消してしまおう
最期にあなたの幸せを祈らせて
きっときっと 私の心が満たされるだろう
せめてあなたの負担にならないように
ねぇ 私を嫌って」
全ての想いを込めて歌った。
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